第4話 東京の次は京都⁉

やがて、朝日が昇り、樹奈が目を覚ます。

「おはようー。」

「おはよう……。」

「朝から元気ないわね。」

「まあな。朝は苦手なんだ。」

「ふうん。ちなみに、目の下の隈は何?」

「は? そんなもんあるの? まじか。」

「嘘よ。寝てないでしょ。」

「なぜかな。」

「はあ、こんなことなら床で寝てもらった方がよかった?」

「あ? それは関係ないぞ? ただ、眠気が来なかっただけだ。」

「どうしてこんなに平然と寝られるんだ? いや、俺が人と関わってなさすぎるだけか。」

「は⁉ え、起きてたの?」

「ええ、残念ながら。」

「それなら何か言ってくれよ。うわ、恥ずかし! うわ、趣味悪いなお前……。」

「この反応が見たくて……。」

「声をかけてくれたら俺も睡眠をとれたんだが。」

「一日くらい平気よ。さあ、今日も楽しみましょう!」

「俺は朝から鬱だよ。しばらくは治りそうにないな。」

「ねえ、ごめんねってばー。航が動いてくれないと、私も何もできないんだけど。」

「次どこ行きたいんだっけ?」

「どこでもいいよ。」

「桜は嫌なんだっけ?」

「姫路城とかならいいよー。」

「なんで姫路城?」

「桜だけじゃなければいいってこと!」

「それじゃ、京都に行くか。」

「急に遠いね。何で?」

「新幹線で仮眠を取りたいっていうのと、俺が京都好きだから。」

「最初の理由だけだったら、さすがに罪悪感あったわ。よかった。」

新幹線では、航は言った通り、仮眠をとっていたため、樹奈はひとりで外を眺める。京都につきそうになっても、航が起きなかったため、樹奈は航を起こす。

「もう京都か?」

「うん。よく眠れた?」

「まあ多少は。寝てないよりはましだな。」

「それなら良かった。」

「もう昼か。一度昼ご飯を食べなきゃな。特に食べたいものはないか?」

「うん、何でもいいよ。」

「たしか、美味いうどん屋があるんだよな。そこに行こう。」

「いいよー。」

うどん屋は少し混んでいたが、京都駅周辺の休日のちょうど昼時だ。空いてる店の方がなかったため、待つことは厭わなかった。

 うどんを二人で食べ終えたら、二時過ぎになっていた。

「うーん、どうしようか。」

「平等院鳳凰堂に行こうよ。」

「なんでまた?」

「あそこは行ったことないんだよねー。」

「他は行ったことがあるのか?」

「清水寺、金閣、銀閣あたりは少なくともねー。」

「京都きたことあったんだな。それで渋谷はあんなに何も知らないのか。なんか変わったやつだな。」

「はい、では宇治に行こう!」

「はいよ。」

JR線に乗って、宇治駅で降りる。

「ああ、久々だな。」

「前にも来たことあるの?」

「旅行するときは、毎回来ているな。」

「へー。宇治好きなの?」

「そうだな。俺の中で住みたい街ランキングトップ一位だ。」

「住むのと旅行は違うよ?」

「わかっているが、それを考慮しても宇治に住みたいってことだよ。」

「そんなに好きなんだね。なんか理由でもあるの?」

「理由かあ。よくわからんな。宇治に限らず、京都が好きなのと、宇治茶が好きなのと、後はここの街並みがなんか好きくらいかな。理由になってるのか?」

「あはは、説得力はなさそうだけど、いいんじゃない? 別に他者の理解を求めているわけじゃないんだし。」

「そりゃそうだ。それを、最初の質問のときにも応用すれば解決しそうなのにな。」

「あれは別よ! 別に、私だって何でもいいと思っているわよ。けれど、例外もあるでしょう?」

「例えば?」

「人を殺すこととか?」

「それはそうだな。」

「生きる意味なんてない! とか。」

「それはどうだろう。だが、そんな答えを出している馬鹿は、きっと生きる意味について相当以上に悩んだからこそ、無価値だと思ったんじゃないか? その問い自体に。」

「そんなこと知ってるわよ! 私はね、その結論が気に食わないの。ていうか、考えたことのない人の回答なんていくらでも聞いてきたし……」

「どんなのだったんだ?」

「今できました! 俺の生きる意味は! あなたを幸せにすることです! とか、あとはね~、生きる意味? そんなもの、聞かれるまでもない。(フッ)それは、あなただよ。とか?」

「おお、それを何度も聞いても、その質問をやめないのはすごいな。というか、愛がほしいなら、そいつらと一緒の方が良かったんじゃないか。」

「私が、彼らを愛せないわよ。まあ、彼らもすぐに冷めるでしょ。」

「いいや、きっと百人に一人は思いを貫けると思うぞ。」

「そんなに確率低いの?」

「俺の中ではそれくらいだな。お、着いたぞ。」

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