其の二十五・理恵のACチップ

 数日間玲奈と楽しい時間を過ごした、楽しい生活をしている間も、理恵はちょくちょくツイッターを更新し。


『好きな人が振り向いてくれない』

『これで彼も振り向いてくれるはず』


 と際どいコスプレで挑発してくる、理恵のファンも。


『この可愛さに落ちない人はいない』

『その人ホモじゃないの?』


 と書き込まれている、俺が無視してたら、LINEが入る。


『ツイッター見てないの?』

『全部見てる』

『じゃあ反応してよ』

『反応に困る』


 とやり取りしていたら、ついにLINEで裸の写真を送って来るようになった、流石に興奮したが、返信はほとんどしていない。


『私の体はそんなに魅力的じゃないの?』

『魅力的だがダメだ』

『魅力的なのに興奮もしないの』

『凄く興奮してるがダメだ』

『じゃあもっと頑張る』


 と諦める様子はない。


「ご主人様、欲求不満なのですか?」


 と玲奈が俺の股間を指差す。


「いや、自然にそうなっただけだ」


 と誤魔化した。


 普通の男なら、とっくに落ちているだろうが、俺が踏みとどまれているのは、一途な玲奈への愛があるからだ、玲奈を裏切ったり傷つけたくないその気持が勝っている。


 理恵からは未だに写真が送られてくる、思い切って突っぱねてやった。


『いい加減にしろ、もういいだろう? 止めてくれ』

『抱いてくれるまで止めないもん』

『それはないから諦めろ』

『いーやーだ』


 理恵も意地になっている、俺が我慢するしかない、夜玲奈とイチャイチャした時に、ただの性欲処理として扱ってしまったので、玲奈にそれを言い謝ったが玲奈は平気な顔をしている。


「私はそれでも満足なので気にしてません、私も性欲を鎮めるために、抱いて貰った事もあるのでいいじゃないですか」


 その言葉に救われた気がする。


 金曜日の夕方に理恵から着信が入った。


『何だ?』

『ACチップが出来たわ』

『そうか、約束通り手術に立ち会ってやる』

『お願いね』

『手術はいつするんだ?』

『早くしたい』

『いつでもいいぞ、決めてくれ』

『じゃあ早速明日はどう?』

『かまわんが、博士の都合は?』

『大丈夫よ、じゃあ迎えにいくわ』

『わかった』


 電話を切って、玲奈に伝えた。


「わかりました、上手くいくといいですね」

「そうだないくらあいつでも、死んだら悲しいからな」

「博士なら大丈夫です、心配いりません」

「ああわかった」


 二人で早めの晩飯を食べ、シャワーを浴びた、理恵からしょっちゅう連絡が入る。


『何だ?』

『ちょっと心細くて』

『お前らしくないぞ』

『自分でもわかってる』

『酒でも飲んで寝たらどうだ?』

『今夜のお酒は禁止されてるから』

『そうか、不安だろうがお前が望んだ事だ』

『うん』

『俺も緊張している』

『心配してくれてるの?』

『当たり前だ』

『ありがとう、横になってみる』

『そうしろ』

『愛してる』

『知ってる』

『おやすみなさい』

『おやすみ』


 不安な気持ちはわかるが、どうしてやることも出来ない。


「ご主人様、疲れた顔をしてるわ」

「ちょっと眠い」

「じゃあ早く寝ましょう」

「そうするか」


 すぐに玲奈とベッドに入った。


『スリープモード開始、七時起床』


 便利な体だ、眠りに落ちた。


 ……


『七時です、スリープモード解除』


 目を覚ますと玲奈の笑顔がある、キスをして寝室を出る、食事を済ませ二人で顔を洗い服を着替えた、白衣を着て俺の準備は終わった、玲奈が最近何を着たらいいのかわからない、と言うので裸にして下着を選び履かせ、服も選んで着せてやる、最近の日課だ。


 ちょうどいい時間なので一階に下りると理恵はもう来ていた。


 車に乗り研究所まで走る、到着すると部屋に入る、すぐに病衣姿の理恵が来たので、一緒に手術室に行く、珍しい手術なので人も多いが、理恵は気にせず裸になり手術台に寝転ぶ、少し遅れて博士と先生が来た。


「心の準備はいいかね?」

「はい、ダーリンに手を繋いで貰ってもいいですか?」

「かまわんよ」

「玲奈ちゃんいい?」

「はい、かまいません」


 俺は椅子を用意して、手を握ってやった。


「心配せんでもいい、問題は術後じゃ」


 麻酔が打たれた、頭に電極が貼られる、頭皮をめくり、頭蓋骨に穴を開ける作業が始まり、それもすぐに終わった、俺からは見えないが穴が開いたのだろう。


 博士がチップを長いピンセットで挟み、慎重にACチップを埋め込んでるようだ、ピーと音がなる。


「成功じゃ」


 ピンセットを抜き頭蓋骨と頭皮を戻す、所員はみんな肉体改造の際に、治癒力が十倍になる血液に交換されているので、暫くすると傷が塞がったようだ。


「オペ終了」

「脳波異常なし」

「うむ、もう目が覚めるじゃろう」


 五分程で理恵が目を開けた、笑顔で上体を起こすと急に頭が痛いと言った、博士が脳波を調べる。


「別に異常はないドクター海斗、君の出番じゃ頼むぞ」

「俺はアンドロイド専門なんですが」

「脳や心は君の担当じゃ、診てやってくれ」

「ダーリンお願いします」


 確か海馬と脳幹の間だったはずだ、位置はわからないが両手で頭を挟む、微弱な電気の乱れを発見した、一度脳全体に静電気を走らせる、乱れが直った。


「どうだ? もう痛みは消えただろう?」

「うん、治ったありがとう」


 拍手がおきた。


「ドクター海斗どうなっていたのかね?」

「機械では測れない程の微妙な脳内の電気の乱れがありました、それを戻しただけです」

「そうか、やはり君がいるとかなり助かる、理恵君暫く休憩したら、帰って二日程家で休みなさい」

「はい、ありがとうございます」


 部屋に連れて帰り、服を着させ一時間程安静にさせたが大丈夫なようだ。


「帰りは佐藤さんに送って貰おうか?」

「大丈夫、運転出来るわ」

「じゃあ帰るぞ」


 車で帰り、とりあえず理恵を家に入れて、玲奈にセットを頼んだ、三人でセットを飲むと、理恵は水を大量に飲んだ。


「ダーリン、チップの使い方を教えて?」

「一気にやると脳が処理しきれないから、簡単な事だけ教えてやる、体内スマホとチップをリンクさせろ、アシスト機能に任せればいい、すぐに終わる」

「出来たわ、アシスト機能の能力が何倍も性能アップしたらしいわ」

「それでいい、後はアシスト機能を使いながら、徐々に覚えていけばいい」

「わかったありがとう、家に帰って少しずつ試してみるわ」

「そうしろ、異常があればすぐに連絡しろ」

「うん、ダーリンも玲奈ちゃんも今日はありがとう」


 理恵が笑顔で帰って行った。


「ご主人様、他の女の手を握ったので、それ以上の愛を注いで下さい」

「あれは仕方ないだろう」

「わかってますが、心がモヤモヤします」

「わかったよ、何をして欲しいんだ」

「抱きしめて下さい」

「いくらでもしてやる、先に部屋着に着替えてからな」

「また服を選んで下さい」

「わかったよ」


 裸にしてTシャツとスカパンを履かせた。

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