其の四十二・卒業式

『八時です、スリープモード解除』


 目を開けると、俺の腕にしがみついて寝ていた玲奈も目を開けた。


「ご主人様おはよ」

「おはよう、体に異変はあるか?」

「ないわ、ランクSの筋肉と皮膚だもの」

「じゃあ最後の検査だ」


 頭の先から足の指先まで見て回る、異変は全くない、もう心配はいらない。


「完璧だ、これが最後の検査だ」

「ありがとう、検査モードのご主人様はどこを見ても興奮しないのね」

「検査モードの時は集中してるし割り切ってるからな」

「じゃあ朝ご飯の前に服を着させて」


 下着を履かせて服を選び着せてやる。


「下着を履いたって事は出かけるの?」

「研究所に行く」

「わかった、朝ご飯用意するね」


 完全食と水を飲んで終了、顔を洗い白衣を着る。


『ポルポル、出かける準備をしろ』

『了解しました』


 下に降りて車に乗り込む。


「ポルポル、今日も研究所へ頼む」

「了解しました」

「久しぶりにオープンカーにしてくれ」

「了解しました」


 冷たい風を受けながら景色を見て回る、だんだんと山道になっていく、まだ冬の終わりなので緑は少ない、研究所に着いた。


「駐車場で休んでてくれ」

「了解しました」

「そんなに敬語を使わなくてもいいぞ」

「はい」


 俺の部屋に向かい、入るが理恵はいない、荷物はあるから工場だろう、工場に向かう二階の一角に開発メンバーと理恵がいた。


「ダーリン来てくれたの?」

「ああ完成品を味見に来た」

「もう少し待ってて」


 全員が挨拶してくる俺も返事を返し、様子を聞いて回る、もうすぐ出来るそうだ、小一時間で出来た、と二つのチームが言った、全員が味見をしてから俺の分を作ってくれた。


 バナナ味の匂いを嗅ぎ飲んでみる、甘みが抑えられ、理想の味に仕上がっていた。


「海斗博士、どうですか?」

「バッチリだ、これで完成だ」


 四人がハイタッチをした。


「海斗博士、こちらもお願いします」

「ああいただく」


 香りが抑えられ飲みやすいし、味も完璧にしあがってる。


「こっちも理想通りだ、これで完成だ」


 四人がガッツポーズをした。


「みんなよくやってくれた感謝する、流石エリート集団だ」

「ダーリンこれで販売してもいいのね?」

「ああ量産して販売してくれ」

「みんな量産の準備をしてどんどん作って、私は宣伝活動するわ」

「「はい」」


 製造されたのを、また大きな袋に詰め込みどこかに運ばれて行った、多分食堂だろう、一人を捕まえて、二つ共少し分けて貰った、少しと言っても二袋分くらいある、みんなに後は頼むと言って部屋に戻る、玲奈が付いて来てなかったが、部屋で漫画を読んでいた、理恵はどこかに電話している。


「ご主人様、完成おめでとう」

「ありがとう、完成品を分けて貰ったから帰ったら飲もう」

「うん」


 理恵は今度はメールを打っている。


「理恵、さっきから何をしてるんだ?」

「宣伝よ、扱ってるところで宣伝して貰うのよ」

「お前に丸投げして悪かったな」

「ダーリンのためなら何でもするって言ったでしょう」

「わかったありがとう」

「もうダーリンの出番はないから、帰ってもいいわよ、私もこれが終わったら帰るわ」

「わかった、もう少し頑張ってくれ」

「うん、頑張るわ」

「玲奈帰るぞ」

「はい」

「ダーリン卒業式だけど、何時に迎えに行けばいい」

「八時前に頼む」

「わかったわ」

「じゃあ頼んだ」


 玲奈と部屋を出た。


『ポルポル車を回してくれ』

『わかりました』


 表で待機していたポルポルに乗り込む。


「マンションに戻れ、ついでにコンビニに寄ってくれ」

「了解しました」

「ねえ何でエンジン音がしないの?」

「電気自動車だからです、音は出そうと思えば出せます」

「また今度聞かせて」

「わかりました、海斗どこのコンビニでもいいですか?」

「いいぞ」


 コンビニに着いた、俺はアイスを何個か買った、玲奈は散髪バサミと梳きバサミのセットを買った、車に戻りマンションに帰った。


「マンションに到着しました」

「ありがとう、駐車場に戻ってくれ」

「わかりました」

「玲奈散髪バサミを買ってどうするんだ?」

「明日卒業式だから散髪するの、ご主人様もよ」


 玲奈は器用に自分の髪を切ると、俺の散髪もしてくれた。


 そして翌日卒業式の日になった、時間通りに理恵が来てダンボールを詰め込んだ、人の少ない間に、と思ったがみんな来ていた、三人でダンボールを俺の机の脇に置いたみんなが集まってくる。


「海斗のお姉さんですか? 美人ですね」

「ありがとう、お姉さんじゃなく愛人よ」

「海斗、玲奈ちゃんがいるのに愛人まで作ったのか?」

「違う会社のパートナーだ、こいつはただの変態だ」

「ダーリン愛人って認めなさいよ」

「学校で言うな」

「で、海斗そのダンボールは何だ?」

「みんな聞いてくれ、会社の余り物だがみんなにプレゼントするから、卒業式が終わったら取りに来てくれ」

「「ありがとう」」

「理恵、もうすぐ担任が来るから帰ってくれていいぞ」

「私も卒業式出たい」

「無理だ」


 担任が入ってきた、マズい。


「あら? あなたは誰ですか?」

「私は海斗の愛――」


 口を塞いだ。


「会社のパートナーです、すぐに追い払います」

「それなら卒業式見て貰ったらどう?」

「見まーす」

「お前は帰れ」

「はい静かにして、今から卒業式を初めます体育館に集まってちょうだい」


 みんながぞろぞろ出ていく。


「理恵邪魔するなよ、帰ってくれ」

「酷いわ」

「俺はもう行く」


 玲奈と体育館に向かった。


 すぐに卒業式が始まり、俺も卒業証書を貰った、理恵が保護者に混ざって手を振っている、無視した。

 校長の話を聞いて終わりだった、教室に戻り担任に寄せ書きを渡し、終わった。


 みんなが集まって来る、好きなのを持って帰ってくれと言うと、全員貰ってくれた、最後の奴には残りを全部渡した、これでさっぱりした。


「ダーリン、卒業おめでとう」

「まだいたのか?」

「今日は特に酷いわ」

「愛人とか言うからだ」

「だって事実だし」

「怒るぞ」

「ごめんなさい、家まで送るわ」


空のダンボールを持って校門を抜けた、これで晴れて卒業だ、気分がよかった。


 車で送って貰い、一応感謝する、と言って理恵を帰らせた。


「ご主人様、おめでとう」

「ありがとう、これで学生じゃなくなった」

「嬉しいの?」

「嬉しい、一応高卒になるしな」

「私にはあまりわからない」

「わからなくてもいい、とりあえずおめでたい事なんだ」

「うん、じゃあお祝いする?」

「お祝いは別の日でもいいのんびりしよう」

「はーい」

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