第11話 地の文

 最近、ぶん、のしっかりした作品を読む機会が多くあった。


 ぶんとは、文章、小説などにおいて、会話以外の説明や叙述じょじゅつの部分をいう。


 イノブ〇ではない。イノブ〇は生活雑貨の店である。


 っと、またしょうもない脱線をしてしまった。


 ともかく、ぶんとは、会話以外の文章である。


 それがしっかりした作品を読むと、自分がとても『ハズカシイ』気持ちになるのだ。


 最初は自分が、しっかりしたぶんを書けていない、からだと思った。


 ところが、ちょろちょろと執筆をして、それを修正・推敲していて、はっと気づいてしまったのだ。


 私は自分のぶんを、ごっそり削除していた。


 けずっていたのだ!


 最近の流行はやりの、読者さまに読んでもらいやすいライトな作品を目指そうとして、ぶんを、必要最低限にまで削って削って、削りまくっていたのだ。


 かつお節のごとくゴリゴリに削られて、けずぶしのように、私のぶんはふわふわしている。


 これは、スーパーでよくお目にかかるけずぶしパックだ!


 商店街の熱いタコ焼きの上でクネクネ踊っている、あれだ!


 さっと使えて、時間がかからず、お手軽な主婦の味方。


 私は、うーん、と考え込んでしまった。


 料亭のように、固いかつお節をそのまま手に入れ、料理のたびに削り、使えば、香り高くコク深く、本格的においしい。


 けれど、スーパーで買って家で使うのも、商店街の熱いタコ焼きの上で踊るのも、今やほぼ全部お手軽なけずぶしパックだ。


 小説でも同じようなことが起こっている。


 つまり、時間をかけてじっくり読ませる作品をつくるか、短時間で素早く読める作品をつくるかの、せめぎあいだ。


 時と場合によるだろうが、需要じゅようが増えているのは、短時間でサッと読めるほうなので、つい、けずぶしパック的な作品をつくろうとしてしまう。


 しかし、中身で勝負をすれば、やはりじっくり読ませる作品にはかなわない。


 なので、ぶんの多い、香り高いコクの深い作品を味わうと、ぶんを薄くけずりまくって、けずぶしパック的になりつつある自分の作品が『ハズカシイ』気持ちになっていたのだ。 


 初心者の皆さま、あなたの作品はどちらを目指されるでしょうか?


 私も含めて、書く皆さまと読む皆さまのお好みが、これからの小説のかたちと流れを作っていくのでしょう。


 さて、私の最近書いた長編を見てみると、会話文かいわぶんぶんがだいたい半々くらいかな、という内容になっていた。


 会話文かいわぶんぶんが半々で、あっ、会地カイジだ、と、ざわっ……ざわざわっ、してしまう私は、クセモノ! である。 

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