第4話 loveじゃなくて、likeだよ! その1

翌日、指定の駅で夏美ちゃんと会った。


「…また…会えたね!」

夏美ちゃんは感慨深く僕に言ってきた。


「そうだね…色々と聞きたいんだけど…」

僕は夏美ちゃんを安心させるように穏やかに答えた。


二人でゆっくり話せるように僕たちはカラオケ屋に行く事にした。

少し気分をリフレッシュするために、何曲か歌った。

彼女の歌はとても上手かった。


・・・


「じゃあ色々と聞かせてくれる?」

「うん…」

「彼は…どういう性格の人なの?」

「…基本的には温厚なんだけど…

 興奮すると手が付けられなくなるっていうか…」

少し曇った表情で夏美ちゃんは話し始めた。


「自分の感情をコントロールするのが苦手なタイプなんだね…

 正直…就職活動のために大学留年までしているのに

 海外旅行って…そんな余裕よくあるねとか突っ込みどころ満載なんだけど…」

僕が少し嫌味を言うと


「親はそれなりの資産家みたいで、彼に甘い所があるみたいなの…」

「おぼっちゃんって事か…」


怯えるとまずいから僕は少しずつ踏み込むようにした。

「暴力は…いつから?」

「…半年くらい前からかな…」


「…そうか…でも、暴力振るわれているならばそこは危ないんじゃないの?」

「…常にってわけじゃないの…

 彼の機嫌を損なわなければ…大丈夫だし…」

思っていたよりは酷い状態ではなさそうだ…僕は少し安堵した。


「二人は普段はどういう風に生活しているの?」

「彼は、大学に行って。

 私が住まわせてもらってるから、掃除とか食事を…」

「そんな辛い状況なのに?」

「仕方ないよ…私は…居候だから…」

彼女は苦笑いをした。


「あのさ…辛いならさ…僕がお金を貸すから…

 基盤が整うまでビジネスホテルに泊まるって選択肢もあるよ?」

「流石にそれは…」

彼女はやんわりと拒絶した。


「あっ…ごめん。

 僕が思っていたよりも切羽詰まって無さそうだし、

 流石に会ったばかりの人間なんか信用できないか…」

僕は苦笑いした。


すると夏美ちゃんはすかさず

「そんな事ないよ!

 私…まーくんの事…良いなって思ってるし…」

そう言ってきた。


そんな事を産まれてこの方言われた事のない僕は、

とても胸がドキドキしてしまった。

「それって…異性として…意識しているって事?…」

僕は思い切って聞いてみた。


すると彼女は黙って頷いた。


「そのさ…僕は女性にそんな事言われた事ないし…

 特に夏美ちゃんみたいな可愛い子から言われると…凄く嬉しいんだけど…

 今現在、夏美ちゃんは、男の人と同棲しているわけじゃない?

 客観的に見ると、僕の方が浮気相手になるんだけど…」


「…私は…もうかっくんの事…彼だと思ってないよ…」

夏美ちゃんは俯いて話した。


「かっくんって…」

「あ…一緒に住んでいる人…かっくんって呼んでるの…」


「…ごめん。もうその言い方からして、

 まだ付き合っているとしか思えないんだけど…」


「私の中では付き合ってないの!ただ、一緒に住んでいるだけ!!!」

彼女ははっきりと言った。


「嫌な事聞くね?

 でもさ…一般的に男の人と一緒に住んでいるんだよ?

 大人の関係もさ…あるんじゃないの?」


「ないよ!!!」

彼女は少し涙汲みながら叫んだ。


「いつから一緒に暮らしているの?」

「二年位前から…」


「どうして一緒に暮らすようになったの?」

「私が専門学校を辞めて、親から仕送りもなくなっちゃって…

 困っていた所に、彼と出会って、

 じゃあ一緒に住めばお金楽になるよって話になって…

 本当に助けてくれるだけって事だったから…」


「じゃあ…彼とはそういう行為をした事が一度もないの?」

彼女はとても曇った表情になり

「…意地悪な事…聞くんだね…」

そう話した。


そして…

「最近はないです…

 でも、身体の関係を持ったことは…あります…」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る