其の十三・オヤジギャグと勉強会

 二日が過ぎて土曜になった。


「ご主人様、もう九時ですよ」

「寝すぎた」


 あくびをして伸びをする、まだ眠いが服を着て寝室から出る、食事をし顔を洗う、玲奈の服装は俺が選んだノースリーブとスカパンだ、これでパンツは見えない。


「ご主人様が服を選んでくれた、嬉しい」

「パンツが見えないように考えただけだ、下着もシンプルなのにしたし完璧だ、コーディネートはこーでねーと」


 しまったオヤジギャグを言ってしまった。


「……ぷっ、ふひゃひゃひゃあははは、お腹が痛い、こーでねーとはーははははひぃ苦しい面白いハァハァ」


 あれ? ツボに入ったようだ。


「そんなに面白いか?」

「面白すぎます、初めて聞きました、ぷっひひひひ、あー面白かった」

「ただのオヤジギャグだぞ」

「これがオヤジギャグなのですね、こんなに声を出して笑ったのは初めてです」

「まあウケてよかった」

「ところで同性での見せ合いはいいのに、異性はダメなのですか?」

「そうだ、それが常識だ覚えておけよ、カップルだけが許されるんだ」

「はい」


 その後、握手はいいが手を繋ぐのはダメとか、顔はどれくらいまで近づけていいか、など教え込んだ。


「ご主人様、これっていわゆる束縛っていう物ですか?」

「そうだ、俺はあまり束縛したくないが、お前が無防備過ぎるからな」

「束縛嬉しいです、何でも守ります」

「これ以上ない、本音と建前は出来るな?」

「はい、間違えたら教えて下さい」

「わかった昼飯にしよう」

「はい」


 頭にLINEが入った。


『もうすぐ着く、よろしく』


 返信の仕方をアシストに教えて貰った。


『おぅ、待ってる』


「玲奈、もう着くらしい」

「はいオートロック解除しておきます」


 数分でチャイムが鳴った、玲奈が招き入れる、四人が部屋を見渡しながら入って来た。


「デカい家だな、ボロアパートに住んでた頃と大違いだ」

「親の貯金と保険金が、たんまり転がり込んで来たからな」


 玲奈がコップに氷を入れて、ジュースも三本持ってきた。


「好きなの飲んで、お菓子もあるから」

「「ありがとう」」


 四人はジュースを飲むと、教科書とノートを取り出した。


「お前ら全員進学組なのか?」

「そうなんだ、しかも同じ大学だから、一人だけ落ちたらかっこ悪いからな」

「何で玲奈に教わろうと思ったんだ?」

「編入試験、全科目百点だったって聞いたからな」

「玲奈、本当か?」

「はい、簡単でした」

「玲奈ちゃん、私から教えて」

「うんいいよ」

「玲奈ちゃん、海斗と喋る時だけ敬語なのは何でなの?」

「うーん、ご主人様を好きになった時からの癖が取れないの、私はこれでいいわ」

「ふーん、まあいいわ」


 勉強会が始まった、俺は暇なのでぼーっと見ていた。


「海斗も頭がよかったら楽なんだけどな」


 俺が馬鹿扱いされている、ムッと来た。


「教えてやる」

「大丈夫か?」

「見せろ」


 問題を見たがわからない。


『アシスト、この問題の答えは?』

『四です』

「これの答えは四だ」

「わかるのか? 本当だ合ってるどうやって解くんだ?」

『アシスト』


 こうやってズルをしながら教えてやった。


「おいみんな、海斗もかなり頭がいいぞ」

「じゃあ女子は女子、男子は海斗に聞いて」


 こうやって、休憩時間まで教えてやった。


「みんな休憩しようぜ」


 俺の一言でみんながペンを置いた、玲奈がお菓子を持ってくる。


「海斗、部屋を見てもいいか?」

「ああいいぞ、玲奈見せてやってくれ」

「はい」


 五人が各部屋を見て回った。


「どの部屋も無駄に広いな、風呂場もシャワーが二つも付いてるし」

「私はカウンターキッチンに憧れるわ」

「俺も住みやすくて気に入ってる」

「本当に同棲してるんだな」

「ああ、玲奈が全部してくれるから助かってるよ」

「ご主人様は何もしなくていいのです」

「家も彼女も超優良物件じゃないか」

「そうだな」

「玲奈ちゃん、どうしたらそこまで尽くせるの?」

「この人に尽くしたいって思えば、何も苦にならないわ」

「尽くしたいとは思うけど、そこまで出来ないわ」

「明美の愛が足りないからだろう」

「広隆の愛が少ないせいよ」

「まあまあ、その辺にしておけ」

「さぁ次はどの教科をします?」

「化学と社会」


 再び俺と玲奈で教えてやった、十八時にはみんな帰ると言った。


「遅くまでありがとう、教え方が上手いから助かったわ、また教えて貰ってもいい?」

「ご主人様?」

「ああいいぞ」

「ありがとう、じゃあごちそうさま」


 みんなが帰った。


「ご主人様、ご主人様の学力であそこまで出来ると思えませんが」

「体内スマホのアシストに教えて貰った」

「そうだったんですね、まあいいです」

「お前大学行ったらどうだ?」

「興味ないです、大学の講義一日分よりご主人様との一分を大事にしたいです」

「そこまで愛してくれてありがとな」

「私こそありがとうございます」

「悪いが晩飯にしてくれ」

「はい、簡単な物でいいですか?」

「ああ、お菓子も食ったから簡単でいい」


 大量の肉炒めを食って腹が膨れた。


「明日の昼はハンバーガーを食べさせてやるからな」

「楽しみにしておきます、今日のオヤジギャグを、思い出し笑いしそうになってこらえるのが大変でした」

「そこまで笑ってくれるなら、また今度別なのを用意しておくよ」

「お願いします」

「シャワーでも浴びるか?」

「ご主人様、今日は愛が不足してます」

「俺も我慢してた、今から補ってやるから」

「はい」


 この夜は散々スキンシップを取らされ、玲奈に散々襲われた。


 翌日。


「ご主人様、そろそろ起きて下さい」

「んー玲奈、もう無理だ体力が」

「寝ぼけてますね、朝です朝」

「朝まで出来ない」

「違います、ご飯です」

「ご飯?」

「そうです、朝ご飯です」

「腹が減った」


 体を起こしてゆっくり服を着た、リビングに行くともう用意してあった、急いで完全食とプロテインを一気に飲み干した。


「おかわり」

「はい、すぐ用意します」


 二杯目は味わって飲んだ。


「昨夜はいっぱい愛を感じました」

「俺は恐怖を覚えた」

「でも楽しかったでしょう?」

「ああ、楽しかった」

「じゃあ私は浮気出来ませんね」

「するつもりだったのか?」

「冗談です、他の人なんて興味のかけらもないですから」

「お前が浮気したら俺もするからな」

「ダメです嫌です、しないで下さい」

「俺も冗談だ、そんな気はさらさらないが、何事も程々にな」

「はい、今日の約束覚えてますか?」

「ハンバーガーだろ? 覚えてる」

「今から楽しみです」

「お腹空かせておけよ」

「はい」

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