第24話 すべては夢だった?
結局、白皇つかさ先輩と春日くんのいる教室まで避難することにした。
ゴブリンの槍を持った僕が先頭に立った。来た道を戻る。教室まで校舎のなかを移動するという手もあったが、より安全性を考えてのことだ。
僕の背後では何やら女の子たちが会話をしていたが、内容までは聴こえなかった。
ただ平静な感じがする。
パニックは収まったらしい。
あまり安心されても困るのだけど。少しは警戒していて欲しい。
(それにしても……)
女の子たちの会話には言い争う気配はなかった。
確か、神月小夜子先輩と来生響子先輩が言い争っていたはずだ。
いや言い争うというより、神月先輩が来生先輩を口説くというかたちになっていた。
そういう気配が一切ない。
(あれは夢だったのかな?)
冷静になってみれば、そうとしか思えなくなってきた。
女の子の方からハーレム結婚がありだなんて、ありえない。
(白日夢だった?)
僕は眠気が限界を越えると、よく白日夢を見る。
現実と夢が融合してしまい、どこから現実でどこから夢なのか、まったく判別できなくなってしまうのだ。
徹夜が出来ない体質なのである。
(これはヤバいかも……)
考えてみれば、ヴェルラキスさんに胸を触らせて欲しいと言い出したあたりから、かなり怪しい。
ただのセクハラである。僕らしくない。僕はこれでも紳士を目指しているのだ。
紳士を気取ったとしても、夢の中までは保証できない。
そんな夢を見てしまう自分がイヤだが、こればかりはなかなか制御できないというのが実際だ。
急に怖くなった。
僕は他にやらかしていないだろうか?
エッチな夢のノリで、セクハラをしまくっていたら、どうしよう?
スーッと頭から血の気が引いた。
校庭の方から怒声が聞こえてきたのは、そのときだ。
女の子たちが一斉に僕にしがみつく。
「大丈夫。藤堂先輩たちがいる。ここまで敵が来ることはないよ」
僕の言葉に女の子たちは安心したようだ。
それでも僕にしがみついたままだった。
「とにかく教室まで急ごう」
女の子たちを引き連れて教室までくると、白皇先輩と春日くんが無事でいてくれた。
来生先輩と神月先輩が白皇先輩に駆け寄って抱きつく。親友三人組を見ながら、僕はこれが白日夢でないことを祈った。
千草雪乃先輩と新井ともえはへなへな脱力して床に腰を降ろす。椅子に座る気力もないらしい。
「春日くん……」
僕は彼の表情をみて理解してくれているのがわかった。
「僕は行かなきゃならない」
「ここは任せて。ボクが守ってみせる」
僕が教室から出ようとすると、女の子たちが息を吞む気配があった。
彼女たちが何かを言う前に、僕は教室のドアを閉めて、廊下に出る。校庭に向かうためだ。
(間に合え!)
僕は廊下を走った。
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