第4話 レベルアップとお猫様
カッキ――――ン!
うむ!
見事な場外ホームランニャ!!
これで手強そうな魔物は一時戦線離脱ニャ。
え!?
遺跡の中でどうニャってかって?
細かい事は気にするんじゃないニャ!
「この能力でまず強い奴を外に放り出すニャ。そして次は――」
ラカの持つバットが炎を纏ったニャ。
「――『
カン!
カン!
カン!
カン!
ラカのスイングで襲ってくる魔物が次々と打ち分けられ、部屋の各所へ散らばって行くにゃ。これが発動するとラカが敵と認識した奴らは強制ノックバックするのニャ。
「最後に1匹だけ孤立した魔物が襲い掛かって来ニャところを
吾輩の言葉に頷き、ラカが捕まえて身動きできない魔物にバットを振り翳す。
「――『
この必殺技が発動すると殴られている奴は萎縮して無抵抗になり死ぬまで殴られ続けるのニャ。
「ハァハァハァ……」
「いっちょ上がりニャ。次々と何の抵抗もできない魔物を無慈悲に撲殺するニャ!」
この部屋の魔物をすべて倒してレベルを上げて、ラカも少しずつ1匹ずつ魔物を撲殺するのが板についてきたニャ。
「た、確かにこの能力ってとても強いけど、絵面的に勇者って言うより卑怯な悪役だよね!?」
血塗られたバットを握って、孤立させた魔物を無抵抗なのをいいことに、殴って殴ってとにかく殴って、ぴくりとも動かなくなるまで殴り続けるその姿はどこからどう見ても――
「――弱い者虐めしてる
やれやれ、とんだ勇者がいたものニャ。
「ロペの指示に従っただけなのに!」
「つべこべ言うニャ。すべて弱いラカが悪いニャ。弱者に戦い方を選ぶ権利はないのニャ!」
まともに正面から戦ったらひとたまりも無いのニャ。
「そ、それは……」
「分かったら魔物を倒して経験値を稼ぐのニャ」
吾輩の言葉にラカが決意の籠った目で頷いニャが……
「うん、そうだね。強くなれば僕もきっとカッコいい戦い方ができるようになるよね!」
「…………」
「なんで目をそらすの!?」
「まあ夢を見るのは人に与えられた自由ニャ。それがどんなに望みがなくても……」
「ひ、ひどい!」
そう言われても望みは最初から1ミリも無いニャ。
「可能性は完全にゼロでも希望を持つのは人の勝手ニャ。絶対に実現不可能でもカッコいい自分を妄想してもいいのニャ」
「変な慰め方しないで!」
妄想するだけならタダなのニャ。
空想の中のカッコいい自分で現実を慰めるのニャ!
「くっ、バットとグラブじゃダメか……いや、まだ諦めちゃダメだ。僕ならやれる! 考えるんだ! きっと何かあるはずだ!!」
無駄ニャことを。考えるだけ無駄ニャ。
「そうだまだ
ラカがキラキラした期待の目を吾輩に向けてきたニャ。
そうか……そこに気がついてしまっニャか。
「どうしても聞きたいニャ?」
「それは自分の装備の事だもの」
「そうニャか……では心して聞くニャ」
吾輩がラカに背を向け後ろ手を組むと、背後でごくりとラカが息を飲む気配が伝わってきたニャ。これを教えるのはとても心苦しいのニャ。
「そのベルトの能力は……装着者に無限の勇気と何者にも挫けぬ不屈の闘志と逆境に耐える鋼の精神を与えて――」
「おお! なんか勇者っぽい!」
「――くれた気がするようニャ、しないようニャ……気もしないでもないようニャ?」
「どっちなの!?」
「ふぅ~やれやれニャ。人は何故そんなにも真実を知ろうとするのニャ? 真実は必ずしも人を幸福にはしてくれないのにゃ!」
「なんかいいこと言ったみたいに誤魔化さないでよ!」
「仕方ない奴ニャ。このベルトは素材がめちゃくちゃ頑丈な他にはなんの能力も付与されていないのニャ」
「衝撃の事実!
「ジアントが言っていたニャ。このベルトは勝利と栄光を手に入れた証ニャ……身につければ自信と勇気が湧いてくるニャ。だから不要な能力なんて付与する必要はないのニャと」
ジアントの至言ニャ。
素晴らしいのニャ。
感動したのニャ。
涙が出るニャ。
「なんか偉大な人の格言みたく言ってるけど、けっきょくは硬いだけの何の能力もない変なベルトに御大層な名前付けただけだよね!」
ちっ!
「これ装着した意味あったの!?
ねぇホントに意味あったの!?」
「黙るニャ。世の中には意味のないことなどいっぱいあるニャ。全ての事象に意味を見出そうとするんじゃないニャ!」
「もっともらしいこと言って誤魔化さないでよね!」
「バットとグラブが最強レベルで強いんだから問題ないニャ」
「くっ、ダメなのか。本当にダメなのか?」
これ以上を求めるなんて人間とは欲深い生き物ニャ。求めれば求めるほど欲は際限がなくなるのニャ。色即是空空即是色ニャ。世は諸行無常ニャ。欲しがりません勝つまでニャ。だからさっさと諦めるのニャ。
「いや、待てよ……まだだ、まだ終わらんよ!」
「今度はなんニャ?」
「このベルトには神力が篭められていないのなら、これから能力を付与するのが可能なんじゃないか?」
ふぅ、諦めの悪い奴ニャ。
「まあ、それはその通りニャ。鍛治の神に願えばなんとかなるとは思うニャ」
「鍛治の神か……簡単には会えないけど、このベルトにカッコいい能力を付加できれば……これで希望が出てきた!」
ラカの目に精気が宿って、やる気を
まあ、どんな能力を付与しても見た目の怪しさはどうにもならんニャ。
頑張るだけ無駄ニャ。
まあ、本人が喜んでいるなら、それでいいのニャ。
黙って希望を持たせておくのが大人ってもんニャ。
決して面倒臭くニャったとか、面白がってるとかではないニャ。
「それじゃ鍛治の神に会うためにもレベルアップしなきゃいけないニャ」
そしてラカの最後の希望を利用しようとしているわけでもないニャ。
「そうだね。よーし頑張って強くなるぞぉ!」
「その意気ニャ」
ちょろい奴ニャ。
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