第15話 出逢い(ミア視点)

 ◇ 【ミア視点】


 ある日、わたしは目を覚ますと真っ白な空間にいました。

 そこには沢山の人がいて、みんな知らない人ばかりでした。


 周りをキョロキョロ見渡していると「スキルの素を選べ」って、頭の中で声がしたから驚きました。

 ラノベは読むし、ゲームもするので『スキル』は知っています。

 この状況だから、きっと異世界転生して選んだスキル使えるようになるのかなって、あまり疑いもしませんでした。

 

 わたしは美大で絵画を専攻しているので、勇者になって魔王を討伐するよりも、スローライフを送りたかった。

 だからわたしは『素材』『特徴』『表現』のスキルの素を選びました。大好きな絵を描いて過ごしたかったから。

 

 選び終わったので、これから転移しようとしたとき、知らない女の子から声をかけられました。


「ねえ、一緒に転移しない? 最初から1人だと不安だからさ」


 それは周りの日本人に声かけて、一緒に転移しようという話でした。

 メンバーは女性だけの5人だったので、わたしはそのお誘いを受けることにしました。

 男性がメンバーにいなかったのも安心でしたし。

 

 ◇


 ――転生した先は、バーセリーという街。


 メンバー全員がラノベ好きだったこともあり、真っ先に冒険者ギルドへ行きました。

 冒険者ギルドの受付の女性から、この世界で私達は異世界人として認知されていること。冒険者に登録するときのルールなどを教えてもらいました。


 全員が冒険者登録した後、わたしに声をかけてくれたリーダーのマサミさんが、興味津々の顔でみんなに話しかけました。


「ねえねえ。みんな職業何にした? みんな驚かないで、私は勇者になれたの!」


「えーーー! かぶったじゃん。私も勇者なんだけどぉ!」


「ふふふ、勇者なんか魔王倒さないと人権剥奪されそうで大変じゃない。私は賢者よ」


「やっぱりこうなったわね。パーティに必ずタンクは必要よ。誰もやらないと思ったから私がなっておいたわよ。聖騎士にね」


 ……なんということでしょうか。

 みなさんバリバリの戦闘狂です。スローライフしたいわたしと対極の人達でした。

 どうしよう。職業が『画家』なんて言えない。


 そんな焦ってるわたしにリーダーのマサミさんが聞いてしまいました。


「ミアは何にしたの? あっ、わかったわ。聖女でしょ!? ミアに合ってるわよ」


 お願いです。やめてくれませんか。ハードル上げるの……

 

「え、いや、その……画家です」


 ……

 

「ご、ごめんなさい。ちょっとよく聞こえなかったわ。もう一度お願い」


「……画家です」


「「「「画家っ!!」」」」


 みなさん、宇宙人でも見たような、理解できないものと遭遇したような顔をしていました。

 

「だ、大丈夫よ。遊び人も転職すれば賢者よ! きっと凄い職業に転職できるわよ」


「そ、そうよね」


「きっとそうよ。画家なんてレアジョブよ。普通なれないわよ」


 それからの扱いは完全に痛い子に対するものでした。

 

 微妙な空気のままわたし達はクエストへ行き、冒険者ギルドに戻ってきたとき、わたしはパーティから外されました。

 理由は「まだ私達のレベルだと、ミアを守りながら戦えない」ということでした。

 しょうがありません。みんなは剣や魔法のスキルでバシバシと魔物を倒しますが、わたしはゴブリン一匹にすら勝てませんでしたから。


 それから二日後、他の冒険者が新しくパーティに入るので、出ていってほしいと言われ、途方にくれました。


 わたしは生活費を稼ぐため、冒険者ギルドでパーティに入れてくれるところを探しているとき、ひとつのパーティからお声がかかったのです。

 エルフと少し柄の悪いおじさん達がいるパーティでした。

 怪しいと思いましたが、背に腹は代えられないので話をさせてもらいに行きました。

 自己紹介をした途端、わたしの職業とスキルをギルド内に言いふらされてパーティへの参加は断られました。

 そして、他のどのパーティにも入れなくなったのです。


 そのおじさん達は、翌日もわたしと同じ新人冒険者だったタクミさんに絡んでバカにしてました。

 けれど、わたしはタクミさんが大量の魔石を買取りに出したのを見てました。

 どうやってバカにされるようなスキルで、大量の魔物を倒せるんだろうってこのときは思ってました。


 その次の日、もう、わたし死ぬのかも……って半ば諦めながらも、パーティを探すため冒険者ギルドに来てタクミさんを見つけました。

 わたしと同じような境遇なら、協力しあえるかもと思い声をかけました。

 本当にこれが最後のチャンスと思い、必死に話を聞いてもらおうとがんばりました。


 見た目は背が低くて幼い雰囲気がありますが、ものすごくしっかりしていて、わたしの誰からも見向きもされないスキルを、とんでもないスキルに変えてくれました。


 宿屋でいきなり部屋に呼ばれたときは正直焦りました。男の人と部屋で二人っきりになるなんて、今までなかったからです。ドキドキしてしまったのが、タクミさんに伝わってなければいいけど……


 異世界に絶望もしたけれど、わたしは最高の出逢いをしたと思います。

 スローライフも楽しみたいですが、今はタクミさんと冒険するのが一番の楽しみです。

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