第2話歓迎、サンタクロースさん

機体が着陸と同時に、ドスンと揺れ動いた。

033サンタクロースと、赤鼻はその衝撃で目を覚ました。まだ、033は酒臭い。

機体から次々とプレゼントが運び出される。

佐川急便の担当者は、

「これはこれは、遠い国からようこそ名古屋にいらっしゃいました。名古屋市内の住所ごとに、仕訳してプレゼントを配達致します」

033は、タラップから下りて、トイレで盛大にリバースした。

「今日は、クリスマス。頼みましたよ!木下さん」

木下と呼ばれた担当者は、

「かしこまりました」

と、言った。


033は赤鼻に、

「今から、中村日赤病院の小児病棟に行くぞ」

「あいよ!033の旦那」

033は赤鼻の引くソリに乗り、病院へ向かった。

「はいやっ」


バチン!


033は赤鼻の尻をムチで叩いた。ソリはストップした。

「033さんよぅ。いちいちムチで尻叩くなよ!一生懸命走ってるし、イボ痔なんだ。文句があるなら、タクシーに乗りなっ!」

033は申し訳なさそうに、

「ちょっと、急いでるんでね」

「あんたさぁ~、何人の子供に今日中に届けるの?」

「ざっと、2000人のちびっこさ」

赤鼻は、鼻で笑った。

「俺さ~、中村日赤病院まで付き合うから、その後はタクシー使いな。俺はスーパー銭湯で軽く汗流して、一杯引っ掛けるわ」

「ぐぬぬぬ、何て薄情なんだ」


サンタクロースは、中村日赤病院の小児病棟を訪れた。

入院中のちびっこ達は、サンタクロースの姿を見付けると、プレゼントに群がった。

「はいはい、遠い国からやって来たサンタクロースだよ。めんどくさいなら、033でいいよ」

033は、1人ずつプレゼントを渡した。

「やった、チャンジャの詰め合わせだ!」

「わたしは、名宝ハムセット」

「僕は……サンタさん。これなんて読むの?」

「それは、黒霧島くろきりしまじゃよ」

男の子は言った。

「サンタさん、オジサンかパパが好きなものばっかりじゃないかぁ~」

033は慌て、袋を確認した。


『東区、1人暮らしの40代男性プレゼント』


「し、しまった。慌て過ぎてまちごーたわっ!」


ある家。


ピンポーン


インターホンが鳴る。

頭頂部が禿げている男に、宅配便が届いた。

男は箱をくるんでいた、包装紙を破った。

その箱は、『セーラー・プーン』のフィギュアであった。


メッセージカードには、

『可愛い、君へ。サンタクロース033より』

男はそのフィギュアを玄関に置いた。

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