第9話 明日じゃなくて、今日



 いまちゃんは私達を散々からかってから、言った。


「あたしからアイツを奪った病気をこの世から消しさって、アイツにホメられるまでは、あたしのイチャラブはお預けだ。せいぜいあたしを楽しませてくれよ?」


 ダハハ!と笑ういまちゃんと私たちは今日も一緒。


「大切なヤツと二度と会えないとか、んな訳あるかよ。そうだろ?ま、アイツの葬式も墓参りも行けてないこんなあたしだけど、さ」


 そう言い切った私たちのキューピッド。



 初恋の人と、いつの日かはるか遠い未来で巡り逢い、


『ほうら、見つけたぜ?早くホメろ!ナデろ!ぎゅうっ、としろ!』


 と好きな人に言っている、いまちゃんを想像してしまった私達。




 必ず実現できる夢なんて、絶対届く未来なんて。

 必ず叶う願いなんて、きっとどこにもない。


 だけど。


 指先一つさえも届かない、夢や、未来や、願いも。

 きっと、どこにもない気がする。


 今なら、そう思うことができる。

 いまちゃんが、そう思わせてくれた。


 だったら。


 だったら。


 明日の私と、大好きなみんなの為に、走ってみたい。

 背中を押して貰った時の気持ちを、感謝を、忘れずに。


 これからの私が、誰かの背中を押してあげれるように。

 私も、いまちゃんみたいになりたい。


 だから。


 明日じゃなくて今日も、全力で。

 走りたい。



 昼休み。


 お弁当を食べている秋人あきと君の顔が浮かない。


「秋人君、お弁当微妙……?美味しくなかった……?」


 楽しみな、お昼ご飯でがっかりさせちゃった……。


「えっ?!……ああっ!!違う違う、ごめん!今日のお弁当も美味しいよ!」


 その言葉に、ホッとする。


「何か、心配事?」


 無理に聞いちゃいけないだろうけど、秋人君の元気がない理由、知りたい。

 お箸を置いた私は、秋人君のシャツの袖をきゅうっ!とつまむ。

 すると、秋人君が慌て始めた。


「ごめん!そんなしょんぼりしないで!違うんだ、今考えてた事話すから!」


 秋人君はシャツを摘む私の手を、一瞬だけ包み込むように優しく握ってくれた。


 そして。


「朝、いまさんが言ってた言葉……引っかかるんだ。何か、気になって」

 

 

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