其の四十一・アンドロイドのプログラム

 玲奈のオペの次の日も体を診察したが異常はなかった、脳も正常だ。


「私、ご主人様に全身オペして貰ったね」

「そうだな」

「ご主人様の技術が凄いのは、体を動かしただけでわかるわ」

「わかるのか?」

「うん動きやすいもの、でも胸の形が変わった気がする」

「俺の好みの形に変えた」

「ご主人様ポルポルのとこに行っていい?」

「それくらいならいいが、二日程安静にしておけよ」

「うん」

「俺も行く」

「いいわよ」


 玲奈はチラシを一枚持って、ポルポルのところへ行った、何をするのかわからないが、まあいいだろう。


「ポルポル、このチラシ見える?」

「はい、見えます」

「どのワックスがいいの?」

「上から二列目の、向かって右から二番目がいいです」

「これ?」

「はいそうです」

「今度買ってあげるね」

「ありがとうございます」

「ご主人様、部屋に戻ろう」

「もういいのか?」

「うん」


 玲奈には毎月十万円まで、自分の好きな物を自由に買ってもいい、と言ってあるが二万円を超えた事がない。


「ご主人様、このワックス三千円もするけど安いの?」

「ワックスにしては安いほうだ、一缶あればかなりの回数使えるぞ」

「じゃあもったいなくないのね、今度買いに行くから一緒に来て?」

「いいぞ」

「あっそうだ、ご主人様のお給料また増えたよ」

「いくらになってる?」

「四十五万円だって」

「そんなにいらないんだけどなあ」

「でもちゃんとお仕事してるから、認められたんじゃないの? 役員だし」

「まあそうだと思うがな」

「二人で生活するには十分だね」

「ああ十分過ぎる」

「今回のお仕事が成功したらまた増える?」

「わからんがもういい」

「お給料なくても、貯金だけで生活できるもんね」

「そうだ」

「ご主人様、前の完全食やプロテインとスーパー完全食も余って来てるけどどうする?」

「もう誰かにわけてやろう」

「じゃあもうすぐ卒業式だから、クラスの子にあげよう?」

「そうだな、仕分けしておいてくれ」

「わかった、どうやって運ぶの?」

「ポルポルにこっそり運ばせる」

「いいわね、部屋が片付くわ」


 じいさんから連絡が入った。


『はい』

『海斗博士、完全食の違う味を作ってるそうじゃな』

『ああ消費者からの要望で、ココア味とバナナ味を開発中なんだ』

『また期待しておくぞ』

『任せてくれ、それと金曜はやっと卒業式だから、何があっても休ませて貰う』

『わかったこれで立派な社会人じゃな』

『そういう事だ』

『玲奈のプログラムは書き換えたのかね?』

『ああもう書き換えた』

『何をいじったのかね?』

『睡眠時間の四時間固定を解除して、俺と同じプログラムに変更しただけだ、六時間睡眠が一番いいらしい、参考になればいいが』

『参考になった、次からはそういうプログラムを組もう、君はアンドロイドのプログラムに興味はあるかね?』

『あるよ、一度全部見てみたい』

『では特別に君にだけプログラムを公開しよう、膨大なデータじゃが、君に見て欲しかったんじゃ、気になるところを指摘してくれないか? もちろん極秘で頼む』

『わかった、興味があるから時間がかかっても読んでみたい』

『では今の仕事が片付いて、暇になったら言ってくれ、理恵君にも極秘で頼む』

『わかった誰にも喋らない』

『では待っておくぞ』

『わかった』


 電話が切れた、こんなチャンスは滅多にない事だ、ありがたい。


 今度は理恵からかかってきた。


『どうした?』

『サンプルが仕上がりそうなの』

『早いな』

『味を変えるだけだから』

『で、どうすればいい?』

『また帰りに持っていくわ』

『わかった、待ってる』

『じゃあまた後で』


 電話が切れた。


 まだ昼か、今日は長い一日になりそうだ。


「ご主人様、何かいい事あったの?」

「わかるか?」

「表情でわかるわ」

「じいさんが今度極秘でアンドロイドのプログラムを全部見せてくれるらしい、これは理恵にも秘密だから喋るなよ」

「わかった、聞いてない事にしておくね」

「ありがとう、それともう完全食のサンプルが出来るらしい、理恵が帰りに持って来る」

「私も飲んでいい?」

「ああいいぞ」

「じゃあ夕方までお昼寝する?」

「そうだな、そうしよう」

「じゃあどうぞ」


 膝枕をして貰った。


『スリープモード開始、十七時起床』


 …………


『十七時です、スリープモード解除』


 目を開けた、笑顔の玲奈が見ている。


「ご主人様おはよう」

「おはよう、晩飯は作らなくていい」

「うん、サンプルが届くもんね」


 体を起こした、外は雨模様だ、玲奈に水だけ頼んだ、玲奈は余った完全食やプロテインを片付けているようだ。


「ご主人様、ダンボールが四つ分余った」

「四つなら何とかなりそうだな、終わったのなら検査するから裸になってくれ」

「はい」


 玲奈の頭皮から順に皮膚をチェックする、もう完全に大丈夫だろう。


 チャイムが鳴った、俺が応答し理恵をリビングに通す。


「ちょ、玲奈ちゃん何で裸なの?」

「検査してたんだ、玲奈服を着ていいぞ」

「着させて」


 俺は服を着させてやった。


「本当にダーリンが着させていたのね」

「ああもう日課だ」

「それよりサンプルよ、バナナ味から試してみて」


 四つのサンプルを順に飲む、玲奈にも飲ませてやる、もう俺の理想の味に近い。


「どうだった?」

「バナナ味は二番が俺の理想に近い、このままでもいいが、甘みを少し減らして欲しい」

「私も二番が美味しい」

「わかったわほぼ完成ね、次はココア味よ」


 これもほぼ完璧だ。


「これは三番がほぼ理想に近いが、香りだけもう少し抑えてくれないか?」

「私も同じ意見」

「これもほぼ完成ね、わかったわ二つ共明日完成させてみせるわ、みんなが熱心だからすぐに終わるわ」

「じゃあ明日顔を出そうか?」

「どっちでもいいわよ、ところでこのダンボールはゴミ?」

「スーパー完全食の前の完全食とプロテインが余ったから、卒業式でクラスの奴らに配ってやろうと思ってな」

「卒業式はいつ?」

「今度の金曜だ」

「じゃあ私が運んであげるわ」

「いいのか」

「休みだからいいわよ」

「じゃあお願いするよ」

「任せて、今日は帰るわ」

「また荷物を運んでやろう」

「お願いするわ」


 エレベーターに乗ると、またキスをされた俺も受け入れた一階に着くと、荷物を下ろした。


「四ヶ月ぶりのキスありがとう」

「俺もありがとう」

「ここでいいわ、じゃあまたね」

「ああまたな」

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