第8話 春、通学路


 


 桜並木の下を同じ制服で並んで歩く私といまちゃん。


「だい!だい!ダイナマイトっ!か……ほんっとカッコいいな、ハルは」

「言ってないよ?!」


 だははー!と笑ういまちゃんの制服の袖を掴む。


 頬を膨らませながら、ふと周りを見渡すと。

 いまちゃんを見てる人がいっぱいいた。


 ステキで可愛くてカッコいい私の従姉妹。

 誇らしくて、うれしくなる私。


 と、その時。


「ハル、いまさーん!」


 秋人あきと君の声が聞こえた。

 私たちは同時にふり返る。


「おおお。もうどこから見ても姉妹ですよ!この前、間違えられてたんですよね?」

「!!」


 いまちゃんと私が姉妹に見えるなんて、嬉しすぎて口元が緩んでしまう。

 

「わかっちゃねえな秋。彼女と他の女の見分けつかねえとか、大減点だぜ?」


 秋人君は、そんないまちゃんに。


「いえいえ、僕は見分けつきますよ」

「ほー。くらえ秋。ね♪あたしがハルだよ、見て見て♡」

「うわあ?!」


 秋人君の近くでいまちゃんが、腕で胸を強調する。

 私は秋人君の制服の袖を、ぐぐぅ!と掴んでしまった。


「秋人君、ふわふわがいいんだ、ふにふにがいいんだ、ぽよぽよがいいんだ……!」

「なぜか僕がごめんなさいする流れになった?!」

「ハル、心配すんな!あたしも高校からだったぜ?」

「ふおおお……!」

「男子がここに、目の前にいますよー」



 あの時。

 本当の気持ちを伝えた後に大泣きし続けた私に、秋人君はずっとずっと、優しく話しかけてくれていた。


 そして、泣きやんだ私に。


『彼氏と彼女になりたい友達から、……はじめちゃダメかな?』


 そう言ってくれて。


 そう、言ってくれて。


 私がもっと大声で、嬉し泣きし始めて。

 今度はテニス部員たちもまきこんで。


 そして。


 そうして。


 同じ高校に受かった私たちは、想いを、形に変えた。



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