其の三十九・京都旅行

 玲奈の検査から帰ると、すぐに玲奈の睡眠のプログラムを書き換えてやった。


「すぐに試してもいい?」

「いいぞ、一時間程仮眠してみろ」

「うん、ご主人様膝枕して」

「いいぞ」


 玲奈は横になるとすぐに眠ってしまった、することがないので、チップのデータの整理をして過ごした、写真や動画はスマホの端末とノートパソコンに同期させた。


 そろそろ一時間だ玲奈の額に手を当てた、ぐっすり眠っている、寝顔を写真に収めた、玲奈が目を開けた、笑顔で体を起こす。


「ご主人様、出来たわ凄く便利」

「だろ?」

「これで好きな時に好きなだけ寝れるわ」


 玲奈が上機嫌でそう言った。


 じいさんから連絡が入った。


『はい』

『あの男には説教してやった』

『説教?』

『ああ、野田はクソ真面目な男で融通がきかないんじゃ、わしもそこが気に入らないから今回は説教して、君に許して貰えなければ、研究所の記憶を消して解雇すると言ってやった、今野田は君のマンションに向かってる』

『家に来られても困るぞ』

『まあ少し相手をしてやってくれ』


 電話が切れた。


「玲奈、さっきの男が来るそうだ」

「私、野田さん嫌い」

「じいさんも気に食わないらしい、侘びに来るみたいだから、話だけでも聞いてやろう」


 一時間程で野田がやって来た、仕方ないのでリビングに通してやった、野田が土下座に近い姿で謝って来た。


「所長にも怒られましたが、海斗博士の実力は所長の何倍も凄いと聞きました、そんな方にあんな失礼な事を言ってしまい、すいませんでした許して下さい」

「野田さん顔を上げてくれ」

「野田でいいです」

「顔の骨はもう治ったのか?」

「はい、私も基本改造は受けてますから」

「そうか、あんたも知ってると思うが、うちの研究所は年功序列じゃなく、実力が物を言う、実力だけなら俺が一番だ」

「はい、聞きました」

「俺が許さないと解雇なんだろ?」

「そうです」

「今回は許すがもう楯突くな」

「わかりました、ありがとうございます」

「次はないからな」

「はい、これはほんのお詫びです」


 と日本酒を渡してきた。


「俺はまだ酒が飲める年齢じゃないんだが」

「すぐに別のものを用意します」

「いやいい、気持ちだけ貰っておく」

「わかりました、ではこれで失礼します」

「わかった」


 野田が帰った。


「ご主人様、お酒どうする?」

「暫く置いててくれ、誰かにやろう」

「わかった」


 すぐにじいさんに連絡し、今回だけ許した事を伝えた。


「玲奈、明日京都に行くか?」

「うん行くー、お昼も京都で食べる?」

「ああ何か美味い物を食べよう」

「本場の抹茶も飲みたい」

「飲ませてやる」

「八ツ橋と生八ツ橋ってどう違うの?」

「向こうで聞けばいい」

「京都は名産品が多いから迷うわ」

「そうだな、全部は食えないな」

「ご主人様も楽しみにしてる?」

「もちろんだ、お前との初旅行だからな」

「旅行かぁ、次は泊りがけで行きたいわ」

「連れて行ってやる」


 チャイムが鳴った、玲奈が応答する、暫くすると紙袋を持った理恵が入ってきた。


「今帰りか?」

「ダーリンに渡す物があるのを忘れてたの」


 紙袋を渡された、小さいラッピングされた箱がたくさんあった。


「バレンタインのチョコよ、預かってたの」

「そうかありがとう」

「私からはこれ、本命チョコよ」

「一応貰っておく」

「一応って失礼ね」

「中を見るのが怖いからな」

「普通のチョコよ」

「明日は俺達一日家にいないからな」

「どうしたの?」

「京都に旅行だ」

「羨ましい」

「何か土産を買ってやるから」

「わかった、じゃあ私は帰るわ」

「ありがとな」


 晩飯とシャワーを終えると、明日何時に出発するか話し合った、玲奈が早く行きたいと言うので八時に出発することにした。


「私は今夜早く寝て、初めて六時間寝るわ」

「じゃあ起きる時間を同じにしよう」

「うん」


俺達は早々にベッドに入った。


 ……


『七時です、スリープモード解除』


 目を開けて横を見ると、腕にしがみついた玲奈も目を開けた。


「ご主人様おはよう、気分がいいわ」

「よく寝たからな」


 すぐに食事をし顔を洗い、玲奈を着替えさせた、今日はおしゃれな服を選んだ、俺も着替えた。


『ポルポル八時に玄関に来てくれ』

『了解しました』


「ご主人様、運転させて」

「いいぞ、気を付けろよ」


 車に乗り込むと玲奈が話しだした。


「ポルポル、京都に旅行よ高速を走らせてあげるわ」

「ありがとうございます」

「じゃあポルポルのお薦めの神社やお寺に向かって、最短ルートでお願いね」

「了解しました」


 玲奈は単に運転席に座りたかっただけのようだ。


 玲奈はカードを出して、ETCの機械に差し込んだ。


 平日なのでスムーズに車も流れる、高速に乗るとポルポルがスピードを上げた、一時間で京都に着いた。


「ポルポル、高速って楽しいわね」

「はい楽しいです、到着しました」


 広い駐車場に停まった、神社だ。


 歩いて鳥居をくぐり、社殿で賽銭を投げて玲奈に二礼二拍手一礼を教えてやる、玲奈が真面目な顔でお参りを済ませる、四つ神社やお寺を回った。


 昼飯はコインパーキングにポルポルを停めて、歩いて美味そうな店を回った、ついでに土産も理恵にだけ買い、店を見て回る一通り見ると、コインパーキングに戻り車を出させる。


「ご主人様、コインパーキングも初めてだった、便利だね」

「使う機会が増えるから覚えておけよ」

「うん」


 更に何箇所か神社やお寺を回った、玲奈は神社の方が好きみたいだ、十五時になっていた。


「車で回れるお薦めスポットは以上です」

「ご主人様どうする?」

「そろそろいいだろう? 夕方の渋滞に巻き込まれる前に帰ろう」

「そうね買い物もたくさん出来たし、じゃあポルポルマンションに戻って、飛ばしてもいいわよ」

「了解しました」


 のんびりと風景の変わらない高速を眺めていると、高速を降りたようだ、暫く走るとマンションに着いた。


「到着しました」

「ポルポル今日は遠くまでありがとう」

「いえ、エンジンの調子もいいので楽しかったです」

「また今度、泊りがけで旅行するからお願いね」

「わかりました」

「荷物を下ろしたら、駐車場に帰ってね」

「了解しました」


 荷物を持って部屋に戻った。


「疲れてないけど、疲れた感じがするわ」

「わかる俺もだ、完全食と水をくれ」

「はい、私も飲むわ」


 玲奈がすぐに用意したのを一気に飲んだ。


『アシスト、この変な疲れは何だ?』

『乗り物疲れです、慣れてないので疲れただけです、すぐに慣れます』

『わかった』


 玲奈にも説明してやった。


「それだけで疲れたの? 遠出が怖いわ」

「慣れたら大丈夫ってのを信じよう」

「理恵さんへのお土産どうする?」

「明日にしよう」

「じゃあ冷蔵庫に入れておくわ」

「ああ頼む」

「ご主人様晩ご飯はどうする?」

「昼に食べ過ぎたからパス、完全食だけでいい」

「私もそう思ってた」

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