其の三十八・プログラムの書き換え
『七時です、スリープモード解除』
目が覚めた、笑顔の玲奈が見つめている。
「ご主人様おはよう」
「おはよう、お前の睡眠時間は四時間で固定されてるのか?」
「うんそうよ」
「スリープモードの解除の時間はセット出来ないのか?」
「出来ないわ、本当はご主人様みたいに自由に寝起きしたいけど」
「出来るようにしてやろうか?」
「して欲しいけどオペするの?」
「オペはしなくても、俺ならプログラムを簡単に書き換えられる」
「じゃあ書き換えて」
「今日の検査後にしてやる」
「ありがとう凄く楽しみ、ご主人様ってトップレベルの天才なんじゃない?」
「今はそうだろうな、なんせ改造人間だからな、それより起きよう」
完全食と水を飲むと顔を洗い、玲奈の服を選び下着から着替えさせる、今日も可愛く仕上がった、続いて俺が着替え白衣を着る。
『ポルポル車を出しておけ』
『了解しました』
「玲奈行くぞ」
「はーい」
エレベーターで一階に下り、待機していた車に乗る。
「ポルポル研究所に向かえ」
「了解しました、急ぎますか?」
「九時十五分前に着けばいい、覚えておけ」
「了解しました」
「ポルポルお願いね」
「玲奈わかりました」
「ポルポルの目はどこにあるの?」
「ヘッドライトの近くに二つと、運転席と助手席の前後に一つずつあります」
「目が六つもあるの? 凄いね」
「凄くはありません、安全のためです」
暫く外を眺めて過ごした。
「時間通りに到着しました」
「ありがとう、駐車場で休んでくれ」
「了解しました」
玲奈と部屋に入る、理恵はもう来ていた。
「ダーリン早いわね」
「そうか?」
「玲奈ちゃん今日も服装似合ってるわ」
「毎回ご主人様が選んで着せてくれるから」
「ダーリンが着替えさせてるの?」
「ああ下着から選んで着させている」
「羨ましいわ」
「九時過ぎに検査を始めるからな」
「わかってる、所長もそろそろ来るわよ」
ノックがされ、じいさんと沼田博士が入って来た。
「二人はいつもセットで動いてるのか?」
「次期所長だからいろいろ教えてるんじゃ」
「まあ俺には関係ない事だ」
「実力で比べれば君が断然トップじゃがな」
「そうだな否定はしない、検査を始める」
二人がメモの準備をした。
「玲奈、椅子を持って来て座れ」
「はーい、ご主人様服は?」
「そのままでいい」
「じゃあいつでもどーぞ」
一応脳波の機械を作動させる。
「痛みや違和感があればすぐに言えよ」
「うん」
両手で玲奈の頭を挟む、超音波で脳のチップを探して見つけた、静電気を流しチップを調べる、プログラムを読み取る、予想はしていたが、興味深い事実がわかった、手を離した、乱れた髪を直してやる。
「もう終わったのかね?」
「ああもう調べ終えた」
「何かわかったのかね?」
「今から順に説明する、長いがいいか?」
「ああ時間はたっぷりある」
「チップがどうなっているのかだったな?」
「そうじゃ」
「チップを調べた結果、玲奈だけ特別なチップのせいなのかはわからんが、プログラムが変わっている、しかも単に変わっただけではなく、玲奈が無意識のうちに書き換えたり、追加していっている、これは俺から見ても凄い事だ」
「わしは君以上に驚いておる、何故そういう事をするようになったのかね?」
「玲奈に心が宿った結果、人間と同じようにいろいろ学習し、プログラムの書き換えや追加をするようになった、人間の脳と同じことをしている」
「それは玲奈のチップが、特別だからだと思うかね?」
「ああそうに違いないと思っていいだろう」
「これはたまげたわい、理恵君からの報告以外で何か変化はあるかね?」
「玲奈は一人で考え、単独行動もするようになって自分で欲しい物を考え、自分の意志で買うことも覚えた、しかもオヤジギャグを理解し、大爆笑をするようになった、そして俺が一番驚いたのは、玲奈はインプットされていない事をし始めた、自分で作詞作曲をし、オリジナル曲まで作り鼻歌や声を出して歌うようになった、聞いたところ、そんなプログラムはインプットされていないが、自分でプログラムを追加してこういう事をするようになった、これはもう人間と同じだた考えてもいいと思う」
三人はメモを書き終えたようだ。
「いつから進化し始めたのかわかるかね?」
「心を持った直後からだ、初めはゆっくり進化していたが、だんだん進化のスピードは加速していっている、どこまで進化するのかは俺にもわからん」
「ふむ、これは私がオペをして研究しても、一年以上かかることだ、君はそれを五分程でオペもせず解明した」
「俺を誰だと思っている、改造人間だぞ」
「失礼した、これらの事はどれ一つ取っても驚くべき進化じゃ、この事はここにいる四人だけの極秘事項じゃ、また何か進化があれば教えてくれないか?」
「わかった報告する、俺から一ついいか?
「何じゃ?」
「俺が玲奈のプログラムを勝手にいじってもいいか?」
「かまわん、今の君には簡単な事じゃろう」
「わかったそうさせて貰う、俺からはこれで終わりだ」
「わしも今日はもういい、興味深い事案が多すぎる、理恵君からの報告もまとめると、貴重なデータがたくさん取れた」
「今後も玲奈のオペや検査は俺がする、材料は好きなのを勝手に使わせて貰うが、それでもいいか?」
「もちろん許可する」
「俺は今後、他のオペなどにも積極的に参加させて貰う」
「わかった、君のオペは凄いと聞いている」
「ではこれで今日の検査と報告は終了だ」
「わかった、わしの心配事は君が辞めたり、他の研究所に行かないかが気がかりじゃ」
「それは安心してくれ、嫌な経験もしたが、俺はここを気に入ってるから辞めないし、いくら大金を積まれても他所に移る気はない」
「そうか安心した、玲奈も今日は検査を受けてくれてありがとう」
「ご主人様が私の担当なら、いつでも検査は受けるわ」
「玲奈の担当は海斗博士だけじゃ」
「わかったわ」
「じゃあ我々は部屋に戻るが最後に一つ聞きたいことがある」
「何だ?」
「玲奈が君を未だにご主人様と呼ぶのは、プログラムされてるからかね?」
「俺がそう呼ばしているだけだ」
「わかった」
二人が出て行った。
「ダーリンこれじゃ玲奈は人間そのものね」
「ああ、まだまだ進化するぞ」
「理恵さんも度肝を抜かれた?」
「ええ抜かれたわ、私も今後あなたを人間として接する事にするわ」
「えへへ、ありがとう」
「ダーリンもう帰るの?」
「食事をしてから帰る、一食分浮くしな」
「太っ腹なのかケチなのかわからないわね」
「玲奈にも同じことを言われたが、節約家なだけでケチではない」
「私も一緒にいい?」
「ああ行こう」
食堂でじいさんを含めた役員たちと一緒になった。
「じいさん今日は会議はないのか?」
「今週はない」
「そうか、俺はチンタラした会議は苦手だ」
「海斗博士、所長に向かってその言葉使いは失礼だ、ただしたまえ」
「確か野田さんだったな、俺は俺のやり方でやらせて貰うし許可も取っている、気に食わなければお前が辞めろ」
「貴様何様のつもりだ」
野田が立ち上がり叫んだ、俺も立ち上がり野田の顔を鷲掴みにし持ち上げる、締め付けると骨にひびが入る音がした、食堂の全員が静まり返った、注目されている。
「海斗博士そこまでじゃ死んでしまうぞ、この男にはわしから説明しておく」
「わかった」
手を離すと野田が気絶して崩れ落ちた。
「注目の的になったから帰らせて貰う」
食堂から出てマンションに帰った。
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