第3話 波乱のデート一日目⁉

「ここは渋谷だな。」

「わあ、すっごい人。建物も大きいね。こんなに変わったんだ。」

「変わった? そうなのか?」

「そうだよ! 前はこんなに高層ビルもなかったし、人もこんなに多くなかったし、自動車もこんなにたくさん無かったよ。ここの人はみんなお金持ちなんだね。」

「まあ、ここで働けるならそれなりに金は持ってるんじゃないか。それで、こんな場所に来て何をしたいんだ?」

「とりあえずショッピング!」

「そうか。適当にぶらつけばデパートとかたくさんあるだろ。俺も渋谷には初めて来たから知らないけど。」

適当に歩いていたら、デパートを見つける。樹奈は、いろいろな店を周る。まずは服屋。いろいろと試着をして、航が良かった服を答えて、それを購入する。次に、アクセサリー。時計、手帳、ネックレスなどを見て樹奈がいいと思ったものを購入する。最後に、本屋。樹奈は、最近の本をほとんど知らないらしく、いろいろな本に興味を示した。ミステリー、恋愛小説、ライトノベル、コメディ、実用書なんかもいくつか買っていた。どの本も、最近のもので、いわゆる古典にはそれほど興味がないらしい。

「なあ、お前お金持ってないのに、ショッピングしたいとか言ったの?」

「え、うん。」

「それはおれに払ってくれってこと?」

「あはは……」

「いや、まあいいだろう。多少ならよかった。だが、服に五万、時計などで二万、本に三万。これはやりすぎだろ。」

「いやー、久々でさ。ついたくさん買いたくなっちゃった。」

「一応言っておくがな。買ったのは俺だ。」

「それにしても、これ全部買ってくれるとは思ってなかったんだよ。何も言わずに出してくれたから、つい甘えちゃって……。ごめんね。」

「まあいいよ。だめだったら言ってるしな。ただ、小言くらいは言っておかないと、今後もこんなことをされそうでな。」

「航ってお金持ちなんだね。」

「まあな。金だけはある。だから、呑気にずっと旅行してられるんだが。さてと、時間も遅いし、夕食どうする?」

「ここらへんで食べよ!」

「すきなものは?」

「なんでもおっけー!」

「ほいよ。それなら、空いてる店にするか。」

偶然待たずに入れる店があったため、そこにする。そこは、中華料理店だった。二人は、天心と麻婆豆腐を頼む。

「辛い!」

「そうか? 樹奈は辛いの苦手?」

「うん、いやー食べられるかなと思ったんだけど。」

「食べられないほど辛いの?」

「いいや、そこまでではないよ。美味しいし。」

「それならよかった。」

夕食を終え、近くで安いホテルを探す。ビジネスホテルを見つけ、そこに入る。受付には誰もおらず、呼び鈴が置かれている。呼び鈴を鳴らすと、スタッフがやってくるが、おれたちを見るとあからさまに不機嫌だった。

「いらっしゃいませー。ご予約はしてますか?」

「いいえ、してないんですが、部屋空いてますかね?」

「えーと、あいにく空いてないので、近隣のホテル紹介しますね。」

「ああ、ありがとうございます。」

そう言って、店員はホテルを紹介するためにタブレットを開く。それを、航にだけ見せる。

「いや、おれたちそういう関係じゃないんですけど。てか、悪ふざけならいいんで、別のホテル探します。」

「ああ、申し訳ありません。部屋は空いているため、ご案内しますね。」

「はあ、そうですか。」

ルームキーを渡され、そこに記されている部屋に入る。

「本当にこの部屋なの?」

「ああ、ここだ。」

「間違えられたのかな。」

「……そうかもな。」

航は怒りを隠しながらフロントに電話をするが、なぜか出ない。航は大きくため息をつく。

「別のホテルにしよう。」

「え、けどもうお金も払っちゃったでしょ?」

「いや、シングルベッド一つで男女二人はよくないだろ。」

案内された部屋は、明らかに一人用だった。航は、入った時点でスタッフの悪意であると気づいたが、樹奈は知らない。そのため、フロントに電話をしたが、あいにくの留守。いや、どうせ居留守なんだろうけど。

「あいつ世の中のカップルに親でも殺されたのか?」

「え、なんか言った?」

「いいや、何も。とにかく、別のホテルにしよう。」

「ええ、もう歩くの疲れたしここでいいよ。航は嫌?」

「いや、樹奈がいいならいいんだけどさ。普通は嫌かなって。」

「別に大丈夫だよー。もともと部屋は一つのつもりだったんでしょ?」

「まあ、樹奈に任せるつもりだったけど。」

「それなら一つじゃないと困るから、大丈夫! ちょっと布団が狭いだけだよ。」

「それならいいんだが。」

二人は別々にユニットバスに入り、布団に入る。航は床で寝ようとしたが、樹奈に認めてもらえず、布団の壁側で寝ることになる。隣には樹奈が寝ているため、航はまともに動こうとしても無理だった。

 どうしてそんなに床で寝せないのか疑問に思いながら、まあ仕方ないと寝ようとするが、シングルベッドが狭すぎるため、樹奈と背中が密着する。

 航は、樹奈の方をちらりと見るが、彼女はよく眠っているようだ。

「どうしてこんなに平然と寝られるんだ? いや、俺が人と関わってなさすぎるだけか。」

航は大きくため息をつく。再び目を閉じて寝ようとするが、しばらくすると目をかっと見開く。

「寝られるわけがない。適当にゲームでもしてるか。」

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