第9話 明日じゃなくて、今日
いまちゃんは私達を散々からかってから、言った。
「あたしからアイツを奪った病気をこの世から消しさって、アイツにホメられるまでは、あたしのイチャラブはお預けだ。せいぜいあたしを楽しませてくれよ?」
ダハハ!と笑ういまちゃんと私たちは今日も一緒。
「大切なヤツと二度と永遠に会えないとか、んな訳あるかよ。そうだろ?ま、アイツの葬式も墓参りも行けてないこんなあたしだけど、さ」
そう言い切った私たちのキューピッド。
●
初恋の人と、いつの日かはるか遠い未来で巡り逢い、
『ほうら、見つけたぜ?早くホメろ!ナデろ!ぎゅうっ、としろ!』
と好きな人に言っている、いまちゃんを想像してしまった私達。
必ず実現できる夢なんて、絶対届く未来なんて。
必ず叶う願いなんて、きっとどこにもない。
だけど。
指先一つさえも届かない、夢や、未来や、願いも。
きっと、どこにもない気がする。
今なら、そう思うことができる。
いまちゃんが、そう思わせてくれた。
だったら。
だったら。
明日の私と、大好きなみんなの為に、走ってみたい。
背中を押して貰った時の気持ちを、感謝を、忘れずに。
これからの私が、誰かの背中を押してあげれるように。
私も、いまちゃんみたいになりたい。
だから。
明日じゃなくて今日も、全力で。
走りたい。
●
昼休み。
お弁当を食べている
「秋人君、お弁当微妙……?美味しくなかった……?」
楽しみな、お昼ご飯でがっかりさせちゃった……。
「えっ?!……ああっ!!違う違う、ごめん!今日のお弁当も美味しいよ!」
その言葉に、ホッとする。
「何か、心配事?」
無理に聞いちゃいけないだろうけど、秋人君の元気がない理由、知りたい。
お箸を置いた私は、秋人君のシャツの袖をきゅうっ!と
すると、秋人君が慌て始めた。
「ごめん!そんなしょんぼりしないで!違うんだ、今考えてた事話すから!」
秋人君はシャツを摘む私の手を、一瞬だけ包み込むように優しく握ってくれた。
そして。
「朝、いまさんが言ってた言葉……引っかかるんだ。何か、気になって」
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