其の十二・婚約者

 二日後、始業式の日がやってきた。


「ご主人様、始業式ですよ起きて下さい」

「やっぱり恥ずかしいから嫌だ」

「何も恥ずかしくないですよ、みんなにそのたくましい筋肉を見せつけましょう?」

「んー、早めに行って着替えた方がいいな」

「そうしましょう」


 起き上がって服を着た、寝室から出ると玲奈が手早く完全食とプロテインを作り運んでくる、一気に飲み干し玲奈と顔を洗い、制服のズボンだけをはく、ズボンも太ももがぱつぱつだ、上は白のTシャツを着てカバンを用意した。


 玲奈も制服に着替えた、髪型も俺の好きなハーフアップポニーテール、やはり可愛い。


「ちゃんと上も下も下着をつけたか?」

「大丈夫です、パンツも見られないように注意します」

「それでいい、行こうか?」

「はい」


 早くマンションを出たが、ズボンがキツくて歩きづらい、他の生徒からの視線を浴びながら、なんとか学校に着いた、周りから何か聞こえるが無視して教室にたどり着いた。


「真田、お前なんでそんなにデカくなったんだ?」

「すげー筋肉質になってる」

「どんなトレーニングしたんだよ」

「真田もすげーけど、玲奈ちゃん更に可愛くなってないか?」

「本当だ、下手な芸能人より美人だ」


 半分は玲奈が引き付けさせてる、もう教室に入ったから一安心だ、すぐに机の中から制服を取り出し、大きそうな方のシャツを着るとぴったりだった、安心してズボンを取り出しトイレで履き替えた、すぐに教室に引き返し、落ち着いた。


 ご丁寧に冬服まで準備してくれている、先輩に感謝だ。


 担任の坂上が入って来て、俺を見て一言。


「筋肉バカ」


 と言った、みんなが笑いをこらえている。


「先生マジありがとう」

「筋肉で破けたらもう知らないわよ」

「大丈夫」

「じゃあみんな、今から体育館に移動して」


 玲奈はいつの間にか女どもに囲まれ一緒に移動し始めた。


「ご主人様、早くしないと遅れますよ」

「わかってる、先に行ってくれ」

「海斗君、彼女にご主人様って呼ばせるなんて、どんな関係かしら?」

「先生目が怖い、ただの彼女ですよ」

「早く行きなさい」

「はい」


 体育館にギリギリ間に合った、校長の長い話が始まる。


『アシスト、校長の話は後何分かかる?』

『校長が読んでる原稿から計算すると、後約十分程です』

『そんなにか、暫く話し相手になってくれ』

『わかりました』

『俺と玲奈はどちらが注目の的になってるんだ?』

『半々ですね、海斗は興味の眼差し、玲奈は羨望の眼差しで注目されてますが、一部の筋肉フェチの女子からは、海斗も憧れの的として見られています』

『そうか、早く帰りたいよ』

『この後二人にはラブレターが集まり、玲奈が拗ねると思われます』

『俺も独占欲強いんだけど』

『玲奈の嫉妬には負けます、諦めましょう』

『また俺だけ責められるのか』

『仕方ないです、そろそろ校長の話が終わります』

『わかった、ありがとな』


 それからすぐに話しが終わった、みんながぞろぞろと教室に戻って行く、腕を掴まれたので振り払おうとしたら、玲奈だった。


「ご主人様、女子に人気ですよ」

「またお前が拗ねるから、勘弁して欲しい」

「大丈夫ですよ、私の彼氏として有名になってますから」

「終わったらすぐに帰るぞ」

「はい」


 教室に戻ると何人かが集まって来た。


「海斗、筋肉見せてくれ」

「私も見たい」

「ほら脱げ脱げ」

「ご主人様、筋肉を見せるくらいいいじゃないですか?」

「また今度な、坂上が帰って来るぞ」


 すぐに坂上が帰って来た。


「はいみんな座って、海斗君の筋肉がそんなに見たければ、海斗君ここで脱ぎなさい」

「ちょ、先生まで冗談キツいですよ」

「先生も興味あるの、少しだけ見せてちょうだい、他に見たい人いる?」


 全員が手を挙げた、俺は嘆息しその場で上半身裸になった、大胸筋や腹筋、上腕二頭筋に力を入れ見せた、拍手がおきた。


「先生もういいでしょ?」

「いいわ、私はご主人様とは呼ばないわよ」


 全員が笑った、玲奈は平気な顔をして。


「海斗をご主人様と呼ぶのは、私以外認めないわ」


 と言い放った、教室が凍りついた。


「あなた達結婚でもするの?」

「そのつもりです、婚約者なので同棲もしてますし」


 みんながざわめいた。


「はいみんな静かに、今日はこれで終わりだから帰っていいけど、進学組は毎日出席して勉強よ、就職組は面接以外は同じく登校しなさい、それ以外の人は自由登校だから好きにしなさい、だけど卒業写真を撮る時は全員登校しなさい、はい解散」


 坂上が出ていった、みんなも帰る準備を始めたので、俺も貰った制服をカバンに詰めて玲奈を連れて下駄箱に行った、ラブレターが五通入っていた、玲奈の下駄箱は蓋から溢れる程ラブレターが入っていた、玲奈はカバンに押し込み、俺宛のラブレターも取り上げ、二人でマンションに戻った。


 二人共着替えが終わると、俺はリビング玲奈はキッチンに入った、ラブレターの事で何か言われるのはまだ先か。


 玲奈が完全食とプロテインを持ってくる、氷が入っていて冷たくて美味しい。


「氷も混ぜてシェイクしてみました、どうですか?」

「美味くて飲みやすい」

「でしょう、ところでご主人様ラブレターが五通もありますが、どういう事ですか?」

「俺に聞かれても知らねえよ」

「一応読ませてあげます」

『マッチョな先輩が好きです』

『その胸板に抱かれたいです』


 全部こんな感じだ。


「俺は興味ない」

「だったらいいです」

「お前はどうなんだよ?」

「私も興味ありません、読んだら捨てます」

「何で俺だけ責められるんだ?」

「ヤキモチです」

「俺もお前がラブレター貰ってムカつくんだが」

「じゃあお互い様ということで」


 玲奈はラブレターを読まずに捨てた。


「これでいいですか?」

「ああ可哀想だがそれでいい」


 玲奈が抱きついてきた。


「ご主人様、嫌な性格でごめんなさい」

「ちょっと独占欲が強すぎるが別にいい」


 チャイムが鳴った、玲奈が応答する、すぐにダンボールを抱えて戻って来た。


「研究所からです」

「開けてくれ」

「完全食とプロテインです」

「もう来たのか?」

「毎月月初めに配達と書いてありました」

「今回は何袋ずつだ?」

「五袋ずつです」

「まあいい、しまっておいてくれ」

「はい」


 玲奈がコーヒーを入れて戻って来た。


「ご主人様、明美からLINEが来ました」

「明美って誰だ?」

「一緒に海に行った、セミロングの子です」

「西田の彼女か、要件は?」

「私に勉強を教えて欲しいそうです」

「教えられるのか?」

「高校レベルの問題なら簡単です」

「ならいいが、明美一人か?」

「海に行った四人全員です」

「俺は構わないぞ、いつだ?」

「次の土曜です」

「わかったいいぞ」

「では返信しておきます」


 体内スマホでLINEしたことないが、文字はどうやって打つんだろうか?


「ご主人様、昼過ぎに来るそうです」

「住所も教えたか? 俺は引っ越した事は坂上にしか言ってないからな」

「大丈夫です、教えておきました」

「そうか、飲み物とお菓子くらい用意してやるか?」

「そうですね、少し楽しみです」

「お前が楽しいならそれでいい、俺は勉強は苦手だから見ておくよ、下着つけろよ」

「わかりました」

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