其の二十八・スーパー完全食完成

 理恵の車で研究所に着いた、相部屋の部屋に入る、理恵がどこかに電話をかけた。


「私よ、二十分後くらいにドクター海斗と行くから、みんなを集めておいて」


 すぐに切る、結構淡々としている。


「ダーリンが企画者だから、みんなに完成の報告と労いの言葉をかけてあげて」

「わかった、考えておく」

「ダーリンなら大丈夫よ、会議であれだけ発言出来るんだもの」

「いつも思いついた事しか言ってないがな」

「それで十分よ、行きましょうか」


 理恵の後を付いて行く、どこで開発してるのかすら知らない、裏手の表向きの工場に入り、二階へ行くと広い工場の一角で八人の男女が白衣で待っていた。


「「おはようございます」」

「おはよう、みんなも顔は知ってると思うけど、こちらがドクター海斗よ」


 俺の出番らしい。


「おはようドクター海斗だ、昨日のサンプルを飲ませて貰って、これで完璧だと感じたのでこれで完成とする、理恵博士と八名のみんなには心から感謝する、以上だ」


 拍手がおきる。


「理恵、もう量産出来るのか?」

「ええ、すぐにでも出来るわ」

「所員全員に試して貰いたい、全員分作れるか?」

「簡単よ、みんなお願いするわ」

「「はい」」


 すでに準備していたみたいだ、工場の機械が動き始める、初めて見るのでみんなに説明を受けながら、見て回る。


 出来上がった製品を飲ませて貰う、問題ない、大きな袋に詰め込まれると、数人が抱えどこかに運んで行った。


「理恵、どこに持って行ったんだ?」

「食堂よ、みんなに飲んで貰うなら食堂がベストでしょう?」

「そこまで考えてなかった」

「ダーリンには今から一仕事して貰うわ」

「何をすればいい?」

「全員でこの商品の名前を考えたの、どれにするかの最終判断は、ダーリンに任せるわ」


 個別の袋のサンプルを渡された、袋には名前が書いてある、直感に頼って決めた。


『スーパー完全食プロテイン入り』


 これにしようと理恵に伝えた、全員が戻ってくる。


「みんな商品名も決まったわ、これよ」


 私のに決まったと、一人の女性が喜んでいる、一人一人と握手をし、礼を言いハグをしていく。


「みんな量産の準備を進めておいて、それから昼には全員食堂に集合よ」

「「はい」」

「ダーリン一度戻りましょう」


 また部屋に戻った、玲奈が不満そうに話し出す。


「喜んで握手をするのはわかるけど、男とも女とも抱き合う意味がわかりません」

「あれはハグと言うんだ、挨拶みたいなものだから気にする必要はない」

「そうよ玲奈ちゃん、あれは挨拶の一種よ」

「わかりました」

「ダーリン、食堂は昼の少し前から人が集まるから、少し早めに行きましょう」

「わかった」

「名前は決まったから、後はパッケージのデザインね、これも全員で考えてあるから、ダーリンが決めてちょうだい」


 デザインの図柄を見せて貰った、なるべくシンプルなのがいい、すぐに決まった。


「これにする」

「それは私の考えたやつよ」

「シンプルで気に入った」

「わかったわ」

「原価は一袋いくらだ?」

「三百五十円くらいよ」

「そうか、販売が決まれば値段は任せる」


 玲奈が立ち上がった。


「ご主人様、ハグについて調べました、世界中で当たり前の挨拶で、日本でも普通の行為だとわかりました」

「だろ?」

「はい、なのでヤキモチは焼きません」

「理解してくれて助かるよ」

「バカではないのでわかります」


 理恵がメールを打って、どこかに送った。


「さあそろそろ食堂に向かいましょう」


 三人で食堂に向かう、チームのみんなも集まっていた。


「記念に先に飲んでおこう」

「そうね」


 カウンターに行くと張り紙がしてあった。


『本日セットなし、新商品のみ』


 みんなで注文し飲んだ。


「所員の反応が楽しみだな」

「そうね、心配はいらないわ」


 人が集まり始めた。


「新商品だって」

「楽しみだな」


 更に人が増えてきた、いろんなところから感想の声が聞こえる、美味い、腹が膨れる、一杯で飲むのが楽だなど、いい感想ばかりが聞こえる、混んで来たので食堂から出た、みんなで喜んでいると、所長と博士がいつの間に入ったのか出てきた。


「君達の新しい商品飲ませて貰ったよ、販売しようじゃないか、販売価格などは会議で決めよう、おめでとう」


 全員と抱き合って喜んだ。


「みんな量産を始めてちょうだい」

「「はい」」


 三人で部屋に戻った。


「ご主人様、大喜びしてましたがどういう事ですか?」

「俺が企画発案した商品が、一般販売される事が決まったんだ、店や通販で販売されるんだよ」


 玲奈が笑顔になって抱きついてきた。


「ご主人様凄いです、やりましたね、おめでとうございます」

「ありがとう、お前がかさばると言った事がきっかけで思いついたんだ、お前にも感謝するよ」

「ダーリン、あなたの名前も裏に入れようと思うんだけどいいかしら?」

「ああ何とでも書いてくれ」

「じゃあ私は今からデザインの編集作業をするわ」

「わかった、おとなしくしておくよ」


 することがなくなったので、パイプベッドに横になった。


 玲奈が椅子を持ってきてベッドの側に座った。


「ご主人様、何かあれば起こします」

「ああ頼む」


『スリープモード開始、玲奈の声で起床』


 すぐに落ちた。


 ……


『玲奈の声感知、スリープモード解除』


「どうした?」


 体を起こすと、玲奈がいない。


「理恵、今玲奈が俺を起こしただろう?」

「いいえ、どこに行くの? って聞いたらトイレって言って出ていったわ」


 しくじった、理恵が紙を一枚持って来た。


「ねえデザイン見てくれる?」

「ああもちろ――」


キスをされた、理恵が離れる。


「ごちそうさま、デザインを書いたお礼が貰えたわ、もう幸せ過ぎる」


 玲奈が帰ってきた。


「ご主人様、いつ起きたのですか?」

「お前のトイレと言う声で目が覚めた」

「ごめんなさい」

「いやかまわない、今デザインが終わったらしいからな」


 理恵が紙を渡してきた、俺の思った通りの出来栄えだ、裏には小さく、完全食を極めたドクター海斗開発と書いてある。


「どう? いいと思わない?」

「完璧だ、ありがとう」


 理恵がその用紙をどこかに送って電話をかけた。


「このデザインで作ってちょうだい」


 すぐに電話を切った。


「ご主人様、顔が赤いですが熱でもありますか?」

「いや、少し暑いだけだ」


 玲奈程じゃないが、理恵のキスも上手かった、不意をつかれた。


「私の仕事も終わったし、帰りましょう」

「ああ帰ろう」

「少し寄り道をするわ、付いて来て」


 また工場に行った。


「もう出来てる?」

「はい、どうぞ」


大きなダンボールを渡された、俺が受け取った。


「さぁ帰りましょう」


 車で送って貰い、理恵がダンボールを開けた、スーパー完全食が無地の袋に詰め込まれている、理恵は五袋取り出し、残りは俺に渡して帰っていった。


 マンションに戻り、晩飯を食べるとスーパー完全食を作って貰い、飲み干した。

 玲奈もこれはいいと言い飲んでいた。

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