其の十四・ハンバーガーとACチップ

 玲奈とハンバーガーを食べに出かけた、近くの三店舗のどれかで迷ったが、ある店に決めた。


「とりあえず、ハンバーガーと言えば誰もが一度は来たことのあるここにしよう」

「はい」


 店内に入りカウンターに行く。


「こちらでお召し上がりですか?」

「はい」

「ご注文はお決まりですか?」

「玲奈どれが食べたい?」

「んー決めて下さい」

「じゃあダブルチーズバーガーセット、ドリンクはコーラで、それとテリヤキバーガーセット、オレンジジュースで」


 先に会計を済まし、番号札を受け取り席につく。


「注文がややこしいですね」

「慣れれば簡単だ」

「六番のお客様」

「はい」


 ハンバーガーのセットが並べられる。


「ポテトなんて頼みました?」

「セットで頼むと付いて来るんだ」

「美味しそうです」

「ここの店ではこのチーズバーガーとテリヤキバーガーが人気メニューだ、半分ずつ食べよう」

「はい」


 先に俺がダブルチーズバーガーを食べ、玲奈がテリヤキバーガーを食べた。


「美味しいです」


 残り半分を交換して食べた。


「こっちも美味しい」

「ポテトも食ってみろ、上手いぞ」

「本当だ美味しいです、でもちょっと物足りないですね」

「もっと注文していいぞ」

「自分で買ってみます」


 玲奈がカウンターでメニュー表を指で差してる、トレーを持って帰って来た。


「テリヤキバーガーとポテトのLとシェイクを買いました、もう覚えたので大丈夫です」


 玲奈はテリヤキバーガーが気に入ったみたいだ、美味しいと言いながら足をばたつかせている。


「ご主人様もポテト食べていいですよ」

「ありがとう、貰うよ」

「テイクアウトも出来るんですね」

「ああ出来るぞ」

「ご主人様シェイクも半分どうぞ」

「ありがとう」


 食べ終えると、二人でペーパーで口元と指を拭いた。


「大満足です」

「じゃあ帰ろう、帰る時はゴミをここに捨てて、トレーはここに置く」

「覚えました」


 玲奈はマンションに戻っても上機嫌だ、季節限定メニューもある、と教えてやると食べに行くと言い喜んでいた。


「何か栄養が足りない気がする」

「完全食飲みますか?」

「ああ頼む」


 玲奈がすぐに用意した、飲みながら考えてた事を玲奈に聞く。


「玲奈、改造されてから自分の体の調子や、栄養分が足りてないなどが、はっきりわかるようになったが、体内スマホ以外に何か入れられてないだろうな?」

「ないです、私はずっと側で見てましたが、体内スマホ以外は入ってません」

「本当だろうな?」

「本当です、そのわかるようになったのは、人工臓器のせいじゃないかと思います」

「わかった信じるぞ」

「はい、信じて下さい」

「わかった、他に何か食べてみたい物はないか? どこでも連れて行ってやるぞ」

「特にないです、あれば言います」

「わかった」

「ご主人様、お肉を買いに行きましょう」

「いいぞ」


 肉屋まで行き玲奈が注文をしている、結構買ったみたいで荷物が多い、二人で手分けして持って帰った。


 頭に着信が入る、博士からだ。


『はい』

『その後体に不調はないかね?』

『ええ体内スマホも便利ですし、体の調子もいいです』

『何か困ってる、もしくはもっとこうなりたいとかはないかね?』

『そうですね、疲れやすいのが困ってます』

『ふむ、それを解消してあげられなくもないが、どうする?』

『また改造ですか?』

『簡単な改造じゃ』

『じゃあ受けてみたい気分です』

『ではその代わりと言っては何だが、ついでに脳にチップを入れさせて貰えないか?』

『どんな機能が入っているんです? これ以上改造人間になるのは嫌ですよ』

『大したものではない、簡単に言えば小さなコンピューターを入れるんじゃ、研究所の秘密を知ってる君にしか頼めない事でな』

『んー、何か生活に支障は出ませんか?』

『大丈夫じゃ生活が便利になるはずじゃ、玲奈の頭にも入っている小さなACチップじゃ謝礼も出そう』

『謝礼ですか、俺はそれでも人間でいられますか?』

『もちろんじゃ』

『じゃあいいですよ』

『ありがたい、では明日はどうかね? 手術時間はほんの一時間で終わって、すぐに帰れるが』

『いいですよ、その代わりさっきの俺の条件も頼みますよ』

『わかった、また九時に迎えに行く』

『わかりました』


 電話を切った。


「ご主人様、電話終わりました?」

「よく気付いたな、博士からだった」

「何の要件ですか?」

「俺の頭に小さなチップを入れさせて欲しいだとさ、コンピューターみたいな物らしい」

「入れるのですか?」

「ああ交換条件を出したし、生活に不便はないそうだからな、俺にしか頼めないらしい」

「ご主人様がいいのなら反対はしませんが、いつですか?」

「明日の九時に迎えが来るらしい、玲奈は手術を監視しておいてくれないか?」

「わかりましたが、ご主人様が人間じゃなくなるのは嫌ですよ」

「大丈夫だ、ちゃんと確認してある、生活が便利になるだけらしい」

「交換条件って何ですか?」

「俺が疲れやすいのを改善して貰うのを交換条件に出した」

「それは嬉しいです、一時間程の手術で終わりそうですね」

「ああ博士もそう言っていた、謝礼も出すと言われた」

「謝礼はちゃんと貰いましょう、大切なご主人様の頭をいじるわけですし」

「わかった、話をしたら疲れた」


 玲奈が隣に座り太ももをぽんと叩いた、俺は頭を乗せ少し眠った。


 ……


 変な夢を見た、玲奈が廃棄処分される夢だ夢だと認識しているが、俺は泣き叫んだ。


「ご主人様、ご主人様」

「ん、玲奈どうした?」

「何故泣いているのですか?」

「嫌な夢を見ていたからだ、大丈夫だ」

「よかったです、明日の手術が怖いのかと思いました」

「手術はあまり気にしていない」


 体を起こした、喉が渇いた。


「玲奈、悪いが冷たい水を飲ませてくれ」

「はい」


 涙を拭った、結構泣いたみたいだ。


「はい、ご主人様」

「ありがとう」


 水を飲み干して氷をかじった。


「ご主人様、ご主人様が実験台にされてるみたいで、少し不満です」

「今回は明らかに実験台だろうな、だが今回は俺はそれでもいいと思ったから引き受けたんだ」

「わかりました」

「脳をいじられるのは少し抵抗があるがな」

「それは私でも不安になります、私が私じゃなくなるんじゃないかと」

「同じ事を考えてるな、それだけが不安だ」

「明日手術なら、今夜はお肉は止めておきますか?」

「そうだな、関係ないとは思うが止めておこう、完全食とプロテインだけでいい」

「わかりました」

「それと早めに睡眠を取って、疲れを抜いておこう」

「はい、じゃあ食事にしますね」

「頼む」

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