第5話 loveじゃなくて、likeだよ! その2

「はぁ…」

僕はため息をついた。


2年も一緒に暮らしているんだから普通なのかもしれないが

その時の僕には…簡単には受け入れられない…刺激的な言葉だった…

多分僕はあからさまに落胆したような表情だったのだろう…

彼女は僕に必死で弁明した。


「だってさ…だって…ずっと半年くらい…約束守ってくれて…

 ずっと、ただただ私を家に置いてくれて…

 ずっと、好きだって言ってくれて…

 私だって流石に情に流されたって言うか…

 応えたいじゃん!!!だから!!!」


その弁明にムッとした僕は冷たい言葉を放った。

「…いや…だったら…この先も応えれば良いんじゃないの?

 僕がでしゃばる必要ある?」


「…だって!!!まーくんと出会っちゃったもん!!!

 まーくんの事が…好きになっちゃったもん!!!」

夏美ちゃんは涙ながらに僕に訴えた。


「…僕の何処が良いの?

 出会ったばかりだし…容姿だってパッとしないし…

 唯一マシなのは、勉強とかは頑張って来たから

 それなりの会社に入れた位だけど…」


「そんな事ない…顔は私のタイプだし…

 話してみて…とても知的で、何よりすっごく優しいし…

 努力が続けられる人って凄く尊敬できるし…」


正直嬉しい…

こんな可愛い子にこれほどアプローチされた事はないし、

今後の人生においても二度とないだろう…


だけど…言っている事が滅茶苦茶すぎる!!!

僕はかなり冷静に物事を判断できる人間だと思っていたし、自信もあったが

僕の自信は木っ端みじんに砕かれる程、動揺した。


上手く言葉に出来なかった…


別れ際振り絞るように僕は夏美ちゃんに言った。


「さっきの言葉…正直…嬉しかった…

 けどね…夏美ちゃんの本心がどうであれ…

 今のこの状況で夏美ちゃんに恋をしたら…

 僕は客観的に浮気相手になっちゃうよ…

 今なら仲の良い男友達で済むけど…


 だから夏美ちゃんが彼の家を出てくれない限り…

 僕にはどうしようもないよ…

 僕は夏美ちゃんにLoveにはなれないよ…

 Likeだよ…

 勿論…かなりLoveよりのLikeではあるんだけど…」


夏美ちゃんは何も言わなかった。


僕が電車に乗り込もうとすると

夏美ちゃんはまた昨日のように言いたい事があるのに言えない

凄く切なそうな目で僕を見て来た。


僕は…暫くその目をじっと見ていた。

昨日と同じようにお互いにずっと見つめ合い…一時間近く経った。


本当は辛いんじゃないの?

怖くて動けないだけじゃないの?

だったら!!!


僕は意を決意して夏美ちゃんの腕を掴み、一緒に電車に乗り込もうとした。

強引にでも、ビジネスホテルに連れて行こうと思ったのだ。


すると彼女は抵抗して、少し涙ぐみながらこう言ってきた。

「嫌…私…

 私…そんな軽い女じゃない…」


「え?」

僕がいけなかったのだろうか?

彼女は僕が彼女を性的な意味でホテルに連れ込もうとしていると感じたらしい。


「嫌って…ビジネスホテルに泊まって貰おうと…

 勇気がなくて動けないのかなって

 それで強引に…

 全然いやらしい感情なんてないよ?」

僕は懸命に弁明した。


彼女は何とも言えない表情で

「…そっか…」

とだけ言った。


恋愛経験のない僕にはそれがちょっと残念みたいに見えてしまって

本当に混乱した。


夏美ちゃんは

「…ビジネスホテルも…行けない…

 まだ彼は帰って来ないから…大丈夫…

 明日も会えない?」

縋るように言ってきた。


僕は、こんな状況は良くないと思いつつも…

ズルズルと、会う約束をしてしまった…


////////////////////////////////////////////


面白いと思って下さった読者様は

作者の励みになるので

♡や★評価宜しくお願いします。


 

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る