其の十一・着れなくなった制服

 玲奈が研究所を卒業し、所有権が俺に渡ってから約一週間が過ぎた、甘えただった玲奈は更に甘えるようになっていた、後数日で夏休みも終わり二学期だが、自由登校なので行かなくていいやと考えた。


「ご主人様、二学期はどうするんですか?」

「とりあえず始業式だけは出る」

「わかりました、制服をクリーニングに出しててよかったですね」

「そうだな、だが今の俺の体には小さすぎてぱつぱつだ、俺が改造された事は言うなよ」

「言いませんよ、けどご主人様の婚約者とは言ってもいいですか?」

「いいぞ、隠す必要もないからな」

「やったぁ」

「ところでお前の誕生日っていつなんだ?」

「私にもわかりません、博士に聞いても意識が生まれた日か、人間の体が出来た日か、議論の余地があるから、自分で決めろと言われました」

「誕生日くらいはっきりさせとかないとダメだな」

「ご主人様が決めて下さい」

「博士に貰った戸籍謄本はまだあるか?」

「はい、ここに置いてます」


 玲奈がテレビ台の引き出しから出した、見てみると、七月十日生まれの十八歳になっていた。


「これは変えられないから、この日を誕生日にするしかないな」

「ご主人様と同じ七月生まれだったら、一緒にお祝い出来るのでそれでいいです」

「俺の誕生日知ってたのか?」

「最近生徒手帳を見て知りました」

「そうか、プレゼントはなしで、お祝いの食事くらいしようか?」

「はい、したいです」

「何が食いたい?」

「定番のフライドチキンやピザとケーキがいいです」

「そんなのでいいのか?」

「はい、食べた事がないので」

「じゃあ今から注文して、今日食べよう」

「はい」


 俺はピザとフライドチキンを十八時に配達を頼み、家の近くのケーキ屋に、小さくていいから誕生日のホールケーキを作ってくれる店を探した、二軒目でオッケーを貰ったのでこれも配達を頼んだ。


「なんとか手配出来た、楽しみに待っててくれ、全部十八時に配達してくれる」

「飲み物とか用意しなくていいですか?」

「それも注文してある」


 配達が来るまでのんびりと過ごした、チキンが届き、すぐにピザも届いた、少し遅れてケーキがやっと届いた、急かしたお詫びにチップを渡した。


「全部開けていいぞ」

「うん」


 一つずつ開けては感動している、俺は先にケーキにろうそくを立てて、火をつけて電気を消し、誕生日の歌を歌ってやった。


「さぁ息で火を消せ」

「フッー」


 電気を付けた、玲奈はもう泣いている。


「これくらいで泣くな」

「だって、だって」

「ケーキは最後だピザとチキンから食っていいぞ」


 二人で半分ずつ食べ、ケーキも切って全部食べた。


「玲奈、どうだった?」

「涙の味がしたけど美味しかったです」

「来年もしような」

「はい、お願いします」

「次はクリスマスだな」

「クリスチャンじゃなくてもお祝いするんですか?」

「ああみんなしてるぞ」

「楽しみが増えました、クリスマスは私が何か作ります、ケーキも作るので楽しみにしてて下さい」

「わかった、俺はバレンタインの方が好きだけどな」

「ちゃんと手作りチョコを作るので、待ってて下さい」

「楽しみにしておくよ」

「ご主人様、一度ハンバーガーも食べてみたいです」

「何回でも食べさせてやる」

「ありがとうございます」

「お前がこれまで体験したことのない物は、全部教えてやる」

「お願いします、ゴミを片付けますね」


 玲奈がテーブルの上を片付けた、汚れついでに二人でシャワーを浴びて、寝るまでくだらない話をして過ごした。


 朝目覚めて、食事を済ませると制服のシャツを着てみたが、どう頑張っても肘までしか入らない、これはヤバいと思い担任に電話してみた。


「先生、真田だけど今大丈夫?」

『大丈夫よ、どうしたの?』

「夏休みの間に体を鍛え過ぎて、上のシャツと制服が着れないんだ」

『鍛え過ぎてって言ってもどれくらい? ボタンが閉まらないの?』

「いや、腕すら通らない」

『例えばどれくらい大きくなったの?』

「全身が二まわり大きくなった それくらい筋肉が付いた」

『ええー、バカじゃないの? あなた就職内定組よね?』

「ああそうです、だから新しい制服買うともったいなくて」

『じゃあ例えば、相撲部の子の制服だったら入りそう?』

「大丈夫だと思う」

『わかったわ、制服は私がなんとかするからTシャツで登校しなさい、最低でも始業式だけでも出られるようにするわ』

「お願いします」


 電話を切った。


「ご主人様、どうでした?」

「なんとかしてくれるらしい」

「大丈夫かしら? 同じ生地があれば私が作れるんだけど」

「それが難しいから電話したんだ、しかし久しぶりにスマホを使ったが面倒だな」

「体内スマホの方が便利だもの」


 いつものように、昼から玲奈の膝枕で寝ていると、頭に着信があった担任からだ。


『はい』

『なんとかなったわよ』

『ありがとう、どういう経緯で?』

『相撲部の卒業生に片っ端から電話したの、そしたら二人が、捨てようと思ってた制服があるから、あげるって言ってくれたわ』

『先生ありがとう、俺も礼を言わなくちゃ』

『あなたはいいわ、向こうも忙しいみたいだから、私が帰りに貰って帰っておくわ』

『マジ感謝』

『机の中に入れておくから、少し早めに来て着替えなさい、卒業したら捨ててもいいわ』

『わかった』

『じゃあ二日後ね』

『はい』


 電話を切って、玲奈に話した。


「よかったじゃないですか、二人から貰えるならどっちかは着れるはずです」

「だよな、安心したら腹が減った」

「今日の晩ご飯は美味しい自信あるから期待して下さい」

「わかった」


 上体を起こした、玲奈が立ち上がりキッチンに向かった。


 暫くすると香ばしい香りが漂ってきた、もう準備はしていたみたいだ。


 高いステーキといい香りの唐揚げが出された、ステーキはいい肉なのか口の中で溶けていく、すぐに平らげて唐揚げを食べた、フライドチキンより美味かった、にんにく醤油味でいくらでも食べられる、すぐに食べ終えてしまった。


 玲奈に感想を言って、また作ってくれと頼んでおいた。


「言ったでしょ? 自身ありますって、朝から漬けておいたんですよ」

「マジ美味かった、クリスマスはこの唐揚げが食べたい」

「わかりました、覚えておきます」


 玲奈がコーヒーを入れに行って、戻って来ると。


「ご主人様、お米が後二キロ程残ってますがどうします?」

「微妙な量だな、捨てるのはもったいないから、炊いておにぎりにして冷凍しておいてくれないか?」

「わかりました」

「ちょっとずつ食べれば、すぐになくなるだろう」

「そうですね、私ご主人様のそういうところも好きです、お金持ちになったからと言って贅沢はせず、かと言ってケチでもないところです」

「もともとこういう性格なんだよ」

「では明日炊いておきます」

「悪いな」

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