第11話 獣人騎士 サーシャ
翌日は忙しかった。
朝からギルドへ行って先生を連れて家に招待。
先生はマヤという名前だ。マヤ先生…いいじゃん。
部屋を案内して個室を使っていいと言うと喜んでいた。
生徒たちになる獣人達を紹介すると
まぁ、なんて可愛らしい子達ととても喜んでいた。
これなら大丈夫だろう。
ついでに、ビビらしてはいけないと隠していたスラちゃんもみんなに紹介しておいた。
速攻みんなのアイドルになった。隠す必要はなかったようだ。
そして、問題の騎士だが名前はウィルダム・ラインハルトと言うらしい。なげーよ。
ウィルと呼ぶことにした。45歳らしい、おっさんである。
ウィルはサーシャの剣の先生となり鍛錬を始めることになる。
私としてはサーシャには勉強もしてほしかった為、午前中は勉強で午後から鍛錬にしてもらった。
サーシャは一瞬嫌がったがなんでもするって言ったため文句は言わなかった。
予定が出来上がったところでマヤ先生とウィルの歓迎会とお家完成パーティーを開催する。
「じゃあ、歓迎会と新築パーティーを開催します!」
「みんなグラスは持った?」
私が問いかけるとみんなはグラスを掲げる。
「「かんぱーい!!」」
まだ、見た目は未成年なので子供達と一緒のオレンジジュースを飲む。
異世界オレンジジュースはうまい。おすすめである。
周りを見ると各々おしゃべりやら飯を食べるなりしている。
マオは2人の子供達とご飯を一生懸命食べている。
あの二人はゾフィとユッテという名前で二人ともねぼすけさんで今日の少しやった授業にあんまりついていけてない子達だった。
多分、サーシャが言っていた頭の良くないやつらだ、サーシャと冒険者になるのだろう。
残りの子供達はマヤ先生の近くでおしゃべりをしている。
ジュリ、ディア、カロルの3人だ。今日の少しやった授業がおもしろいらしく質問を次々としている。
私だったらうるせえ!となるところだが、マヤ先生は楽しそうに答えていて微笑ましい。
頭の良さそうな3人は知識をつけたらルージュのところへねじ込もうかと思ってる。
元の私の世界での計算式や帳簿の付け方を教えれば有益な人材になってくれるだろう。多分。ルージュと相談だ。
サーシャはウィルから毎日のトレーニングを聞かされているようだ。
少し聞いただけでげっそりする内容だった。
一緒に剣を教えてもらおうと思ったがやめた。
飯を食べているとマヤ先生がこちらに来る。
「ご飯合わなかったですか?」
「いえいえ、こんなに美味しいご飯初めて食べましたよ。可愛い子たちもいますしここに来て良かったと感謝しています」
丁寧な言葉だな…。さすが先生。
「今日軽く授業をさせていただいたのですが、あの子達獣人だけあって少し体を動かしたいみたいなんですよね」
頬に手を当てて首を傾げる先生。絵になるなぁ。
「んーじゃあ、午後の1時間だけウィルとサーシャと一緒に鍛錬でもしますか?」
「そうですね、ただ、私の授業についていけてない2人がいるので午前中は計算とか常識とか教えて午後の1時間はみんなで鍛錬。その後ゾフィちゃんとユッテちゃんは鍛錬でもいいかも知れませんね」
なるほど、そうしよう。あとでウィルに相談だ。
マヤ先生とのおしゃべりも終わりのんびりしているとのそのそと動く獣人達がいた。
アホほど食べたのだろ。ゾフィとユッテはソファーでお腹を出して寝始めた。
スラちゃんがゾフィの枕になっている。大丈夫だろうか。
もう食べられないよう。っていう寝言を言いそうなので近くに寄ってみる。
「お主、儂は明日からどうしたらいいんじゃ?」
マオが声をかけてきた。
「そうだなぁ…一緒にダンジョンでも回る?」
「そうじゃな、信頼度は低いとは言えウィルもおるしな」
まだ、ちょっと根に持ってそう。今度被害少なそうなところで思いっきり戦わせるか。
どっちが先に持ち物に行くかの勝負。
「じゃあ、予定も決まったところで今日はお開き!!」
そこから私達の生活が始まり、それから3年が経った。
私はというとマオと一緒にダンジョン巡りをしたり創造魔法を使ったりぼちぼち忙しい生活だった。
ジュリ、ディア、カロルの3人は3年間毎日勉強して無事ルージュ商会への就職が決まった。
とても優秀な3人のようでルージュも大喜びで採用してくれたが、コネ入社みたいなもんで私との繋がりも計算に入れているみたいだ。
ゾフィとユッテは冒険者になるためぼちぼちトレーニングや鍛錬をしている。
ユッテは魔法が使えるらしくマオが先生(笑)になってちょいちょい教えているようだ。
一人前になるにはあと2年ぐらい必要みたい。
そして、1番忙しかったのはサーシャだ。
朝1番に早く起きてランニング
そのあと私と一緒に朝食の準備
アホほどの量の朝食を食べ(これもトレーニングの一部)
マヤ先生の授業を受け、昼ごはん(アホほどの量)
そして、ウィルとの鍛錬。
鍛錬内容は何度も見たが毎回同じ内容だった。
ボコボコにされてはウィルに回復され、またボコボコにされていた。
獣人は短剣のイメージだったがウィルが先生だからだろうか、普通に盾と剣を使っていた。
鍛錬が終わるとまたランニングへと出かけ晩飯(アホほどの量)を食べる。
そのあと寝る前までウィルとの鍛錬。
その後寝る前の時間になるとベッドに座っている私の正面で地べたに座り、私の膝の上に頭を乗せウグウグと泣く。
毎日辛い辞めたいと泣き言を言ったあと、バッと顔を上げプイッとそっぽを向き扉の前に行く。
そして、真っ直ぐ私を見てありがとうとお礼を言ってかえっていく。
1年目は毎日繰り返した。
2年目になるとよる私の部屋に来る回数が三日に一回、五日に一回と減っていった。
3年目にもなると1週間に一回、月に一回となっていき最終的になくなった。
そして、サーシャは一人前の騎士となった。
成長しない私のせいもあるが見上げるほどの身長にもなっている。
腕はムキムキで腹筋バキバキ、太ももやふくらはぎは私の三倍はあるだろう。
お胸も成長して大人らしいラインができている。
顔も女性らしく成長しているが厳しい鍛錬のお陰だろう、鋭い目つきで普通に怖い。
「ありがとね、エル」
「サーシャは頑張ってたもんね。お礼を言われるほどでもないよ」
「でも、エルは私を助けてくれた。」
一人称が俺から私になったサーシャはとても大人らしくなった。
「これは私からのプレゼントだよ」
私の創造魔法で作った剣と盾、そしてフルプレートメイルを出した。
「あ、ありがと」
サーシャが照れながらお礼を言う。
「いいから装備してみてよ!」
装備しているところ見てないから早く見たい。私の傑作だからだ。
「う…うん!」
子供っぽい返事をしながらいそいそと装備していくサーシャ。
大人になってもたまに子供っぽいところ出してくるんだよなぁ。
全てを装備したサーシャ。
そこには魔王の配下にしか見えない鎧の騎士がいた。
私達は魔王軍だからね。
真っ黒の鎧で紫の光るラインでアクセントをつけた。
うーん、実に禍々しい。
ちなみに教えるつもりもないが身体強化を使うと紫の煙が鎧の隙間から出るようになっている。
クソオシャレ仕様である。
「ど…どうだ?」
モジモジしながら聞いてくるサーシャ。
うーん、真っ黒の鎧でモジモジされても怖い!
「似合ってるよ!」
フルプレートで兜も被ってたら似合ってるもクソもないが…
「そ、そうか…嬉しいな」
モジモジとするサーシャ。モジモジサーシャである。
「今までありがとう」
サッと綺麗な姿勢を取り私にお礼を言う
「二度と会えないわけじゃないんだ、また会えるよ」
「そ…そうだけど」
モジモジサーシャ。
「お…お願いを聞いてもらってもいいか?」
モジモジサーシャが兜を取りながら聞いてくる。
「もちろんいいよ」
「そこに座ってほしい」
私は頷いたあと岩に腰をかける。
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片膝をつき私は彼に剣を渡す。
「私は貴方に忠誠を誓う」
私は貴方に助けてもらった。
私の仲間も助けてもらった。
この剣も貴方からもらった。
この盾も貴方からもらった。
この鎧も貴方からもらった。
守る力も貴方からもらった。
もらってばかりだ。どうしたらこれらを返せるのだろう。
「如何なるときでも私は貴方の騎士だ」
真っ直ぐ彼を見ながら答える。
すると彼はゆっくりと頷き剣を私に渡す。
ふと、涙が溢れる。ゆっくりと彼の膝へと頭を埋める。
ウグウグと泣くと彼の手が頭を優しく撫でてくれる。
とても暖かい、なんどこの膝、この手に助けられたことか。
「よくがんばったね」
彼は優しく囁く。
私はこれまでにないほど涙をこぼした。
どれくらいたっただろう。落ち着いた私はバッと立ち上がり涙を拭く恥ずかしくて彼を見れない。
「マオやみんなには会わなくてもいいの?」
彼は私に問いかける。
「私は見ての通り涙脆いのだ、それに二度と会えないわけではないだろ?」
ニヤッと笑うと彼は答えた。
「そうだね、またすぐ会えるよ」
彼の声はいつも優しい。
また、甘えてしまいたくなる。
私は心にムチを打ち彼の方を向く、ありがとうと彼の目をしっかりと見てお礼を言い。
兜を被り私は旅立った。
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