第5話 夢の声と私。

 「ト・・・」

「トー・・・」

トーカ。」

私を呼ぶ声がする・・・

気づくとそこは、空白の世界だった。

「夢・・・?」

「そうだ。ここはお前の夢の中。」

「誰?」

「私はヴァンパイアの力を託したものだ。」

「!?」

「そう驚くことでもあるまい」

「私の体どうなってるの!?これから私どうなっていくの?学校とかどうすればいいの!?」

「まぁそう慌てるな。一つずつ順に話していこう。とは言え時間がないから簡潔に話そう。」

私は息をのんだ。夢なのに・・・

「まずは自己紹介をしよう。名前はハリス。バン・ガレット・ハリスだ。察しはついてると思うが、ヴァンパイアの一族だ。私は、今ヴァンパイアの一族を終わらせようとしている。だが、先の大戦で最後の敵を討つ前に力尽きてしまい、本に封印されてしまった。とはいっても、何千年も前の話だが。そして、唯一私の魔眼に残っていた魔力でこの本で意思を保ち、多少ではあるが自由がきいたままでいられる。お前に力を譲渡したのもその魔力があったからだ。」

困惑しつつも私は状況を何とか飲み込もうとした。

「えっと・・・私がこの力を持ったもはあの本を触ったから・・・?なんだよね?それから、この本に封印されてたハリスさんは一族を終わらせるために力の継承者を探してた・・・と?・・・・で、私に何をしろと?」

「話は簡単だ。これから出てくるであろう敵を倒してほしいのだ。」

「倒す?!どうやって?」

「お前に継承した力で倒すのだよ。」

「ちょっと!簡単に言わないでよ!喧嘩もしたことないのに!」

「そう慌てるでない。その為の本だ。力の使い方も書いておいた。2~3日も使えばなれるであろう。」

「えぇ・・・」

悲観的な声を出す私をしり目にハリスは続けた。

「ひとつ言い忘れたが、この戦いを終わらせる方法を最後に伝えておく。」

「終わらせる方法?」

「あぁ。それは、この本を2冊破壊することだ。1冊は十花が持っているもの。もう1冊はまだ行方が分からん。ただ魔力濃度で感知することはできる。そしてこの本を同時に破壊すること。これが終わらせる方法だ。」

「1冊ずつじゃダメなの?」

「燃やすことは愚か、ちぎることも出来ん。」

「そんな簡単じゃないかぁ・・・」

「十花に力を継承して2日目。もうある程度の力はすべてお前の身体に継承された。」

「あとは慣れて本を見つけ出すことだ。それではまた会おう。」

「え、ちょっとまっ・・・」

私はそこで目が覚めた。

「本当に夢だった。力の継承が出来たって言ってたけど・・・」

私は起き上がりとりあえず本のページをめくった。

学校は今日から3連休。とりあえずタイミング的にはベスト。

私はとりあえず、人気のないところを探した。聴覚強化がここで役に立った。

とりあえず、本に書いてあることは実践した。

本には書いてなかったけどどうやら腕力やら脚力やらの身体能力が格段に上がっていた。

練習をしているとじゃ感はあっという間に過ぎていき気づけば、日は傾いていた。

「そろそろ帰るか・・・」

練習を切り上げて帰ろうとしたとき、耳鳴りがした。

「何この感覚・・・誰か・・・来る?」

誰もいないはずの場所なのに誰かが来ることだけがわかる。

「血の匂いを感じてきてみれば・・・小娘ではないか。」

「あんた誰?」

「これから死ぬ奴に名乗る名はない。」

「殺す気なのね。その前に一つ聞きたいんだけど。あんた、人間じゃないよね?」

「人間?笑わせるな。あんな下等生物と一緒にするな。」

「よし、それが分かれば後は、試すだけだな。」

「何を言ってるのかわからんが、死んで私の血肉となれぇ!」

それと同時に地面がえぐれこちらに突っ込んできた。

「はやいなぁ・・・。でもっ!」

十花は左かかとを軸に体をひねり、彼の腕をつかみながらそのまま投げ飛ばした。

「がぁっ!」

彼は勢いよく投げ飛ばされ、壁がえぐれるほど叩きつけられた。

「わぉ・・・。こんなに飛ぶなんて。」

「私の殴る力を利用して投げ出す瞬間に自分の力を上乗せしただと!」

「こんなもんなの?」

「なっ・・・なにぃ?なめるなよ人間!」

彼は手首を持っていたナイフで切り傷を作った。

そこからは血がドバドバと出ていた。

「いきなり何してんの?リスカ?やんでんの?」

「黙れ!サングェ・クラツィオネ・ピッチ!」

そう叫んだ瞬間彼の地面の血だまりから円錐のような棘が生えてきた。

「死ねぇ!」

言葉と同時に棘が発射され私を囲い私の逃げ場がなくなるのが分かった。

「まずい!ムーンネ・ショーフソーリ!」

「なっ!よけただと?!」

私はコウモリの姿となり空を飛んでいた。

「うぉ!成功した!とりあえず今回は逃げよ。」

そのまま私はその場を去った。

「待てぇ!・・・くそっ逃げられてしまった。・・・こんなやつが居るとは。あの方に報告しなくては。」

「ふぅ・・・。とりあえず逃げ切れたかな。練習しててよかったぁ。意外と空とぶの気持ちぃ。もう少しこのままでいようかなぁ。でもこれ血を使うからやめとかないとな。よし、この辺でいいか。アッソンサー!」

彼女は元の人間の姿へと戻った。

「いやぁこんなにすぐ敵と戦うことになるとは・・・。あれもハリスが言ってたヴァンパイア・・・だよね?倒しはしなかったけど・・・と言うか血が足りなくなりそうで逃げちゃったし。なんかまた出てきそうだなぁ。とりあえず今日は帰って寝よ。」今日の出来事で十花が敵からかなりの注目の的となることは彼女の知る由もない。


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