第3話 ご飯1

そんなことで、寒い場所に来ることになった、ライトとエマは震えていた。

「さぶい」

びしょ濡れで、少し髪の毛が凍っているエマは小刻みに震え。


「エマのせいでしょ。氷を溶かすと冷水なんだよ。」

そうこちらもびしょ濡れなライトが叫んだ。


彼らが濡れていたのは、二人で町に向かって歩き始めてしばらくしたころに、寒いとエマがつぶやいて、雪の地面を燃やしたからである。雪の地面を足元の雪を燃やしたのだ。すぐに雪は燃えて溶けて水になったその水は周囲の温度などが相まって小さな冷水の湖ができた。そして、それに仲良く沈んでしまったのだ。二人は知らないがこの日は特に寒い日であったことが寒さに箔をかけていた。


「……でも、その話は、今度私がお菓子を譲るってことで解決したでしょライト君。」

エマは軽く震えていた。


「解決したよ、確かに解決したけど。でも寒いってエマがいうのはなんか違うでしょ。」

ライトは震えながらそう叫んだ。まだ二人ともそれなりに元気は残っているように見えた。


そんな会話をしていたら、町に着いた。錆びれた町だった。

雪が降っていることもあるが、それを差し引いても人はあまりおらず、建物はボロボロで、治安もあまり良く見えなかった。その証拠にライトとエマが震えながら町の門をくぐった時に、防寒着をしっかりと着たガラの悪い三人の男性が現れたのだ。


「貴族のお坊ちゃんと奴隷のお嬢さんはこんな所で何をしてるのかな?」

「お兄さん達が遊んであげようか?」

「怖がらなくてもいいから、お兄さん達やさしいからな」

その人たちは、そう言いながら下品な笑みを浮かべた。


そんな三下トリオを見ながら

「「………」」

ライトとエマはゆっくりと顔を見合わせて、ため息をついた。彼らは、めんどくさいそうなので、この場で関わらないと選択肢をしっかりと持っていた。


「「「無視するなや。ああ、身ぐるみ全て置いていけ。ははは、それから奴隷のお嬢さんは置いていけ」」」

その瞬間に彼らの目の前に毛皮が現れた。さっきまでは、面倒な厄介な人間だという認識は、寒さを紛らわす防寒着を得るための毛皮をくれる人に変化した。普段ならもう少し言葉で解決しているが寒さとカール家への怒りなどがあり、いつもより実力行使が早まった。


「僕は、右側がいいですけど、エマは?」

ゆっくりとライトは笑いながらつぶやいた。


「では、私は左にしましょう。」

エマはそれに笑顔で呟いた。。


「「「ボソボソ、何を言っているんだ。」」」

面倒で厄介な治安を悪くしている人々が綺麗に声をそろえて威勢よく叫んだ。その声が叫び声に代わるまでの時間はそこまで必要では無かった。





場面転換

気が付けば、ライトとエマは新しく防寒着を上に着ていた。

「寒くても人のものは嫌ですね。」


「後で新しいの買いましょう。ありがとう、ありがとうございます、ライト君。」

ライトのおごりで防寒着を買うことが決まった。


ライトとエマの足元には毛皮の上着を取られた不審者が、ボロボロになりながら二人倒れていた。そして、体の半分を雪に埋められていた。残りの一人は、ボロボロになりながら、ライトに胸ぐらを掴まれていた。治安が良くないのはエマとライトも同じだった。

「まあでも、ありがとうございます。寒かったんですね。」

ライトは笑いながら胸ぐらをつかんでいるガラの悪い人物につぶやいた。


「ははは、それは、暖かい服を得られて良かったですね。それで、その服は足りてますので、私は見逃してはくれないでしょうか?」

震えながらその不審者は機嫌を取るように言葉を発した。


(先に喧嘩売ってきたのに、何でビビり散らかしてるんだろうか?ああ、そう言えば)

ライトは、そんなことを考えながら能天気に

「えっと、とりあえずごはん、食べる場所ありますか?」

本来の来た目的の一つを思いだした。


「ご飯を食べれる場所でしょうか?冒険者ギルドに行けば良いのではないでしょうか?あっちにあります。」

ビビりながら不審者は町の奥のほうを指さした。



それを見てライトは不審者を離して

「どうも、ありがとうございます、では、エマ行こうか?」

そんな風に呑気に言った。別に命乞いをしている相手を見逃すとかではなく、ライトは正直まだ寒いと思っていた。上着を一枚増やしても寒いものは寒いので、早く暖かい場所に行きたいと思っていたのだ。


「行きましょう。私、暖かい食べ物が食べたいです。」

エマも同じだったのかそう言ってライトの歩く後ろを追いかけた。


立ち去る二人に

「お前ら、ただで済むと思うなよ。クソ貴族が、亜人が、奴隷風情が。」

そう不審者の意識がまだある一人が歩きさる二人に悪態をついた。


それにエマは、振り返りそしてにっこり笑いながらその人物に近づき

「それは、こっちのセリフですよ。知らない人、私はライト君の奴隷じゃないですからね。それにライト君はクソ貴族ではありませんから。」

そう言いながら最後の一人にとどめをして、それから雪に埋めていた。


立ち止まってエマを待っていたライトは、走ってライトの元に戻ってくるエマに

「治安悪いね、この町。まあやり返すのでいいんですけど」

そう言いながら笑った。


「正当防衛ってやつですよね、ライト君」

エマはそう返したが、明らかに過剰防衛だった。それでも手加減はしていた。


「多分そう。それにしても、冒険者ギルドか、とりあえず冒険者にでもなりますか?」

ライトは寒いとか文句をいろいろ言っていたが、ワクワクしている部分もあった。25歳+14歳児は、冒険者という言葉にワクワクを感じていた。


「その前にご飯ですよ。目的を忘れないでください。」

天然で少し抜けているところがあるエマであったが少なくとも、心が少年に戻りかけているライトよりは冷静であった。少なくとも、ライトがしっかりしていないときはしっかりしていた。


「そうですね。それに、その後に宿探しもあるのか?うん、まあとりあえず冒険者ギルドに向かってみましょうか。」

少しワクワクを抑えることが出来たライトはそう言いながら町の奥の方へ再び歩き始めた。

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