第7話 スキルの成長
「装備はここを出て右側に歩いていけばお店があるよ。食事はその途中に宿屋がある。その1階の食堂がおすすめさ」
俺はハンナさんに礼を言って、冒険者ギルドを出た。
1ゴールドあたりの市場価値がわからんから、まずは食事を取ることにした。今のところ装備は困っていないので後回しだ。
冒険者ギルドから歩いて30メートルぐらいのところに宿屋はあった。1階が食堂になっていて、宿泊客以外でも食べられるようだ。
食堂に入ると俺以外の客は1人もいなかった。
まあこんな小さな村だと、そもそも宿泊客がいないのかもしれない。
「いらっしゃいませ。もしかして異世界人の方ですか?」
15歳ぐらいの茶色い髪をした女性が話しかけてきた。宿屋の娘ってところかな。
「そうですよ。どうして僕が異世界人だってわかったんですか?」
「この辺りで見たことない顔だったのと、村中で異世界人が来たって噂になっていたので」
これだけ小さい村だ。ニュースなんてほとんどなく、異世界人か来たことは大きな話題になっているのかもれしない。
けど、丁度いい。
俺は異世界人だから、いろいろ聞いても不審者扱いされることもないだろう。
「まずは何か食べたいんですけど……」
メニューは日替わりで1つだけらしい。基本的にパンとスープとサラダ。スープの具は日替わりみたいだ。
今日は肉とじゃがいもみたいなものがスープに入っていた。
味は塩加減が足りないが、不味くはなかったので、俺は少し安心した。
虫が主食と言われたら、俺はこの世界で生きていけそうになかったからだ。
1回の食事で4ゴールド。スライム2匹分だった。この世界の相場を聞くと、1ゴールドあたり日本円で100円ぐらいだった。
あと、1年は12ヶ月、1ヶ月あたり30日。つまり1年で360日を周期にしているのもわかった。
時間は1日24時間でほぼ地球と同じだった。
この世界で暮らすのに必要最低限の情報を知ることができた。
◇
食堂を出たあと、武器屋に向かった。
ギルドマスターのハンナさんから紹介された店は、武器屋というより鍛冶屋だった。
こんな小さな村だと武器の需要よりも、農具や生活用品の修理の方に需要があるのだろう。
武器や装備を見ると、ショートソードが100ゴールド、腕に付けるタイプの小型盾のバックラーが50ゴールドだった。
結構いい値段するんだな。スライムなら75匹、ゴブリンなら30匹か。
今日の目的は市場の相場を知ることだったので、何も買わなかった。
道路を挟んだ向こう側に道具屋があった。
お店に入ってみると、食料品や鞄、靴や服。ポーションとか置いてある。
急ぎで必要な服と下着、水袋を買った。
旅に出るための道具とかも揃えていかないと……あらためてゴールドを稼ぐ必要があると思い知らされる。
◇
転生したときの部屋に戻ってきた。
村の中は外灯があり、スライムやゴブリンなどの小さな魔石をエネルギーに灯りを付けている。
外灯のように魔石で動く道具のことを魔道具というらしい。
すべてハンナさんから教えてもらったことだ。
しかし、この部屋に照明器具はない。
不用心なことに窓はガラスになっているため、少し離れた外灯の光が差し込み部屋を薄暗くしてくれるので、ベッドで横になったり着替えたりできる。
そろそろ寝ようかと思ったとき、ふと気がついた。
経験値はどうなってるんだ?
早速ステータス画面を開く。
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名前:アライ タクミ
状態:正常
レベル:3
HP:30 / 30
SP:22 / 30
スキルの素:接触、文字、変更
スキル:分析、改ざん
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自分のレベルが上がっていることは、狩りのときにSPを確認していたので知っていた。
問題はスキルだ。スキルは成長するのか?
強化石はすぐに壊れるため、頻繁に作る必要があった。それだけ『分析』『改ざん』を使ったということだ。
俺は『分析』と『改ざん』のスキルを集中して見た。
『分析』:対象に触れて情報を取得する。取得した情報は表示できる。対象に触れている時間が長いほど詳しい情報を取得できる。
『改ざん』:触れた対象に書かれてある文字を1文字だけ変更できる。
特に変化はなかった。
けれど、俺はもう1つ気になることがある。
強化ナイフを手に持ち、『分析』スキルを使った。
――2分経過
強化ナイフのステータス画面が表示された。
体感で1分。
ステータス画面は今までより早く表示された。
……俺のスキルは成長していた。
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