第10話 続・獣人と騎士と魔王



1…2…3…4…5…


あれ一人足りない。

振り返るとマオの方へと駆け出している獣人の子が。


「おい、あぶn…マオ!」

マオの左腕がない…

呆然と立ち尽くす


「おい、しっかりしろ!」

サーシャに背中を叩かれる。

そ、そうだ。私がなんとかしないと

急いでマオの方へと向かう。


騎士が光を放つ


〈セイクリッドブレード〉


光の刃がマオ達を襲った。




「あいつは無事かの…」


「マオが…守ったおかげで無事だよ…」


「あいついっつも…儂の角を触ってくるのじゃ…鬱陶しいこと鬱陶しいこと…」

二ヤと笑うマオ。

体が上半身と下半身に分かれている。

どうしたら治るんだ…。どうしたらいい。

一生懸命考える。




「今日は…カレーがいいのう…しゅーくりーむもじゃ…」



「作ってやるからもう喋るな!」


「いや、もういいんじゃ。なんとなくわかる。」

キラキラと白い粒子がマオの傷ついた箇所から出ていく。



「「マオ死んじゃやだよ!!」」

子分共が慌てて駆け寄ってくる。


「ふん、ここまで好かれるとはな…」


「お前らよ、エルについて行けば大丈夫じゃ。こやつは…」

血を吐くマオ。

震える右手で子分達を撫でた。


「まぁええわい。ありがとなエル。また機会があれば会おうぞ…」



マオが真っ白になり光の粒子となって消えた。



許さない…許さない…許さない…許さない…許さない…許さない…許さない…許さない…


どす黒い感情が私を埋め尽くす。

立ち上がりどす黒い感情に身を任せ騎士へと魔力の塊をぶつける。


騎士は盾で防ぐも魔力の塊は盾を破壊し騎士を吹き飛ばす。

木に叩きつけられた騎士は兜が壊れ顔が見える。


へーお前そんな顔してるんだ


なにか喋っているが聞こえない


何を喋っていても関係ないけど


右手に魔力を込める


これで終わり




ふと背中に温かいものを感じる


振り返ると涙をボロボロと溢すサーシャが目の前にいた


後ろにも涙をこぼしこちらへと歩いてくる子分達


やめたいけどマオは帰ってこない


マオは帰ってこない



ふと、頭に声が響く


《《持ち物》を開いてください》


そんなことはどうでもいい


《《持ち物》を開いてください》


うるさい


《《持ち物》を開いてください》


うるさい


《《持ち物》を開いてください》


観念して開く。


持ち物の中には《UR 異世界魔王》があった。





禍々しい地獄の門?が目の前に


ギギギと扉が開くと恥ずかしそうに頬を掻きながら歩いてくるマオ。


「えーっと、よ…よろしくじゃ…」


マオに飛びつく。


「復活できるなら言えや!!」


「儂だって知らんわい!!!」


獣人達も飛んでくる。


「心配させた罪でくすぐりの刑だ!いけ!お前たち!」


獣人達を指揮して攻撃する。


「がはは…やめろ!!がはははは!!やめろっていってるじゃろgははははは」


10分ぐらいやった。

よだれまみれで顔はぐちゃぐちゃ髪もぼさぼさ服ははだけ肩で息をするマオの姿があった。


ふー、ちょっとやりすぎたけど落ち着いた。

辺りを見渡すと倒れた騎士がこちらを見ていた。


「これが世界を平和を壊す魔王に見える?」


「いや、まったく見えんな…先程のお前のほうがよっぽど魔王だ…」

失礼だなこいつ。


「どうやら俺の勘違いだったようだ」

そういうと騎士は立ち上がりこちらへ向かってくる。


「いつの時代も子供は素直だ」

そういうと獣人の頭を撫でた。


ペシン


「「お前嫌い!!さわんな!!」」

シャーと獣人達が一斉に騒ぐ。

そりゃそうだろう。お前今のところ敵だからな、いい話に持っていこうとすんな。


落ち込んだ騎士を置いてきながら獣人達はマオを連れて家に入っていった。


残ったのは騎士と私とサーシャ。


「んで、お前はどうすんの?」

騎士に問いかける。


「俺の勘違いでお前の仲間を傷つけてしまった、すまない」

綺麗なお辞儀をする騎士。


「まぁ助かったからそこはいいや、まぁよくないけど、まぁいいや」

まだ心の整理がついてないかも知れない。


「まぁ、勝手に呼び出したのは私だし許す」


「そう言ってもらえると助かるよ、だが、俺自身が俺を許すことができなくてだな。よければだが償いをさせて欲しい」


「んー、もともとこの森って魔物が多いから子供達を守ってもらおうと思ってたんだよね。嫌われてるから無理そうだけど」

そのようだと苦笑いをする騎士。


「じゃあ、俺に剣を教えて欲しい」

サーシャが答える。


「俺はそんなに頭が良くないし、あいつらも頭が良くないやつがいる。女で力もないから生きていけない。だから、俺が強くなってあいつらと冒険者をやりたいんだ」

騎士を見つめるサーシャ。



「どれくらいで一人前にできんの?」

騎士に問いかける私。


「そうだな、平均で5年だ。やる気と根性があるやつなら3年だな」

騎士はそう答える。



「サーシャ、なんでもするって言ったよな?」

サーシャに問いかける。



「うん、言った」

真っ直ぐな目でサーシャは答えた。






「サーシャの3年を私に寄越せ」

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