第36話 運動会 素手トーナメント1回戦



「はい、これから運動会を始めます」


「それで、私のメイドの上下を決めるだけだと面白くないのでMVPや健闘賞を設けたいと思います」


「MVPや健闘賞に選ばれた選手には私特製の武器を進呈します」

めちゃめちゃ歓声があがる。うるさい。


「じゃあ皆さん頑張ってください」


私の声で開会式の終わりを告げた。


会場のアナウンスと進行はユーリ。実況は私とマオが行う。


「選手宣誓 エルフィリア陣営代表とナキリ組代表は宣誓をお願いします」


「「私たちはスポーツマンシップに則り戦うことを誓います」」


ニーナとナツキはジッとお互いの目を合わせる。

いつまで立っても動かない2人。


「はいはい早くどいて」

そう私が声をかけるとプイと2人が視線を外した。


「一種目目 素手トーナメント出場者はステージにお上がりください」


「素手トーナメントじゃが2人づつ出るのでニ回勝ったら優勝じゃ」

マオがしょうもないと言わんばかりに喋る。

トーナメントってかっこいいじゃん…。


エルフィリアからはフラムとエレーナ。ナツキ組からはカオリとハナが出場する。


一回戦 エレーナ vs カオリ



両者がステージに立つ。


「よろしくねー」

と手をひらひらするエレーナ。


「よろしくおねがいしますー」

ぽやぽやなカオリ。


「果たして試合になるのか…お茶でも飲みそうだ。」

私が実況する…。


「まぁカオリはわからんがエレーナは言葉とは裏腹にやる気じゃぞい」

マオが喋る。


「初め!」

ユーリが開始の合図をする。


「じゃあ、いっくよーん」

腑抜けた声を出したエレーナが屈み消えた。

直後、カオリの目の前に現れ左足でカオリの右足を目がけ蹴り抜く。


ずがん。


「いたーい…」

ぽやぽやの声を出したカオリだが、微動だにしてない。


「えぇ…結構マジだったんだけどなぁ」

カオリの右足を見て引くエレーナ


「お返しですー」

思いっきり振りかぶった右手でエレーナの頭を叩こうとする。


あまりにも大ぶり過ぎて避けられるが地面に当たったカオリの右手はステージを砕く。


「避けないでくださいー」

ぽやぽやのカオリ


「避けないと流石にしんじゃうっしょ」

笑っているエレーナ。


「まぁ、当たらなきゃいいしねー」

凄まじいスピードで攻撃をするエレーナ。


ちょいちょい反撃をカオリがするが大ぶりすぎて当たらない。


「むう…あたりませーん。いたいですー」

涙目になっていくカオリ。


「なんかいじめてるみたい…」

私が呟く

「あ、そろそろ決まるぞ」

マオが呟いた。


「これでおしまーい!」

エレーナがクルッと一回転し回し蹴りをカオリの頭部に放つ。


バゴッ


エグイ音がする。


しかし、カオリは倒れない。


「これで捕まえました」

カオリはエリーナの足を掴むと握りつぶした。


「いっっつ」

顔を歪めるエレーナ


「これで早く動けません」

ポヤポヤのカオリがエレーナに向かって歩く。


ぱたん


きゅうと言いながら倒れるカオリ。


「勝者、エレーナ」


あっぶなーと呟いたエレーナはこっそりガッツポーズをした。


私は慌てて二人に駆け寄り魔法で持ち上げ医療室に運んでいく。


〈ヒール〉


「二人共いい試合だったね」

そう声をかけるとエレーナは少し顔を赤らめ嬉しそうにした。


「まーねーエル様が見ててくれるから頑張ったし」

そう言ってニコッと笑うエレーナ。

今は普通なんだよなぁ今は…


すると目を覚ますカオリ。


「あらー負けてしまったわ」

ぽやぽやのカオリ。


「いい試合だったよ!カオリちゃん強いんだね」


「あんまり戦うことは好きじゃないんですけどね」


「そんな感じはするよ」


「でも、負けるのもそんなに好きじゃないんです」

ぽやぽやのカオリの目に少し力強さが見えた。


「次あったらまけませんよー」

そう語ったカオリの顔はお茶を飲んでいるおばあちゃんのような暖かい顔だった。




さっきの顔は気のせいだったのだろうか。

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