其の四十九・我慢出来ない

 数日が過ぎた、理恵と一緒にすき焼きを食ってからは、よく一緒に晩飯を食うことが増えた、理恵から来る事もあるが玲奈が誘う事も多い。


「ご主人様、今日は三人で何を食べる?」

「今日も誘うのか?」

「一緒に食べたいもん、いいでしょ?」

「俺はいいが、理恵の都合も考えろよ」

「わかってる」

「だったらいい」

「じゃあ誘っておくね」


 どうやら電話で誘ってるみたいだ、夕方に理恵が来た。


「理恵、玲奈がわがまま言ってすまんな」

「こっちこそ、しょっちゅう来てごめんね、で玲奈ちゃん今日は何を作るの?」

「ハンバーグをたくさん作りたいの」

「いいわよ」


 二人が料理を始める、二人が楽しそうだから別にかまわない、一流の料理人の情報がインプットされてる玲奈の方が上手いが、理恵もかなりレパトリーが広い。


 二人のハンバーグを何個か食べると、腹がパンパンになった、俺達は改造された体だから大丈夫だが、普通ならデブになってもおかしくない程食っている。


 食後に玲奈が次の食事を考えだしたので、俺と理恵は満腹の時に考えないでくれ、と玲奈を止めた、片付けが終わると、理恵はおやすみといい帰った。


 俺は少し考え理恵に電話をした。


『どうしたの?』

『大丈夫か?』

『何が?』

『三人で楽しく食事をして、家に帰って急に一人になると辛くないか?』

『大丈夫よ、楽しかった余韻に浸ってるわ』

『それならいい』

『心配してくれてたの?』

『まあな』

『ありがとう、でも本当に大丈夫よ』

『わかった、おやすみ』


 電話を切った、心配しすぎのようだ。


 翌日退屈な月曜だ、食事が終わると顔を洗い、玲奈を着替えさせ、俺も着替えて白衣を着る。


『ポルポル仕事だ』

『はい、研究所ですね』

『そうだ、今から下りる』

『了解しました』


 一階に下りて車に乗り込む。


「ポルポル頼む」

「はい」

「理恵はもう出たのか」

「はい先程出発しました」

「ねえポルポル、そろそろ洗車する?」

「暇な時にお願いします」

「わかった」

「ご主人様、ビーちゃんも洗車していい?」

「理恵に聞いてからにしろ」

「うん」


 研究所に着いた、ちょうどビーちゃんが駐車場向かっていた。


 車を降りて部屋に向かう、理恵もいた。


「よう」

「おはよう」

「理恵さん、ビーちゃんの洗車していい?」

「洗車機で洗うからいいわ」

「洗車機なんてダメよ、愛がないわ」

「だって面倒だもの」

「だからポルポルと一緒に洗うの」

「わかったわお願いするわ、簡単でいいわ」

「じゃあご主人様、今から洗車する」

「ここでするのか?」

「うん」

「別にいいぞ」

「ビーちゃんはどこに連れて行けばいい?」

「私に任せて」


 玲奈が出て行った。


「ビーちゃん私の命令しか聞かないのに」

「様子を見に行くか?」

「そうね」


 二人でこっそり駐車場を覗いた。


「ポルポルホースのあるとこに移動して」

「わかりました」

「ビーちゃんもよ」

「理恵に聞いてからです」

「許可は取ってるわ、いいから移動して」

「はいお願いします」


 二台共移動した。


「海斗、信じられないわ」

「俺も驚いた、まあ任せておこう」

「わかったわ」


 部屋に戻った、理恵が本を読み始めた、俺もスマホの画面を頭の中で大きくし、電子書籍を探し数冊買った。


「海斗、何かしてるの?」

「電子書籍を頭の中で読んでる」

「そう、ならいいわ」


 オペに関する電子書籍を見ている、知ってる事ばかりだが、一応最後まで読んだ、玲奈はまだ帰って来ない、次の電子書籍を読み始めた、理恵がコーヒーを入れてくれた。


「ありがとう」

「玲奈ちゃん遅くない?」

「遅いが大丈夫だろう」

「まあいいわ」


 二冊目を読み終えたとこで、玲奈が帰って来た。


「二台共ワックスもかけてきたわ」

「玲奈ちゃんそこまでしなくていいのに」

「洗車もワックスも好きだから」

「ありがとう、今度食材でお礼するわ」

「お礼なんて別にいいわ」

「甘いコーヒーを入れてあげるわ」

「うん」

「ビーちゃんをどうやって説得したの?」

「ポルポルにも手伝って貰ったわ」

「凄いわね」

「簡単よ、お腹が空いたわ」

「三人で食堂に行きましょう」

「うん、ご主人様も行きましょう」

「わかった、食事が終わったら帰るぞ」

「はーい」


 食事を済ませると帰る準備をした。


「海斗待って、私も帰るわ」

「わかった」


 三人で外に出ると二台共待機していた。


「ビーちゃん、玲奈ちゃんにちゃんとお礼は言ったの?」

「はい、ピカピカにして貰ったので」

「これからは玲奈ちゃんの言うことも聞きなさい」

「わかりました」

「玲奈ちゃんありがとう、ビーちゃんまでピカピカだわ」

「私の趣味よ」

「玲奈、これからは車はお前に任せる」

「うん任せて」


車に乗り込む、二台が発車する。


 三十分でマンションに着いた。


「到着しました」


 車から降りると、玲奈が命令する。


「ポルポルもビーちゃんも駐車場に戻って」

「「了解しました」」

「玲奈ちゃん凄いわね」

「でしょう?」

「理恵、俺の参考になる本は持ってるか?」

「参考になるかはわからないけど、本はたくさんあるわよ」

「見に行ってもいいか?」

「いいわよ」


 帰りに直接寄った、玲奈は先に帰った、本がたくさんある、気になった本をめくっていく、何冊か読みたい本があった、頭の中にメモをする。


「ありがとう、また見に来る。」

「持って帰らないの?」

「電子書籍で買う、大きい本を持って読むのが苦手なんだ」

「そう」


 玄関で靴を履くと、後ろから抱き締められた、久しぶりだ。


「ごめんなさい、我慢出来なかったわ」

「これくらいならかまわん」

「ありがとう」


 部屋に帰った。


「ご主人様本は?」

「気になった本が数冊あったから、電子書籍で買う」

「私は紙媒体の方が好きだわ」

「俺は拘りがない」

「理恵さんの家、本がいっぱいだったでしょう?」

「ああ、お前は知ってたのか?」

「うん、入った事あるもん」

「そうか、俺もまた本を見せて貰う」

「ご主人様、回転寿司が食べたい」

「回転寿司はそんなに美味くないぞ」

「でも行ったことないわ」

「じゃあ連れて行ってやろう」

「じゃあ理恵さんも一緒に行きましょう?」

「回転寿司は嫌がるんじゃないか? 聞いて来い」

「うん」


 玲奈が出て行った、電話すればいいのに。


 玲奈はすぐに戻ってきた。


「ご主人様一緒に行ってくれるって」

「そうか、じゃあ夕方に行こう」

「うん、楽しみ」

「安いから好きなだけ食え」

「ありがとう」

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