其の四十・玲奈の病気

『八時です、スリープモード解除』


 目を開けると泣きそうな玲奈が見ていた。


「どうした?」

「ご主人様、体を診察して」


 慌てて体を見ると、腕と足の皮膚が炎症している、痒くて掻きむしったのか、跡も残っている。


「いつからだ?」

「一時間前に、異常を感知したってスリープモードを解除されたの、そしたら腕と足がこんなになってて痒いの」

「思い当たる病気はいくつかあるが、お前が病気になるはずがない、昨日普段と違う物に触れてないか?」

「特にないわ」

「病気じゃないとすれば、脳に何かあったかストレスが原因だと思う、お前の皮膚はランクAで割といいものだが、このままにはしておけない、検査してオペもするかもしれないがいいか?」

「うん、ご主人様に任せる」

「よし、まだ我慢出来るか?」

「うん、痛くはないから大丈夫」


 玲奈を着替えさせ、俺も白衣に着替えると車を待機させた。


「ポルポル、急いで研究所に行け」

「了解しました」


 車が急発進する、その間にも皮膚炎の範囲が広がってきている。


「到着しました」

「駐車場で休んでくれ」

「了解しました」


 俺の部屋に入る、理恵が驚いている。


「そんなに慌ててどうしたの?」

「緊急事態だ、玲奈裸になれ」

「はい」

「玲奈ちゃんその腕と足はどうしたの?」

「わかんない」

「俺が調べた結果、ストレス性皮膚炎だ皮膚を張り替えて様子を見る」

「手伝うわ」

「理恵さんこれお土産」

「ありがとう、それより急ぎましょう」


 検査室でまず検査をした、やはり病気ではない、オペ室に行く。


『アシスト、俺の診断は合ってるか?』

『合ってます、筋肉にも広がってる可能性があります』

『わかった』


「玲奈、理恵、筋肉も炎症している可能性がある、とりあえず皮膚をめくる」

「「はい」」


 手術台に寝かせた玲奈を眠らせる、皮膚だけを溶かす液体をかける、やはり筋肉も炎症を起こしている。

「どうするの?」


「筋肉も皮膚も取り替える、両方ランクSのを用意してくれ」

「わかったわ、でも最高級のを使っても、ストレス性なら再発するわよ」

「俺が脳をいじってストレスを取り去る」

「わかった」

「三十分で終わらせる」

「三十分なんて無理よ一時間はかかるわ」

「大丈夫だ、俺なら出来る」


 筋肉を貼り替え始める、理恵が早いとつぶやいた、筋肉は全て貼り替えた、特殊な培養液の水槽に、皮膚の組織を入れて玲奈を入れる、皮膚が再生し始める、玲奈を取り出しオペ服を脱ぐ、頭を両手で挟みストレスを完全に取り除く、玲奈の体を強制スキャンさせるが、もう異常はなかった。玲奈を起こす。


「ご主人様終わったの?」

「ああ筋肉も炎症していたから筋肉も皮膚もランクSのに取り替えた、ストレスも除去したからもう大丈夫だ」

「ありがとう、理恵さんもありがとう」

「玲奈ちゃんのご主人様は凄いわ、感謝してあげて」

「うん」


 ドアの開く音がした。


「勝手に使用しているのは誰だ?」

「俺だよ沼田博士」

「君か、だったらかまわない続けてくれ」

「もう終わった」

「そうか」


 ドアが閉まった。


「とりあえず一安心だ、部屋に戻ろう」


 三人で部屋に戻る、理恵が内線をかけた。


「オペ室を使ったから掃除を頼むわ」

「どこにかけたんだ?」

「受付けよ、それにしても本当に三十分で終わるとは流石ね」

「俺の普通のスピードだ」

「お土産をいただくわ、生八ツ橋ね」

「ベタですまんな」

「好きだからいいわよ」


『アシスト、ストレスの原因は何だ?』

『初めての長旅でストレスを感じたみたい』

『じゃあもう長旅は無理なのか?』

『大丈夫、もう同じ事は起きないわ』

『わかった』


「玲奈、ちょっとじっとしておけ」

「うん」


 頭を両手で挟み、ストレスの免疫力を高めた、念には念を、これで完璧だ。


「ダーリンまた何かしたの?」

「ストレスへの免疫力を高めた」

「ご主人様、もう大丈夫?」

「ああ心配いらない、初めての長距離ドライブでストレスが溜まって炎症したんだ、次からはもう大丈夫だから安心しておけ」

「じゃあもっと遠くに行っても平気?」

「平気だ」

「ありがとう」

「ここでもう少し様子を見てから帰ろう」

「うん、漫画読んでてもいい?」

「ああいいぞ」

「ダーリン、私も尽くしてるのに玲奈ちゃんと私への接し方に温度差があるのは何故?」

「愛の重みが違うからだ」

「ひどーい、酷すぎるわ」


 理恵にメモを渡した、近々家に行く、と。


 理恵が急に元気になった。


「ダーリン、完全食だけど消費者から他の味も出して欲しいって、たくさん要望があったけどどうする?」

「要望があるなら答えないとダメだな、何味が人気あるんだ?」

「うちはバニラ味だけしか出してないけど、他のメーカーはココア味とバナナ味も人気あるわよ、特に今はココア味が主流なの」

「じゃあ前回のメンバーを集めて、その二種類の味を、他社に負けない味で開発してくれないか?」

「そう言うと思ってもう声はかけてあるわ」

「そうか、なら美味しくて飲み飽きない味にこだわってくれ」

「わかったわ、基本は出来てるから、味だけの問題だしすぐに終わるわ」

「俺もたまに顔を出すよ」

「気が向いたらでいいわよ、サンプルはまた持っていくから」

「わかった、頼む」

「じゃあ早速動くわ」

「俺も行こうか?」

「玲奈ちゃんを見てあげてて」


 理恵が出て行った。


「ご主人様、またお仕事が出来たね」

「ああ嬉しい事だ」

「私はストロベリー味が飲みたいわ」

「それは人気がないみたいだ」

「ざーんねん、理恵さんって変人で何考えてるかわからないけどいい人だってわかった」

「そうか? ただの変人だろう」

「でも私のために、毎回凄くよくしてくれるもん、根はいい人だと思う」

「まあそうだな、今も俺のために走り回ってくれてるしな」

「うん、私の体はもう大丈夫だから、ご主人様の用事が終わったら帰ろう?」

「わかった、もう少し待っててくれ」

「うん、漫画がたくさんあるから平気」


 すぐに理恵が帰って来た。


「チームを二つに分けて、もう開発をさせ始めたわ」

「ありがとう、仕事が早いな」

「私は仕事は早いって前に言ったでしょう」

「言ってたな」

「まあ任せといて」

「わかった、今日は帰るよ」

「サンプルが出来たら持っていくわ」

「すまんな」


 部屋を出て車に乗った。


「ポルポル、マンションに戻ってくれ」

「了解しました、また急ぎますか?」

「いや普通でいい」

「はい」

「ポルポル帰ったら洗車してあげようか?」

「玲奈はお疲れのようなので、また今度お願いします」

「大丈夫だよ」

「無理はダメです、それに明日は雨の予報なので洗車が無駄になります」

「わかったわ」

「その代わり今度ワックスをかけて下さい」

「いいわよポルポルのおめかしね」

「はい、お願いします」

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