其の三十一・発熱

『六時間経過、スリープモード解除』


 玲奈も理恵も性欲が強い、俺も改造で強くなった、浮気をしてしまうのも時間の問題に違いない、目を覚ましてすぐにそう思った。


「ご主人様、おはよう」

「俺が浮気しても心までは浮気しない」

「ご主人様、寝ぼけてるの?」

「ん? すまんおはよう」


 服を着て寝室から出る。


「ご主人様服を選んで」

「今日はこれを着てくれ」

「小さい水着、どう?」


 通販でマイクロビキニを買ったが、思ってた程エロくない。


「まあまあだな」

「こんな水着で海には行けないわ」

「そうだな」


 完全食を飲んで水を大量に飲む。


「さっき寝ぼけて浮気って言ってたけど、浮気したの?」

「してないぞ」

「浮気したら一週間口も聞かないから」

「それは勘弁してくれ」

「でも男は浮気する生き物だって、所長も博士も言ってた」

「まあ大抵の奴はするな」

「やだぁ浮気しないでぇ」

「しないしない、ちょっと本屋に行く」

「私は掃除と洗濯をしておくわ」


 意外な返事が返ってきた、財布だけ持って外に出る、自然と西に向かって歩いた、エメラルドマンション、一階の郵便受けで理恵の部屋を探し、部屋の前に立つ、チャイムを鳴らした、いるはずないか帰ろう。


「はーい、誰?」

「俺だ」


 急にドアが開いた、部屋に上がる。


「本当に来てくれたんだ」

「仕事でいないと思ってた」

「金曜と土日は休みよ、何か飲む」

「水がいい」


 ペットボトルの冷たい水が出された、一気に飲む、落ち着いた。


 キスをされる、暫くして離れる。


「そんなに長くはいられない」

「また来てくれる?」

「多分」

「時間がないんでしょう?」

「ああ、帰るよ」

「キスの間は私を愛してくれた?」

「ああ」

「ならいいわ、早く帰ってあげて」

「わかったありがとう」

「ありがとうは私のセリフよ」


 マンションを出て自分のマンションに帰って来た。


「おかえりー、もっと遅いのかと思ってた」

「大したものがなかったからな」


 嘘を吐くと心が痛い、玲奈を抱き締めキスをする、少し落ち着いた。


 水を頼んでまた飲み干す、完全食が出されこれも飲むと、理恵から連絡が入った。


『何だ?』

『大丈夫? バレてない?』

『ああ、バレてない』

『安心したわ、ダーリンは大丈夫?』

『大丈夫だ』

『そう、今日はありがとうじゃあね』


 電話が切れた、眠くなってきた。


「玲奈、少し眠い」

「はいどうぞ」


 太ももに頭を乗せる。


『スリープモード開始、三時間後に起床』


 落ちた。


 ……


『三時間経過、スリープモード解除』


 気分は元に戻っていた、目を開けると笑顔の玲奈が寝顔を見ていた、起きて座り直す。


 疲れもなくなったし、罪悪感も残っていない、ただやっちまったと思っただけだ。


 心から愛しているのは玲奈一人だけだ、お詫びにもっと優しくしてやろう。


 所長から連絡が入った。


『はい』

『君は雑誌などは読むのかね?』

『いえ、全く読みません』

『そうか、君のスーパー完全食を扱った雑誌が何冊か出ていた、わしはもう読んだから君の机に置いておこう』

『ありがとうございます』

『ドクター海斗、何かあったのかね?』

『何がです?』

『一皮めくれたような感じがした』

『そうですか?』

『まあよい』


 電話が切れた、勘の鋭い人だ。


 玲奈には優しく接し、スキンシップもたくさんした。


「ご主人様、今日は何でそんなに優しくしてくれるの?」

「お前を愛してるからな」

「もっと好きになってくれたの?」

「ああ改めてお前を愛してる事に気付いた」

「私の方が愛は大きいわ」

「俺も負けてないぞ」

「一生愛してね」

「もちろんだ」


 晩ご飯を食べて、シャワーを浴びた。


 ベッドに入り寝るまでイチャイチャした、俺の体力も限界だ。


『スリープモード開始、六時間後に起床』


 夢で浮気がバレて怒られた。


『六時間経過、スリープモード解除』


 目を開けると笑顔の玲奈がいる、幸せだ。


「ご主人様、おはよ」

「おはよう、体が暑い」

「ご主人様寝汗かいてるよ」

「冷たいシャワーで体を冷ましてくる」

「じゃあ朝ご飯の用意して待ってるね」

「わかった」


 水のシャワーを浴びて体のほてりを冷ました、この季節に水だけとは昔の俺なら風邪を引いているだろう、風呂場から出ると玲奈がタオルを持って待っていた、体を拭いて貰う本当にいい女だ、俺は玲奈をアンドロイドと思った事はほとんどない、一人の女として愛している。


 食事の前に玲奈に服を着せた、今日はミニスカセーラー服だ、可愛い。


 食事をし、水を飲んで今日は何をして玲奈と過ごそうか考える、この時間も好きだ。


 玲奈が掃除を始めて窓を開ける、外の空気の方が冷たくて心地いい、玲奈の家事は早いのですぐに終わる、窓を締めたので玲奈に聞く。


「玲奈、エアコン止めてもいいか?」

「いいわよ、私も暑い」


 暖房にしていたわけではないが、エアコンんを切る、部屋が涼しくなってくると体調もよくなってくる、夏は平気だったのに何故今頃暑く感じるのだろう? 不思議だが別にいい、理恵から着信が入った。


『どうした?』

『今朝から体が暑いの』

『俺もだ、朝から水を浴びて体を冷やした』

『キスした事は関係あるのかしら?』

『あるかもな、ちょっと待ってくれ調べる』


 保留にした。


『アシスト、今の話は聞いていたか?』

『はい、原因もわかりました』

『教えてくれ』

『リンクしたままキスをしたのでチップが発熱しているのです』

『俺と玲奈の時は問題ないぞ』

『玲奈とはチップの種類が少し違うので大丈夫なのです』

『わかった、とりあえず直す方法を教えてくれないか?』

『海斗と理恵のリンクを切って下さい、自然に収まります』

『ありがとう』


 保留を外し、理恵に説明してやった。


『わかったわ、リンクを切ってみる』

『俺も切ってみる、治らなければまたかけてくれ』

『うん、わかった』


 電話を切って、すぐにリンクを切った、徐々にほてりがなくなっていく、念の為一時間半待ってみた、治ったようだ、脳の仕組みは謎だらけだ。


 理恵に連絡した。


『どうだ? 俺は治ったぞ』

『私も治ったわ、もうリンクは切って気を付けましょう』

『そうだな』

『明日も同じ時間に迎えに行くわ』

『ああ頼む』


 電話を切った。

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