第2話 私のせいだ
畳の上で、一緒にジタバタともがく男子たち。
後から聞いた話だと、『大食堂、みんなで一緒に行こうぜ!』って私達を
そうしたら部屋での私たちの恋バナが聞こえてきて、ノックもできずに外で聞いていたらしい。男子達はたまたま、恋バナを聞いてしまったのだ。
でも。
でも。
そこには。
藤倉君が、いて。
●
修学旅行から一週間。
今日も学校からの帰り道を、トボトボと歩くしかできない。
何で私、あんなことを言っちゃったんだろう。
何とも思ってない訳、ないのに。
ずっとずっと、大好きなのに。
あの時間に戻れたら、いいのに。
戻れたら……絶対に絶対に、あんな嘘つかないのに。
藤倉君の事、大好きって言えなくても……気になるって。
気になってるのって……言うのに……。
目の周りがヒリヒリする。
あれから、ひとりの時は泣いてばっかり。
泣いても解決なんかしないのに。
藤倉君を傷つけた事は……消せないのに。
●
学校に行ったらみんなに冷たい目で見られるんじゃないかと思っていたけれど、逆だった。
あの時にいたみんなは、優しかった。
「うーん、私のカンは外れたか……ちゃん、本当にごめんね~」
「及川さんも私たちと一緒! とか勝手に思っちゃってたよ……」
「だいたいさ、女は何でも恋に結びつけすぎなんだよな」
「フスマの外でこっそり聞いてたアンタがえっらそうに言うな!」
「どうせ『自分の名前出てこないかな』とか思ってたんでしょ!」
「そんな事思ってなんかねえよ! そうだろ、田中ぁ!」
「お、おう! ここここ、これっぽっちも思ってないよ?!」
「アンタ達、怪しすぎだよ……」
そんな感じで、旅行後に何回かそんな話をしたくらいで終わりだった。もちろん、そんな優しくて温かい言葉を通りこしてくる冷たい目もあって、そんな時、私は頭を下げる事しかできなくて。
だけど、それ以上に。
大きく変わってしまったことがある。
●
前なら。
藤倉君を見ててたまに目が合ったりすると、『どうしたの?』って笑ってくれたり、話しかけてきてくれたり、変顔で私を笑わせてくれた。いっぱい楽しい話ができた。
それが。
今は目が合うたびに。
藤倉君が慌てて目をそらすようになった。
しまった、みたいな顔をして。
目が、合ってしまった。
そんな、顔をして。
涙が出る。
いつも半べそをかいてしまう。
でも。
そんな顔を見た私は、涙をごしごしとふいて隠していた。
だって。
傷つけたから。
私のウソで。
大好きな藤倉君を。
ずっとずっと片想いしていた、大好きな藤倉君を。
一生懸命で、柔らかく温かい笑顔の藤倉君を。
傷、つけた。
●
苦しい。
苦しい。
どうしたらいいの?
どうしたら、前みたいに笑ってくれる?
どうしたら……許してもらえるの?
ごめんなさいって言いたい。
けど、勇気が出ない。
あの藤倉君が冷たい目で私を見たらって思うと、怖い。
でも、このままでいたら……何も変わらない。
どうしたらいいの?
わからない。
わからないよ。
だれかに相談……。
そうだ。
いまちゃんなら。
きっといまちゃんなら……。
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