僕が最も愛し、憎んだ人へ…

まかろん

第1話 一番最初の裏切り…

大好きな彼女である夏美ちゃんから電話が来た。

仕事中だったが僕は急いでトイレに行き、電話に出た。

「今、ペットショップにいるの。

 柴犬可愛い~~~!」

「ああ、柴犬か~~~!!!

 子犬だと特に可愛いよね!」

「欲しいな~~~!」


夏美ちゃんと僕には人には言えない、とある事情がある。

けど、障害を乗り越え、近いうちに同棲しようとお互いに話していた。

だから僕は彼女の要望をなるべく叶えたくて

「じゃあ、店員さんに予約しておいてよ。

 近いうちに一緒に買いに行こう!」

そう言った。


てっきり彼女の嬉しい声を聞くことができると思っていたのだが…

予想に反して彼女は元気のない声だった。

「……うん…」


僕は心配になった。

「どうしたの?元気ない声で?」

彼女は暫く無言だった…


僕は凄く嫌な予感がした…

いつか告白してくれたように…また暴力を振るわれたのだろうか?…


「え?本当にどうしたの?何かあったの?心配だよ!」

努めて優しく彼女に話した。


すると意を決した彼女がゆっくりと言い辛そうに話し始めた。


「あの…さ…まーくん…」

「うん?」


「私…まーくん…に謝らないといけない事があるの…」

「え?」

僕は張り裂けるように胸が高まった…

凄く嫌な予感がする…

どうか僕の悪い予感が当たりませんように…そう願いながら…尋ねた。

「どう…したの?」


「私…昨日…同居人と…寝たの…」

「え?」

僕は彼女の言葉が理解できなかった。


「…ごめん…」

「え?え?え??? 

 嘘…でしょ?何…言ってるの?」


「…ごめん…なさい…」

「ただ一緒に暮らしているだけって言ったじゃん!!!

 そういう事やらないって約束したじゃん!!!」

僕は怒って彼女を責めると


「…!!…ツーツーツーツー…」

彼女は耐えられなくなったのか電話を切った。


僕はその後何度も電話をかけた…

が…電話はその後ずっと繋がらなかった…


その日は仕事にならなかった…

何で?何でこんな事になったの??

どうして約束を破ったの???

やり場のない怒りやどす黒い感情が僕の中をずっと支配していた…


会社から帰って自分のプライベートメールアドレスを確認すると

彼女からのメールが来ていた。


中を確認すると

『『 本当に…ごめんなさい…

   謝っても許される事ではない事は分かってます…


   同居人との身体の関係は色々と理由をつけて、ずっと拒んでいました。

   でも昨日は同居人に夜遅くまで粘られて…色々言われて…

   貴方との関係を話せない事もあり…私は仕方なく身体を許してしまいました…

   

   行為が終わった後、同居人がシャワーに行った際に

   私は涙が止まりませんでした。

   まーくんの事ばかり考えていました…

   本当に…ごめんなさい… 』』


僕は吐き捨ているように言った。

「助けてくれと言われたから助けるように動いたのに!!!

 好きだと言われたから僕も応えたのに!!!

 何なんだよ!!!お前は!!!」


冷静に考えてみれば、とんでもない女だ…

でも…そんな人でも…僕は彼女を愛している…

簡単に見捨てる事なんて出来ない…

どうしようもない理由…例えば…また暴力を振るわれたのかもしれないし…


僕は怒りを押し殺し

『『 …兎に角…明日会社終わったら、そっちに行く…

  会って話そう… 』』

そうメールを返した。




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