第2話 一度目の別れ…
次の日、会社が終わってから待ち合わせに指定した駅に向かった。
約束の時間よりも早いが、彼女はしょんぽりした表情で駅のベンチに座っていた。
僕は挨拶もせず、無言で隣に座った。
ふと空をみると少し雪が降り始めていた。
「…何で…約束破ったの?…」
僕は沈黙を破り、ゆっくりと口を開いた。
「…………」
彼女は最初沈黙していた。
「…また…暴力を振るわれたの?…」
僕はどうしようもない理由を期待していた。
「……色々と…責められて…
身体の関係が持てないなら…出て行くように言われて…」
期待に反して僕にとっては、全然納得出来るような理由ではなかった。
「出て行けば良かったじゃん!
僕、お願いしてたよね?
一日も早く出て行って…て。
僕の所に来ないまでも、
せめてビジネスホテルとかに泊まって欲しいって。
お金は僕が出すからって。」
彼女は困ったように言った。
「…そんな事……」
僕ははっきりさせないとと思って核心を聞いた。
「夏美はさ…僕の事本当に好きなの?」
「好きだよ!」
彼女は間髪入れずに答えた。
「でもそこから出ないのは何で?
好きなはずの僕の言う事は聞いてくれないの?」
「…そんな簡単には…決められないよ…」
意味が分からなかった。
僕は踏み込んで聞いた。
「夏美は、本当は同居人である元彼の事をまだ愛してるんじゃないの?」
「それは…ないよ…」
何なんだよ!僕は苛立った。
「じゃあ、明日からそこを出て!
ビジネスホテル予約するから!」
「…無理だよ…」
「は?」
「………」
僕は期待を込めて最期の言葉を言い放った。
「出て行かないならもう別れる!
ズルズル妥協しちゃったけど、おかしいもん!
こんな関係!」
彼女は切なそうな顔で言った。
「………無理…だよ…」
僕は彼女との思い出の大事なプリクラを取り出した。
そしてそれを破ろうと力を込めた。
彼女は目を見開いて
「え?何を?止めて!」
そう言ったが、
僕は無言でプリクラを破り、ゴミ箱に捨てた。
「さようなら!」
僕は彼女を横目に電車に乗り込んだ。
彼女は俯いたままだった。
電車が動き出し、僕はこれまでの彼女との出会いを思い出していた…
・・・
彼女とはインターネットの出会い掲示板で出会った。
何回かメールをやり取りして一度会って話をしようという事になった。
会った時は衝撃を受けた。
ちょっとしたモデルのように可愛らしい容姿だったから…
一度も女性と付き合った経験のない僕には刺激が強すぎた。
実際に話してみると、彼女は少し高飛車な所があったが、
その可愛らしい容姿に僕はずっとドキドキしていた。
あっという間に距離が縮み…
お互いに まーくん と 夏美ちゃん と呼び合う仲になった。
こんなに女性と話が弾んだことはなかったし、
僕は、この出会いを大事にしたいと素直に思った。
別れ際、彼女はとても切なそうな顔をしていた。
「え?…どうしたの?…」
「…何でもない…ただ…寂しいなって…」
え?それって…
僕はちょっと期待をしつつ、勇気を出して話した。
「…良かったら…また会おうよ!」
「………」
彼女は無言で何とも言えない雰囲気を醸し出した。
初めは…僕が調子に乗っちゃったかな?嫌なのかな?と思っていたが、
僕の事が嫌という言うより何か言いたい事があるけど言えない…
そんな感じの雰囲気だった。
…無言のまま1時間が経った。
僕は理系の人間であまり非効率な事は好きじゃない…
けどその時は時間が勿体ないとかそんな事は微塵も思えなくて…
彼女の…凄く切ない…胸を締め付けられるような表情を見て…
妙にドキドキしていた。
僕は、女性のそんな表情を初めて見たんだ…
やっと彼女が口を開いた
「………あの…さ…、今日またメールするから…
その時に…まだ会う気があるなら返事して…」
謎めいた言葉を残し、彼女は去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます