其の二十四・二十分の一

 食事が終わると一旦部屋に戻り、休憩してから理恵の部屋に行った、玲奈は付いて来なかった、理恵が苦手なのは本当みたいだ。


 部屋に行くと何かのコスプレをしていた、露出度が高い。


「ダーリンこの衣装はどう?」

「露出のしすぎだ」

「男がホイホイ釣れるわよ」

「お前はアンドロイド並の美人で、スタイルもいいからな」

「惚れてくれる?」

「さぁな」

「もう、少しは優しくしてよ」


 メモを渡して来た、ツイッターとインスタグラムのアカウントが書いてあった。


「ダーリン、それ他の人には内緒よ」

「わかった、後でフォローさせて貰う」

「もう少ししたら新人所員のオペがあるけど見に来る?」

「何時からだ?」

「十四時からよ、見に来る?」

「暇だから見学させて貰う、一旦戻る」

「わかったわ」


 部屋に戻り、体内スマホで理恵のSNSをフォローした、ツイッターは普通のツイートから、際どいコスプレまでアップしている、インスタは普通だったが、二つ共年齢詐称している。


 コスプレ自撮りは人気があるみたいだ、フォロワー数も多い、理恵がツイートしたら通知が来るように設定した。


 漫画を読んでいる玲奈に話しかけた。


「面白いか?」

「はい、漫画は面白いです」

「そうか十四時からまたオペの見学に行く」

「わかりました」


 頭の中で通知音が鳴った、理恵からだ。


『LINEも交換しましょう』


 アカウントが書いてあったので、追加してやった。


 もうすぐ十四時だ、玲奈を連れてオペ室に行った、今回は裸の女が手術台に寝ている。


「ご主人様、やらしい目でみないで下さい」

「大丈夫だ、これも仕事の一つだ」


 今回は理恵が担当するらしい、すでに下着に白衣という姿で現れた、白衣を脱ぎ手術用の服を着た。


「始めるわよ」


 手術が始まった、健介の時と流れは同じだが、理恵の方が沼田先生より早い、これで性格が可愛ければ惚れてたかもしれない。


 一時間もかからず終わった、女には筋肉をあまり増やさないから早いのかもしれない。


 女が目を覚ました、チェックが終わると理恵が、暑いと言いながら裸になってどこかに消えた。


「ドクター海斗、理恵君のオペはどう思うかね?」

「素晴らしいと思いますが、性格が変態ですね」

「ハハハッ変態か、確かにそうじゃな性格がまともだったら、わしもこんな天才はいないと思うんじゃがな」

「まあでも、天才と狂人は紙一重って言いますから」

「そうじゃな」

「で、あいつはどこに行ったんですか?」

「シャワーじゃ」


 俺は脱ぎ捨てられた下着と白衣を拾い、シャワー室まで持って行った、理恵が裸で出てくる、服を渡してやった。


「早く着ろ」

「ありがとう、ちょっと付き合って」


 玲奈と理恵の後を付いて行った、食堂だった、理恵がセットと水を三つと頼み、俺達も付き合わされた。


「ふぅ、落ち着いたわ」

「お前は何をさせても天才だが、変態だな」

「そうかしら?」

「ああ変態だ」

「あんまり言わないで傷つくわ」

「じゃあすぐに裸になる癖を直せ」

「だって暑いし、研究所の中だからいいじゃない」

「男も多いからおかずにされるぞ」

「わかったわ、気を付けるわ」

「素直だな」

「ダーリンの言う事は聞くわ」


 その後部屋に戻り、借りた本を読んた。


『アシスト、俺にもハッキング出来るか?』

『チップを使えば簡単です』


 簡単と言われたので本を閉じた、玲奈は漫画が気に入ったようで、楽しそうに読んでいる、LINEが鳴った理恵からだ。


『粘膜接触からわかったんだけど、ダーリンのチップは凄い性能ね、私にはとても制御出来ないわ』

『だから止めておけと言ったんだ』

『ところでダーリン』

『何だ?』

『愛してる』

『お前が変態じゃなければ惚れてたかもな』

『本当? じゃあ直すから付き合って』

『直ったら考えてやる』


 返信が来なくなった、パイプベッドに横になり目を閉じた。


「ご主人様寝るのですか?」

「少しだけな」

「わかりました」


『スリープモード開始、人が来たら起床』


 意識が途切れた。


 ……


『来客あり、スリープモード解除』


 目を覚まし起き上がると、ドアがノックされた、どうぞと声をかけると博士だった。


「どうされました?」

「ドクター海斗のチップが高性能なのは知っておるな?」

「はい、だからまだ実用段階ではないと言ったのです」

「理恵君がどうしてもチップが欲しいと言ってきたんじゃが、君のチップの何分の一くらいなら、普通の人間でも扱えるかのう?」

「ちょっと待って下さい」


『アシスト、今の話は聞いたか?』

『はい、分析結果では二十分の一程度なら、普通の人間でも制御可能です』

『わかった』


「博士、二十分の一です」

「そうか性能はかなり落ちるが、一度試作品を作ってみよう、ありがとう」


 時刻は十七時だ、理恵は何時に帰るつもりなんだろうか? あまり遅いようなら佐藤さんに頼もう。


 とりあえず新しいカルテを開き、記憶のデータを引き出して、一号の真琴と四号の梨花の症状と治療法を書いてみた、素人なのでカルテの書き方はわからないので、適当に書き上げた。


 ドアが開く、理恵が入ってくる。


「ダーリンお仕事?」

「仕事の真似事だ、もう終わった」

「じゃあ帰りましょう?」


 荷物もないので玲奈を連れて車に乗った、理恵に言われた通り助手席に座った。


「ACチップを入れたいそうだな」

「ええ、ダーリンのチップの二十分の一の性能だけど、入れるわ」

「どれくらいでチップは出来るんだ?」

「博士は一週間以内と言っていたわ、ダーリン手術に立ち会って貰ってもいい?」

「いいが何でだ?」

「楽しみだけど、少し怖いの」

「わかった立ち会ってやる」

「ありがとう」

「脳のどの辺りに入れるんだ?」

「海馬と脳幹の間よ、脳が少しでも傷つくと終わりだから怖いの」

「そうか、博士に任せれば大丈夫だろう」

「うん、私も信じてる」

「それにしても腹が減った」

「私もお腹空いたわ」


 玲奈が後ろから顔を突き出してきた。


「ご主人様、理恵さんも一緒に晩ご飯はどうでしょうか?」

「理恵、肉料理だが一緒に食うか?」

「うんいただくわ、玲奈ありがとう」

「送り迎えをして貰ったお礼です、ご主人様は渡しませんよ」

「私は諦めてないわ」


 マンションに戻った、やはり家が一番だ。


「今日はご主人様の好きな唐揚げがメインです、朝から準備してました」

「あの唐揚げか?」

「はい、疲れも吹き飛びます」

「ダーリンお酒ないの?」

「ない、あっても車だから飲まさん」


 白衣を脱いで座った、理恵も白衣を脱いで畳んだ。


 唐揚げと肉炒め大盛りが並ぶ、三人で食べ始める、理恵は美味いと言いながらバクバク食べている。


「お前は料理出来るのか?」

「私だって料理くらい出来るわ」


 すぐに料理がなくなった、玲奈が水のペットボトルを運んで来た、理恵が半分一気に飲んで俺に渡してきた、俺が飲もうとしたら玲奈が止めた。


「間接キスになります、ダメです」

「玲奈、中学生みたいな考え方は止めろ、これくらい普通の事だ」


 残りの水を飲み干した、理恵は眠くなったと言い、ごちそうさまと言って帰った。


 玲奈はまだ気にしてるのか、ムスッとしていたのでキスをしてやったら、機嫌が良くなった。

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