其の十七・給料

 真琴の事件から数日が過ぎた、玲奈が初めてラーメンを食べてから、ラーメン屋巡りが日課になっていた、醤油系や味噌系などいろいろ食べたが、玲奈は初めて食べた豚骨のこってり系が好みだと言った、俺と好みが一致した。


 一度コンビニでインスタントの豚骨ラーメンを買ったが、玲奈は化学調味料の味が不味いと言い、二度と買わなかった。


 真琴の件で頑張ったので、また謝礼が振り込まれるかもと思っていたがなかった、基準がわからないがまあいい、と考えていたらちょうど博士から着信が入った、玲奈にも聞こえるようにした。


『はい』

『今回金が振り込まれてなくて、怒ってはおらんか?』

『いえ別に、もう十分いただいてますから』

『そうか、今回の件で君の働きが評価され、君の株が上がった』

『それはどうも』

『で君には少ないが給料が出る事になった』

『別にいいですよ、顔を出さない事の方が多いですし』

『気にするな、一応所員じゃし会社的にも給料を出さないと、後でいろいろ面倒な事になる、新入社員の給料程度しか出ないから、好きに使いたまえ』

『はあ、そういう事ならわかりました』

『また何かあれば手伝って貰う』

『はい、いつでもどうぞ』

『それだけじゃ』


 電話が切れた。


「玲奈どう思った?」

「いいんじゃないでしょうか、でもいくらくらいかしら?」

「新入社員程度だから二十万くらいじゃないかな?」

「じゃあ貰っておきましょう」

「そうだな、お前とのデート代やお前の服などに使おう」

「ありがとうございます」


 また頭に先生から着信が入る、また玲奈にも聞こえるようにした。


『はい』

『体の調子はどうだい? 疲れにくくなったかい?』

『ええ疲れにくくなりました』

『それはよかった、博士から給料の話は聞いたかい?』

『さっき聞いたとこです』

『入れ違いになってしまったか、アンケートの話も聞いたかい?』

『それは聞いてません』

『君にはこれから不定期に問診票を送る、質問に回答を書いて送り返してくれ、一回目のアンケートはもう送ったよ』

『わかりました』

『君は人類の進化に関わる改造を受けた唯一の人間だ、期待してるよ』

『実験台ですね』

『実験台と言えば聞こえが悪いが、まあそういう事になるな』

『俺が俺でいられるなら別に構いませんが、俺みたいに改造を受ける人間が、今後増えるのですか?』

『増えるとしてもまだまだ先の話だよ』

『わかりました』

『じゃあ失礼するよ』


 電話が切れた。


「そういう事らしい、郵便物は毎日確認してくれ」

「わかりました、ご主人様私最近羞恥心という感情が増えました」

「ますます人間らしくていいじゃないか」

「はい、ところでそろそろご主人様のお昼寝の時間ですよ」

「疲れてないから別にいいよ」

「ご主人様の寝顔が見れないです」

「毎日何時間も見てるだろう?」

「我慢します」

「本屋に行くがどうする?」

「もちろん一緒に行きます」


 本や雑誌なら何でも扱ってる、大きな本屋に行った。


「ご主人様、こんなに本がありますよ」

「ああ、四階まであるから何でもあるぞ」

「何を探してるのですか?」

「特に決めてない」


 一階から見て回った、気になる本は冒頭だけ読んだ、目次を見てペラペラと本をめくると、読んでない箇所が頭の中に入って来た。


 これもチップの影響かと感心して、いろんな本をペラペラとめくり内容を記憶する、玲奈も肉料理の雑誌をペラペラめくっている。


「何か参考になったか?」

「少しは参考になりました」


 時間をかけ、二階三階と回る、頭の中にデータが蓄積されていく、もう十分だ。


「ご主人様、それはエロ本という奴じゃないですか?」


 玲奈が怒っている。


「他の人の体を見ないで下さい」

「わかったもう俺はいいが、帰るか?」

「はい、帰りましょう」

「たまには刺し身が食いたいな」

「刺し身ですか? 食べた事ないです」

「じゃあ買って帰ろう、美味いぞ」


 大きな魚屋に寄って、刺し身をいろいろ頼んだ、玲奈は珍しそうに魚を見ている、会計をしマンションに戻った。


「夏だから傷みやすい、早めに食べよう」

「今から食べます?」

「ああ食べよう」


 玲奈に食べ方を教えてやり、二人で食べたが少し買いすぎた、俺が満腹で箸を置くと、残りを玲奈が平らげた。


「凄く美味しかったです、初めて食べましたがまた食べたいです」

「じゃあまた食べよう」

「はい」

『アシスト、俺達は牡蠣にあたったり、アニサキスのような寄生虫に胃をやられたりするのか?』

『二人共大丈夫です、心配いりません、他にも多少傷んだ物でも平気です』

『わかった』

『危険を感じたらこちらから警告します』

『ありがとう』

「玲奈、やっぱり太ももを貸してくれ、満腹で眠くなった」

「いつでもどうぞ」


 玲奈の太ももに頭を乗せた。


『スリープモード開始、一時間半後に起床』

『了解しました』


 ……


 夢を見た、二回目の改造後初めてだ、俺が更に改造され空を飛んでいた、ありえない。


『スリープモードを強制解除しろ』

『スリープモード解除、起床』


 目を開けた、玲奈がまた観察していた。


「今日は短い睡眠でしたね」

「夕方だったからな、悪いが水を頼む」

「はいご主人様、悪いとか言わないで普通に命令して下さい、私は奉仕用なんですから」

「わかった、だが俺はお前を奉仕用だとは考えていない」

「それだけで十分嬉しいです」


 玲奈が冷たい水を持ってきた、一気に飲んだ、改造後水分を取る事がかなり増えた。


「玲奈、下着は履いてるか?」

「いえ、以前も言いましたが家では履いてません」

「じゃあ服を脱いでくれ」

「はい、これでいいですか?」

「ああそのまま立っていてくれ」

「はい」


 俺は玲奈の体を隅から隅まで匂いを嗅いだが、玲奈のいい匂いしかしない。


「もういい、服を着てくれ」

「はい、何をしてたんですか?」

「俺も玲奈も汗をよくかくが、汗臭くないだろ? 不思議に思って確認してみた」

「汗と言っても体温調節の水分ですから」

「じゃあ風呂はただの気分転換か」

「そうですね、ご主人様もあまり熱いシャワーは控えて下さいね」

「わかった」

「晩ご飯の時間ですが、どうします?」

「まだ刺し身で腹が膨れてる、完全食とプロテインだけでいい」

「わかりました」


 食事をしシャワーを浴びると、玲奈をベッドに連れて行った。

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