其の五十三・玲奈チップ
『七時です、スリープモード解除』
目が覚めた、玲奈も起きた。いつものように食事を済ませると、玲奈を着替えさせた。
ポルポルを呼び、一階に下りる。
「研究所ですね?」
「そうだ、頼む」
「了解しました」
車が走り出す。
「玲奈、今日の会議はお前も一緒だ」
「いつも付いて行ってるよ」
「そうだが今回はじいさんに連れて来い、と言われている」
「うん、いいよ」
玲奈とポルポルの会話が始まった、俺は後部座席から水を一本取って飲んだ、もうすぐ山も緑が増えるだろう、そう思いながら外を見ていた、研究所の入り口に車が停まった。
「到着しました、駐車場で待機しています」
「ああ待っててくれ」
俺と理恵の研究室に入る、理恵はもう来ていた。
「おはよう、会議室に行きましょう」
「おはよう、そうだな」
三人で会議室に向かった、斎藤博士が入って行くところだった、俺達も続けて入る、少し遅れて沼田博士とじいさんが入ってくる。
資料が配られた、いつもより量が多い、今日はじいさんの秘書まで一緒だ。
「では会議を始める、資料を見たまえ、まずは海斗博士に極秘で書いて貰った、新型アンドロイドのプログラムからじゃ、次の七号から海斗博士のプログラムを採用する、十号まで一気に作ろうか悩んだが、とりあえず七号一体を完成させる、何か意見はあるか?」
俺が手を挙げた。
「海斗博士何だね?」
「この玲奈チップとは何だ?」
「現在玲奈にだけ、特別なチップが入っておる、これを玲奈チップと名付け、今後は玲奈チップを使用する」
「わかった」
「続けよう、七号のボディはほぼ完成しておる、海斗博士のプログラムの玲奈チップももう完成した、後は玲奈チップを埋め込むだけじゃ、異議はないかね?」
誰も手を挙げない。
「よろしい次のページを見てくれ、七号のパートナーはこの男にしようと思っておる、少し目を通してくれ」
男の性格から普段の生活態度、家族の事など細かく書いてある、問題はなさそうだ、男に渡される金額は、俺が貰った金額程多くはないが、生活には困らないだろう。
「この男でいいと思う者は挙手してくれ」
全員手を挙げた。
「よし決まりじゃ、午後からわしがチップを埋め込み、明日男のところへ届ける」
俺は手を挙げた。
「海斗博士何かね?」
「八号から十号まではどうする?」
「七号の様子を確認してからじゃ、八号から十号は延期する」
「わかった、その方がいいだろう賛成だ」
「次のページに行く、新しい役員候補をスカウトした、経歴は書いてある通りだ腕のいい科学者だ、まずは準役員として様子を見るがいいかね?」
全員がいいと言った。
「うむ決定だ、次のページからは大した事はない、玲奈を六号から新型アンドロイドの一号にする、七号は二号になるそれだけじゃ、玲奈もそれでいいかね?」
「私は何でもいいです」
「わかった、新型二号の名前は千恵と仮の名前を付けたが、玲奈に決定権を与える、何かあるかね?」
「千恵でいいと思います」
「わかった、今後海斗博士をちゃんと真田博士に徹底しようと思ってるが海斗博士はどうかね?」
「どっちでも呼びやすい方にしてくれ」
「わかった、資料などには真田博士と書く」
「好きにしてくれ」
「わかった会議は以上だ、久しぶりにまともな会議になった、これで解散にする」
全員立ち上がり部屋を出た、俺の研究室に戻る。
「海斗凄いじゃない、あなたの作ったプログラムで動く新型アンドロイドよ」
「あまり実感が湧かない」
「とにかく凄い事よ」
「それより腹が減った」
「じゃあ食堂に行きましょう」
食堂に行きバニラ味と水を頼んだ、席に座り飲み始める、周りから村田博士がまた海斗博士の愛人に戻ったとヒソヒソ聞こえる。
「理恵、お前の事で何か言われてるぞ」
「放っておけばいいわ、私は気にならないし変なのが寄って来なくていいわ」
「俺がムカつく、早くここを出よう」
三人で研究室に戻った、じいさんから全所員にメールが送られていた。
『今後海斗博士の事は、真田博士と呼ぶように、後村田博士の陰口を言えば処罰する』
「理恵、メールを見たか?」
「見たわ、別にいいのに」
「俺は新型二号のオペを見に行く」
「私も行くわ」
「ご主人様私も行く」
「じゃあ少し見に行こう」
三人でオペ室に行った、じいさんと沼田博士はもう来ていた。
「三人で見学かね?」
「ああ少し見させて貰う」
「新型二号は大したオペではない、すぐに終わるぞ」
新型二号が運ばれて来た、綺麗な顔と体をしている、じいさんが新型二号の首を持ち上げた、何をするのか回り込んで見た、後頭部にチップの差込口があり、玲奈チップを差し込むと差込口が閉じた。
「どうだね? 簡単じゃろう」
「見に来るまでもなかったな」
「後は明日届けたら目を覚ます」
「そうかわかった、邪魔したな」
「海斗博士、玲奈チップは君の名前で特許を取るつもりだ」
「それは任せる」
三人で研究室に戻った。
「ご主人様、私が新型一号でいいの?」
「お前はそれだけ進化したからな」
「やっぱり私は天才だわ」
「海斗今夜はお祝いに、私の奢りで焼き肉を食べに行きましょう?」
「ありがとう、ご馳走になるよ」
突然大きな警報音が鳴り響いた。
『窃盗です、金庫が破られました』
「どういう事だ?」
「所長室に強盗が入ったようね」
「見に行こう」
所長室の前に警備隊が集まっている、所長室はシャッターが下りていた、じいさんと沼田博士もやって来た。
「セキュリティが金庫だけだと思った奴が、何かを盗んだようじゃな、警備隊シャッターを開けるから取り押さえろ」
「「はい」」
シャッターが開くと、中で野田が震えていた、手には小さな何かを持っている、警備隊がすぐに取り押さえた。
「待ってくれ、ほんの出来心だった、許してくれ」
俺は野田の手から盗んだ物を取り返した、玲奈チップだった、じいさんに渡す。
「何を企んでいたのかは知らんが、処分しなくてはいけなくなった、連れて来い」
俺達も付いて行った、野田はオペ室の手術台に乗せられ拘束された。
「待ってくれ何をする気だ、警察に引き渡さないのか?」
「そんなに甘い処分だと思っていたのか? お前の改造した肉体と得た知識を返して貰うわい、つまり廃人になるという事じゃ」
野田は泣きながら必死に謝っている。
「斎藤博士、例の注射を持ってきなさい」
「はい」
斎藤が注射を持ってきた。
「お願いだ許してくれ、そそのかされただけなんだ」
「言い訳は廃人になってから言えばよい」
じいさんが注射を打った、野田は白目を剥き絶叫した、体の筋肉がみるみる萎んでいき、骨と皮だけになった、目は虚ろでよだれを垂らしている。
「どこかに捨ててきなさい」
所員数名が野田を運んで行った。
「野田は注射で廃人になったのか?」
「そうじゃ、もう元には戻らん、どこかで野垂れ死にするじゃろう」
「そうか、野田がどうなろうと俺には興味ないが、玲奈チップを盗もうとしたことは許せない」
「君のプログラムは無事回収した、大丈夫じゃ安心したまえ」
「わかった、帰らせて貰う」
玲奈と理恵を連れて研究室に戻った。
「嫌な物を見たから先に帰る、玲奈行くぞ」
「はい」
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