第3話 ロゼッタ村

「ステータス」


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名前:アライ タクミ

状態:正常

レベル:1

HP:10

SP:10

スキルの素:

・接触

 触っている対象への効果を上げる

・文字

 文字の効果

・変更

 変更の効果

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 これが俺のステータスだ。


 欲しかった『スキルの素』は全て取れた。


 ステータスの内容を確認する。SPはスキルポイントの略みたいだな。

 HPはゼロになったら死ぬのだろう。たった10しかないので注意しよう。


 俺はベッドから降りた。


 ドアの横に立てかけてある全身が映る大きな姿見鏡の前に立つ。


 白いワンピースのようなゆったりした布を着た15歳ぐらいの少年の姿が映っていた。

 黒髪黒目、だが俺の子供の頃とはまったく似つかない。

 特別美男子でもない、モデルのようにカッコいいわけでもない。


 けれども、魅力的な顔をしていた。


 俺は28歳の日本人。仕事はシステムエンジニアだった。容姿はいたって平凡、モテ期は小学校2年生の頃。


 鏡を見た正直な感想は、「若返り容姿もカッコよくなったな」この程度。


 ラノベ愛読者の俺にとって予想の範疇だ。


 部屋の外に出る。


 ここは森の中にある集落。建物の数から人口50人ぐらいの村のようだ。


 村は高さ2メートルぐらいの木の柵で囲まれていた。日本では見ない光景だ。

 もしかしたら魔物が出るのかもしれない。


 足元に村の中央へと続く道が見える。

 背中を少し前かがみにした白髪のお爺さんが、こちらに向かって歩いてきた。


 これからイベントが始まるようだ。楽しみにしていた小説を開いたときのように、これから始まる冒険に期待し胸が高鳴る。

 

「ようこそ、ここはロゼッタ村。わしが村長のジルですじゃ」


 テンプレの挨拶きたぁー! チュートリアルだとはじまりの村って感じだな。

 

「はじめまして、タクミといいます。目が覚めたらここにいて……ここは何処ですか?」


「ええ、ええ。わかっていますじゃ。ここはそういう場所ですから。そこの建物からでてくる人は、みなさん違う世界から来たと言いますじゃ」


 『違う世界』ということは、やはり異世界転生したのか。


 ふふっ、あははっ……笑いが込み上げてくる。


 知らない土地にいる緊張、これからの展開が予測できる余裕、それらが混じり変なテンションになっているようだ。


「ここから出てきた人達は、今は何をしてるんですか?」


「我々は他の世界から来た人達を『異世界人』と呼んでいますじゃ。異世界人は、2、3日ほどこの村にいた後、どこかに行ってしまいますじゃ」


「そうなんですか、この村に僕以外の異世界人はいますか?」


「いませんじゃ。最後に異世界人が来てから5年ぐらい経ってますじゃ」


 あの空間には300人ぐらい居た。

 必ずこの村に転移させられるわけじゃないようだ。

 あと考えられるのは、はじまりの村みたいのが世界中に沢山あるとか。


「他の村や街にも異世界人は来るんですか?」


「ここ以外にも来るですじゃ。大きな街だと一度に沢山の異世界人が来るとか。この村に来るときは必ず1人ですじゃ」


 なるほど、パーティで転移した人達はここよりも大きな村や街、城とかになるのか。


 周りの魔物が強いとか、ハードモードだな。


「あのぉ……暮らすためのお金はどうやって稼げばいいですか?」


「冒険者ギルドで冒険者登録するとギルドカードを貰えますじゃ。それがあれば村や街に出入りできますじゃ。お金は冒険者ギルドの仕事をすれば稼げますじゃ」


 そう言って村長は、村の一番大きな建物を指差した。


 俺はお礼を言い村長と別れた。


 冒険者ギルドへ向かって歩いてる途中、すれちがう人達に「あなた異世界人なんでしょ。がんばってね」と声をかけてもらえた。


 今までここに来た異世界人達は、みな良い人だったんだろう。


 過去に悪事を働いた人がいれば、あの部屋から出てきた瞬間殺されてもおかしくない。


 この村に転移できたのはラッキーだったようだ。

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