第35話 神社とキツネ
「うーん…とりあえず稲荷神社できたしキツネだそうかな…」
でも、クーコと被るかな…
まぁいいか。
ぼちぼち急ぎつつ最近全くと行っていいほど使わないスマホを取り出し、《持ち物》から《UR 異世界のキツネ》をタップした。
鳥居が光り始め中が白く光る。向こう側が見えなくなったところで白いキツネがいっぱいでてくる。
登場の演出に私の鳥居を使うんじゃない。
すると光る鳥居の中からにゅるっと大きなキツネが頭を出した。
「でっか…」
つやつやもふもふな白い毛並み、首もとには紅白のしめ縄。
鳥居と同じぐらいの大きさのキツネがでてきた。
「ふーむ、どこじゃここは…」
あぁ…マオと被った…。
「こ…こんにちわー」
むむと呟いたキツネは私を見下ろした。
「そこのちいさい#童__わっぱ__#よ。どこじゃここは」
「私の街でヴィルナタールってところです」
なんか神聖な感じがすごくて敬語になっちゃう。
「ほう、わらわのいた世界ではなさそうじゃのぅ」
「それで、わらわに何を願う」
ジッと私を見るキツネ。
「いや、特にないですけど…」
「そうか、そうか。欲のないいい瞳をしておる」
ふっと口角を上げるキツネ。
「えっとーお名前は?」
「名前はない。強いて言うなら稲荷神じゃ」
えぇ困るなぁ…
「名がなくて困るのなら童がつければ良い」
「えぇ責任重大だなぁ…」
そういえば、キツネで #御先稲荷__オサキドウカ__#というキツネの憑き物の名称があったはず。
誰にも憑いてないからトウカにしよう。
「じゃあ、トウカで…」
「そうか、じゃあそう呼べ」
「どこか住む場所はあるかのう」
キョロキョロ見渡したあとトウカは答える。
「後ろの神社じゃだめですかー?」
「ふーむ、この子らも住んでもよいのか?」
大きなキツネの周りの子狐達(普通にでかい)を見ながら答えるトウカ。
「もしかして小さい?」
「いや、わらわとキツネ達なら十分な広さじゃ」
ぽふん。
トウカが人の姿になる。
おっぱいでっか…。
巫女のような格好をしている。
目に毒である。
「ふふ、童も男じゃのぅ」
そう微笑むとキツネ達を連れて神社へと入っていった。
「私の家がとられましたー!!!」
叫ぶ女神。
「ましたー!」
真似するスラちゃん。
「儂と被っている」
呟くマオ。スタイルボロ負けだけどな。ガキんちょ魔王。
神社とコロシアムができたことで準備は終了。
レストランにて屋台の内容を考える。
「マオは何食べたいー?」
「シュークリーム」
ブレないマオ。屋台にシュークリームのイメージない。出店にもない。
まぁ作るけど。
まぁ適当に作ってもらうか。
粉もんだろ!多分!
数十分後屋台っぽい料理が並ぶ。
焼きそば、お好み焼き、ケバブ、ホットドッグ、唐揚げ、綿あめ、シュークリーム。
試食係は私とマオと女神とトウカとキツネ達。
私は焼きそばを一口。
うんまい!!
パンパン
「シェフを呼べ」
オドオドしたシェフがこちらを見る。
「うまいぞよ」
パァと明るくなるシェフ。
「下がって良い」
部屋を出ていくシェフ。
「なんじゃその口調」
変な目で見てくるマオ。
「あぁよく考えたら屋台の打ち合わせだから帰らせちゃ駄目だ」
パンパン
「シェフを呼べ」
「やめんかそれ」
マオに叩かれた。いたい。
キョロキョロと見回すトウカ
「なにか探してるの?」
「稲荷はないのか稲荷は」
シュンと落ち込むトウカ。
パンパン
「シェフ!いなり寿司を作ってたも!!」
「はい!直ぐ作ります」
「くるしゅうない」
ふんぞり返る私。
もうマオは何も言ってこない。
かなしいのでやめる。
「ふむ、これはうまいのう」
お好み焼きを食べ喜ぶトウカ。しかし、キツネ達は何も食べてない。
「キツネ達はなにが好きなの?」
「肉じゃ」
「ん?」
「生の肉じゃ」
「へ…へぇ…」
試食会なんだがここ…
とりあえず、マジックボックスからウルフの肉を出した。
いつ狩ったかもおぼえてないが平気だろう。
群がる狐たち。
「美味しい?」
そうキツネ達に聞くと白い毛並みを真っ赤に染めながら、わんと高く鳴いた。
コンコンじゃないんだ…。
想像と違うキツネの鳴き声にがっかりしながら試食会は終わった。
そしていよいよ運動会前日。
殺気立っていくエルフィリアとナツキ組の面々。
そんなに気合いれんでいいよ。楽しくやろや…。
トウカが私に声をかける。
「なんやら殺気立っている奴らが多いのう」
「明日運動会をやるんだ。気合が入ってるみたい」
「ほう、運動会とやらはわからんがわらわは見に行っても良いのか?」
興味津々なトウカ。
「もちろんいいよー。キツネちゃんたちも連れてきてもいいよ」
「そうかそうか。では、楽しみにするとしよう」
のどかに談笑をしているとルージュが顔を出す。
「よー、エル久しぶりやな」
「あー、ルージュじゃん久しぶり」
「なんやら面白いことになってるやん。なんでウチを呼ばんのや!」
「コヤツの目、欲深いのう…」
ボソッと呟くトウカ。
「なんやねん、いきなり失礼なやっちゃな」
「ふーむ、不愉快じゃ」
サッと右手を払う仕草をする。
「#去ね__いね__#」
そうトウカが呟いたときルージュはどこかに消えた。
「え?ルージュどこいったの?」
「さぁ?あやつの家じゃないかのう」
クククと笑うトウカはとても楽しそうだった。
うーん、……よし、明日はがんばってヒールするぞー!
考えないことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます