其の十八・趣味

 数日後、口座に給料が振り込まれているのに気が付いた、気付くのが遅すぎたが、手取りで二十五万円、かなり多い方だ。


「玲奈、初任給は二十五万円だった」

「大学新卒の初任給の平均より多いですね」

「よくわかったな」

「お金の勉強をしました、お金がないと生活も出来ないし恋人も作れないそうですね」

「そうだ、金のない男に女は付いて来ない」

「私はご主人様が無一文でも、愛し続けるつもりですが」

「ありがとう、給料は出来るだけお前のために使おうと思っている」

「そんな、もったいないです」

「いいんだ、俺がそうしたいんだ」

「わかりました、ありがとうございます」


 通帳をしまい、コーヒーを飲みながらくつろいだ、研究所からのアンケートはもう提出してある、問診票と言われていたが簡単な物だった。


 季節は秋になり過ごしやすくなった、何か玲奈ととも共通の趣味があれば、もっと楽しめるはずだが玲奈の趣味がわからない。


「玲奈、お前趣味とかないのか?」

「ご主人様の寝顔を観察する事です」

「それ以外だ」

「ご主人様とイチャイチャする事です」

「それも違う」

「ではないです」

「何か二人で楽しめる趣味が欲しい」

「何か二人でですか? 考えてみます」

「わかった」


 久しぶりにテレビをつけてみた、ここに住んでから初めてだ、ドラマ番組ばかりだがお笑いの番組も一つあった、普段テレビを見ないので芸人も全員知らない顔ばかりだ、少し面白かったので一人で笑っていた。


「ご主人様、どこがそんなに面白いのかわかりません」

「そのうちわかるようになるさ」


 すぐに番組が終わってしまったので、テレビを消した、玲奈が珍しくノートパソコンを触り始めた、俺も改造後使っていない、画面を覗いたら趣味を検索している、暫く放っておいた。


 俺はアシストに聞いた。


『アシスト、俺と玲奈で楽しめる最近人気の趣味はないか?』

『最近ですとスポーツジム、ジョギング、サイクリング、釣り、ハイキング、キャンプなどが流行っています』

『ジョギングが手軽でいいな』

『二人にとっても更に健康的でお薦めです』

『わかった検討する』


 水を飲もうと立ち上がった。


「ご主人様、トイレですか?」

「いや、水が飲みたいだけだ」

「それは私の仕事です」

「お前が忙しそうだから」

「ご主人様のお世話が最優先です」

「だが水くらい――」

「いくらご主人様でも反論は認めません、私の存在意義を否定されるくらい悲しいです」


 と言い水を入れてくれた。


「お前の言い分はわかったが、俺のメイドじゃないんだぞ、恋人同士なんだぞ」

「わかってます、なので私も我慢している事もあるんです」

「何を我慢してるんだ、全部させてやるぞ」

「では食事とお風呂で体を洗う事と、トイレのお世話をさせて貰います」

「わかった好きにしろ、と言いたいが食事はその場の雰囲気で変えるぞ」

「はい」

「お前みたいないい女はどこを探してもお前だけだ」

「わかってます、私はご主人様にとって最高にいい女です」

「自分で認めるんだな」

「はい、それだけの自信があるから、どこまでも尽くし、心から愛せるんです」

「わかったお前の愛を全て受け入れ、俺も一生お前を愛す事を誓う」

「はいお願いします、結婚はまだですか?」

「それはもう少し待て、俺達はまだ未成年だせめて二十歳になるまで待て」

「仕方ないので待ちます、もう婚約者なので我慢出来ます」

「それでいい」

「郵便物を確認してきます」

「わかった」


 五分もかからず戻って来た。


「重要な物はありませんでした」

「わかった、チラシばかりだろう?」

「ええ、そうです」


 玲奈が一枚のチラシをずっと見ている。


「何か気になるのか?」

「ご主人様、私も冬服を着ないといけないのですか?」

「冬の外は寒いからな」

「今のご主人様も私も寒さに強いので、半袖で過ごせますが」

「それでも周りの目もあるから、冬服はちゃんと買う」

「可愛いのがいいです」

「わかってる、お前に似合うのを買ってやるからな」

「はい、お願いします」

「で、趣味は見つかったのか?」

「いえ、したことがないのでわからなかったです」

「俺はジョギングでもどうかなと思ったんだがどうだ?」

「ちょっと興味あります」

「じゃあちょっとやってみるか?」

「はい」

「ちなみに他の案はスポーツジム、サイクリング、釣り、ハイキング、キャンプだった」

「並べられると迷います」

「俺も迷った結果ジョギングを選んだ」

「やってみましょう、何時にします?」

「晩ご飯の前後どちらかだな」

「じゃあご飯前にしましょう」

「わかった、ちょっと待っててくれ」


 俺は自分のハーフパンツとTシャツを、二枚取り出し玲奈に着させてみた、少し大きいがいいだろう、俺も着替え時間を確認し、行ってみようと玲奈を連れ出した。


 三十分程軽く走ってみた、二人共息切れすらしていないが汗はかいていた、マンションに戻った。


「どうだった?」

「はい、心肺機能の向上と足腰の強化にいいと思います」

「暫く続けてみるか?」

「はい、少し楽しいので」

「よし決まりだ、後でウェアと靴を買いに行こう」

「はい、では食事を作ります」


 食後、二人同時に栄養が足りない、と言ったので完全食とプロテインも飲んだ。


 その後大型のスポーツ用品店へ行き、玲奈にはなるべく露出度の高いウェアを選び、お揃いのシューズを買って帰った。


 家で玲奈とウェアを着てみた、俺のも玲奈のもサイズはぴったりだ。


「ご主人様、私のウェア露出度も高いし、体のラインも出てて恥ずかしいです」

「わざとそれを選んだんだ」

「どうしてです」

「俺の女はこんなに美人で、こんなにスタイルがいいんだぞってアピールだ」

「ご主人様は私がジロジロ見られても、嫌じゃないんですか?」

「嫌だが見せつけたいんだ」

「まあいいです」

「何キロくらい走る?」

「ご主人様に任せます」

「わかった」


『アシスト、三十分程で走れるコースを教えてくれ』


 頭に地図が出てきた。


『このコースがいいと思います、距離は五キロです』

『わかった』


「玲奈、コースは決まった距離は五キロだ」

「はい、毎日走るのですか?」

「気が向いたらにしよう」

「わかりました、ご主人様シャワーを浴びましょう」


 玲奈とシャワーを浴びると、頭と体を洗ってくれた、介護されてる気分だ、玲奈が自分の体を洗い始めると、俺はシャワーの温度を下げて体を冷やした、風呂から出ると体も拭いてくれたので楽だった。


 風呂上がりの氷水を飲み干し、リビングで玲奈とくつろいだ。


 玲奈の太ももを触るのが癖になっていたので、自然と手が伸びる、スベスベの肌に女特有の柔らかさがたまらない。


「ご主人様、最近脚をよく触ってますが、脚フェチじゃなかったですよね?」

「ああ脚フェチじゃないが、お前の脚は好きだ触り心地が最高だ」

「ご主人様はどこを触っても、同じ事言ってますよ」

「お前の体全部が好きだからな」

「ご主人様に触られるのは私も好きなので、いっぱい触って下さい」

「他の奴には触らせるなよ」

「それは私も嫌です、安心して下さい」

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