死ぬ。生まれる。悪魔になる。

ラッシュガーデン

第1話 生まれる

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 禍々まがまがしい音楽が流れている。


 まぶしさにこらえながら目を開けると、やけに高い天井が見える。周りを見回すと、石造りの部屋の中心に、楽器の演奏する人間が複数人いる。その周りを透明なドーム型赤ちゃんベットが沢山ある。その一つ一つに、人間のようで少し違う赤ん坊達がいる。そして、私も同じベットに寝ていた。

 自分はどんな姿をしているのかと両手を見ると、自分も人間でない何かの赤ん坊のようだ。脂肪も有るが、人間の赤ん坊にしては明らかに筋肉の付き方が良い。手の形も色も少し違う。軽く動いてみると立つことは出来なかった。

 周りの赤ん坊達をよく観察すると、彼らは多様な姿をしている。肌の色・大きさ・筋肉量等。こうして見ると、演奏者達も人間かどうか疑わしい。天井をもう一度見ると、演奏者と比べてやはり高い。

 ここは異世界なのか、はたまた並行世界なのか。しかし、どちらにせよ転生前の記憶が有って良いものだがまるで無い。よく転生ものの作品なら、ゲームのチュートリアルの如く死んだら神様とやらが出てくるものだが、その記憶も無い。ただ、地球で人間として生活した事実だけは覚えている。こうして大人のように思考出来てることが何よりの証拠だろう。

 考えれば考えるほど怖くなってくる。赤ん坊達が人間のようにも見えるのが、さらに困惑させる。記憶が無いだけだろうが、説明されないのは本当に辛い。


 あれから3日経った。体感では一週間くらい経った気がするが、演奏者の交代や定期的に来る担当の乳母の語り掛けで判断した。たったの3日だが、赤ん坊達は前より少し動けるようになっている。赤ん坊達も早く歩けるように成りたいのか、囲われたベットの中でよく動く。やはり人間では無いようだ。

 この間で分かったことは、演奏者や乳母は間違いなく人間のようだ。彼らは何故か人間でない我々赤ん坊の為に世話をしている。赤ん坊達は、声帯や舌にはまだ筋肉が付いて無い為、感情の表現しか出来ない。周りの赤ん坊を見る限りでは、流石に話せるようになるまである程度時間がかかるようだ。

 しかし、乳母の話が理解出来てるのも不思議だ。恐らく前世の言語とは全く別の言語を話している。 転生ギフトというやつか?しかし、転生して得たスキルがだったら凄い嫌なんだが。どうかチートみたいなスキルであってくれ。

 そもそもがいきなり喋りかけてきて、色々助けてくれるもんじゃないのか?こういう現実的なのはやめて欲しい。


 あれから数日が経った。僕は暇すぎて、現状出来るトレーニングを始めた。4日目以降は、基本的には変わらない。最初の3日間は赤ん坊達の身体能力には驚いたが、基礎能力が高かっただけのようだ。

 ある程度の知識と思考能力を持って生まれたことは悪いことだけでは無かった。今、おこなっているトレーニングがそうだろう。周りの赤ちゃん達はベットに設置された玩具おもちゃで遊ぶことしか出来ない。いや、本来はそれで良いのだ。僕も玩具で遊ぶことは意外と楽しい。が、彼らに出来ないことをやってる優越感にもひたっている。それに大人達にバレないようにやるトレーニングも良い。バレると変に疑われる可能性があるからな。この緊張感が良い。

 とりあえず、今やるべきことは分かった。まずは、学校が有るのか分からないが、子ども達の中で上位1%を目指す。転生者の目標としては低い気もするが、この世界の常識が分からない。変に現実的な世界だ。今は差をつけられるかもしれないが、チートな能力を持ってるとも限らない。やれることはやって、将来備えよう。

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