第4話 ご飯2

ライトとエマは町の中をしばらくさまよい歩いてやっとの思いで冒険者ギルドにたどり着いた。

「迷ったね、ライト君」


「もっと詳しく場所を聞いておけば良かった。絶対、何回か目の前スルーしてるなこれ。」

何回か、冒険者ギルドの目の前をスルーしていたのは、確実だった。その証拠に冒険者ギルドの前には同じ足跡が3往復ぐらい残っていたいたのだ。


しばらく、ライトとエマは目を合わせて笑った後に、古びた建物を眺めた。冒険者ギルドは廃れている町と同じように廃れている空気があった。


それから

「「冒険者ギルド、ボロボロですね。」」

綺麗にシンクロした。それから寒さで、少し震えながらライトは冒険者ギルドのドアを開けた。それにエマも続いた。


冒険者ギルドの中は外見よりも綺麗で、そして以外にも面積があった。錆びれている町の割には、冒険者ギルドは栄えていてそれなりの人が談笑や食事、真剣な話し合いをしていた。奥には、人はいないがカウンターがあり、その隣には何か掲示板があった。部屋は魔法でか、それとも暖炉でか、どちらによってかは不明だが、それなりに温かさに保たれていた。ドアを開けたことで、冷風が吹き込み、一瞬、冒険者ギルドの視線が集まったが、それは一瞬で、多くの人はすぐさま先ほど同じ調子で動き始めた。残りのエマを怪訝な目で見たり侮蔑の目で見てくる人は、エマとライトに睨まれたことですぐに先ほどまでの行動に戻った。


しかし、それ以降二人はドアの付近で停止していた。どちらも冒険者ギルドというものに初めて来たのだ。どうすれば良いかなど知るはずもなかった。


二人が困っていると

「ガハハハッ兄さんたち見ない顔だな?こんな田舎に短期間で人が来るとは、珍しい。」

坊主の恰幅のよいおじさんが陽気に笑いながら入ってきたライトとエマに話しかけた。


ライトとエマは一気に距離を詰められて少し困惑したが、一度目を見合わせて軽くアイコンタクトを取り、一呼吸おいてライトがその人物に返答した。

「ここで、ご飯を食べれるって聞いたんですけど。」

ギルド内で笑う声が聞こえたりしたが、ライトもエマも、目の前の人物も特に気にすることなく会話は続いた。


「ああ、食べれるが、兄さんたちは、冒険者なのか?」

恰幅の良い坊主の陽気なおじさんはそうそれなり丁寧に言葉を返した。


「私とライト君は冒険者じゃないですけど。なんか問題あるんですか?」

今度は、エマが答えた。


「残念ながら、冒険者じゃないと食べれない。………じゃあ、冒険者になるか?」

ライトとエマの絶望した表情を見た陽気なおじさんは、すぐに察したのかそんな提案をした。


ライトとエマは、再びアイコンタクトをして

「「なります」」

そう答えた。防寒着を追剝をしたからと言っても一度全身濡れているので、寒いことには変わりがなかった。だから、二人は暖かい食べ物を食べたかった、だから割と何をしてもご飯を食べる気だった。それが、冒険者になるというだけならば、満場一致で了承するだろう。それに冒険者に興味を持っていた。


「じゃあ、お嬢を呼んできてやるから、ちょっと奥のカウンターの席に座って待っときな。」

そう言われたので二人は言われるがまま奥のカウンターの方に進んだ。



場面転換

しばらくしたのち、ギルドの制服らしき服に身を包んだ低身長の女性が現れた。

「初めまして、フロスト地帯冒険者ギルド、ギルドマスターのサリです。と言ってもギルド職員は私一人なんで対して偉くないんですけどね。」

そう軽く笑顔を浮かべて頭を下げた。


「「初めましてこんにちは」」

それに、エマとライトは頭を下げ返した。


「それで、どういったご用件ですか?」

さっきのおじさんから何も聞いていないのか、それともそのように聞くのが慣例なのか、どちらかは不明だが、ギルド職員は、そう尋ねた。


「冒険者になって、ごはんを食べたいんですけど。」

それに、ライトが淡々と答えた。


ギルド職員は、数度目をパチパチした。なかな聞かないのである、冒険者になる理由がご飯を食べたいというのは、その驚きからしばらく呆然としていたが

「……分かりました冒険者登録ですね。お二人ですか?」

すぐに仕事に戻った。


「二人でお願いします。」


「分かりました、冒険者カードを作るためにいくつかの記入事項があるので、この紙にお書きください。」

そう言いながら、ライトとエマに紙とペンを手渡した。


(あっ、自己申告制なんだ。僕のイメージだと、判定する道具が出てきて魔力がどうこうとかそういうのだとてっきり思ってた。まあ、そういう魔法聞いたことないし、そりゃないか。)

ライトは少し想定外のことに驚きながらも聞くべきことを聞くことにした。

「分かりました、登録料とか必要なんですか?」


「えっと、必要ないですね。その代わり食事代金はしっかりと払ってくださいね。」

そうギルド職員はゆっくりとおそらく営業スマイルを浮かべた。


「分かりました。」

対応をしているライトに対して、エマは、ライトが聞いている様子なので完全に聞く気はないのか、ギルドを見回していた。


「では、書いておいてください。すいません、私は少し他の対応があるので、少し席を空けます。すいません。」

そう言ってギルド職員は、バタバタと奥の方へ消えていった。


冒険者になるために必要な書類の記入する場所は対して無かった。

(信憑性あるのかよ。適当だな)

そんなことをライトが思っていたら、エマも書くべき書類を眺めて

「これ嘘書きたい放題なので、信憑性ってあるんですかね?ライト君」

そうエマが言った。ここで、改めてエマと同じことを言うのも恥ずかしいと感じたライトは無言で頷き、笑顔を浮かべた。


はじめはそんな無駄話をしたが、その後は二人とも真面目に用紙を埋め始めた。

(名前は、まあ家の名前を書けないから、名前だけと、年齢はえっと、ああこの世界に来て14年目だから14歳と学歴は、まあ家庭教師とかはノーカンだから、なし使える武器は、まあ剣、弓、銃、槍こんなところかな?魔法属性は、基本的な魔法属性は使えるから、とりあえずそれを書いておけばよいと、その他・留意点はまあないでしょ。)


考えながらライトの記載した内容は以下の通りであった。

名前 ライト

年齢 14歳

学歴 特になし

使える武器 剣、弓、銃、槍

魔法属性 火、水、風、土、雷、陰、陽 

その他・留意点 特になし


ペンを置いたライトに

「ライト君、私の使える武器、剣でいいかな?」


エマがそんな風に話しかけてきて、素手のほうも強いから素手も書いた方がでいいんじゃない?ということを我慢してライトは

「良いんじゃない。」

適当に返事をした。


エマの記載した内容は以下の通りであった。

名前 エマ

年齢 17歳

学歴 特になし

使える武器 剣

魔法属性 火 

その他・留意点 特になし


二人とも、書き終わった後、少し暇つぶしにじゃんけんをしているところにギルド職員が戻ってきた。彼女は記載された紙を受け取るとそれに目を通した。

「えっと、エマさんですね、はい分かりました。えっと、ライトさんは、失礼を承知で言うのですが?……ふざけてますか?」

資料を見た彼女は、何故かライトがふざけていることを疑った。


「ふざけてないですけど。」

(真面目に書いたんだけど、何?クレーム?)

ライトには理解出来なかった。


「…………えっと、学院などに通ってないですよね。それなのにどうして基本属性全ての魔法を使えるんですか?それに、銃なんて高価なものをどうして?苗字がないので貴族でもないですよね。」

ギルド職員の女性はそうゆっくりと丁寧に呟いた。


ライトはしばらく目をパチパチさせた。

(確かにおかしい。めちゃくちゃ仕事出来るのかこの人。確かに、教えて貰わない限り魔法属性は全部習得とか出来ない。僕は前世の知識の積み重ねでなんとか出来たけど。でも事実だし、でもこれで押し通すと僕が貴族みたいになる。バレても……いや面倒だな。よしうん、偽造しよう、逆偽造しよう。)

「ああ、えっとちょっと待ってください。」


ライトはギルド職員の持つ紙を奪い取ると書き直しを行った。

名前 ライト

年齢 14歳

学歴 特になし

使える武器 剣

魔法属性 火、風 

その他・留意点 特になし



そして書き直した紙ををゆっくりと返した。

「えっと、これでよろしいですか?」

ギルド職員の彼女は疑いの目をライトに向けていた。


これは疑わない方が職務怠慢なので、それが分かっているのでライトも仕方なくその疑いの目を受け止めつつ、必死に取り繕いを行った。

「ああ、その少し使える魔法属性も書いてしまいました。いや、ほとんど使えないので……はい。」


しばらく、ギルド職員はライトを見たのち

「………そうですか。では、これで冒険者カードを作成しておきます。時間がしばらくかかるので。はい、その間にお食事しますよね。えっと」

ギルド職員は、疑いつつも過度な追及を辞めた。ライトは安堵の息を漏らした。


「ガハハハッお嬢、食堂の案内は任せろ。」

ちょうど、その時にここまで案内してくれた陽気なおじさんが戻ってきて、そういった。

((この人暇なのかな?))

そんな風に失礼なことを同時にライトとエマは考えた。


「ありがとうございます、ブライトさんお願いします。」


「じゃあ、食事処と冒険者ギルドの説明を暇なおじさんがしたげるから、ついてこい。」


((……あっ))

陽気に自虐をしてきたブライトというおじさんに罪悪感を感じつつ二人は少し下を向きながら陽気なブライトさんの後を付いていった。

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