其の九・リンク
ベッドでウトウトしていると、アシストから声をかけられた。
『緊急着信が入りました』
『誰からだ?』
『沼田博士からです』
『繋げ』
『海斗君、着信拒否にしてたのかね?』
『ええ誰からも邪魔されたくなかったので』
『すぐに玲奈と会ってやってくれ、このままだと精神崩壊して狂ってしまう、データが異常値を振り切っている』
『わかりました』
『頼んだぞ』
電話を切って寝室から出た、玲奈が床に倒れ痙攣している、慌てて抱きかかえた。
「玲奈、玲奈」
白目を剥いている、頬を叩いたら気が付いたようだ。
「ご主人様、ごめんなさい許して下さい」
声も震えている。
「もう許すからしっかりしろ」
「ご主人様、ご主人様」
熱が高い、これは危険かもしれない。
『アシスト、玲奈を助ける方法を教えろ』
『氷などで頭を冷却して下さい』
『わかった』
冷凍庫から氷枕を出し、氷をビニール袋に詰めて玲奈の後頭部とおでこを冷やした、暫くすると痙攣が収まったが、意識ははっきりとしない、おでこの氷が溶けたので詰め替えに行こうとしたら、服を引っ張られた。
「玲奈、玲奈?」
「ご主人様もう大丈夫です、冷たい水を飲ませて下さい」
「わかった、待ってろ」
大きなコップに氷水を入れ、玲奈の体を起こし飲ませた、途中から自分でコップを持ち飲み干して、氷もガリガリと食べた。
「体に異常はないか?」
「大丈夫だと思います、調べます」
玲奈は目を閉じた。
「全身スキャン開始……スキャン終了、異常なし」
玲奈が目を開けた。
「大丈夫だった、壊れたかと思いました」
「俺がちょっと怒ったくらいでパニックになるな」
「だって嫌われたらもう居場所がないもん」
「あれはただの喧嘩だ、時間が経てば仲直り出来る」
「じゃあもう許してくれるの?」
「許すけど、今度また隠し事したらもっと怒るからな、俺は裏切られた気分だ」
「もう隠し事しません」
「それでいい、博士もかなり心配してるから電話して報告しろ」
「はい」
電話をし始めたみたいだ、俺も氷水を入れて飲んだ。
「ご主人様、電話終わりました」
「なんか言ってたか?」
「ご主人様と私に謝るって言ってました」
「じゃあもういい」
「ご主人様、着信拒否にするのだけは止めて下さい、あれでパニックになりました」
「じゃあ隠し事をして俺を怒らせるな」
「はい、約束します」
「疲れた今日はもう寝るぞ」
「はい」
ベッドに入ると疲れからか、すぐに眠りについた。
……
かなり眠ったようだ、目を覚ますと玲奈はまだ寝ていた、寝付けなかったんだろう、涙の跡が残っている。
『アシスト、玲奈は何時に起きる?』
『四十分後に起きます』
『何でそこまでわかるんだ?』
『二人の携帯がリンクしてるからです』
『じゃあ俺の事も筒抜けなのか?』
『玲奈はアシスト機能をほとんど使わないので、筒抜けにはなっていません』
『どうしたら玲奈の沈んだ気分が直る?』
『キスをたくさんしたり、ショッピングに行くのもいいと思います』
『わかった』
喉が渇いた、寝室から出て水を飲んだ、またベッドに戻り、玲奈の寝顔を観察した、可愛い寝顔は人形のようだ。
「スリープモード解除、起床」
玲奈が目を開けた、頬にキスをした。
「おはよう、寝付けなかったのか?」
「おはようございます、はい遅くまで起きてました」
「もう怒ってないと言っただろう?」
「はい、反省してました」
「腹が減った」
「すぐに用意します」
二人で寝室を出た、玲奈が完全食とプロテインを用意してくれた、両方飲み干す。
「玲奈、今日は買い物に行くぞ」
「はい」
「お前の服と下着を買ってやる」
玲奈に笑顔が戻った。
「嬉しいです、可愛いのがいいです」
「わかった、俺好みのにして貰うぞ」
「はい」
俺はローテーブルとローソファーの寸法を測って記憶した、なんとなく気に入らない。
「玲奈、ついでだから欲しい物とかあったら買うから、考えておいてくれ」
「はい」
俺は先に着替えコーヒーを飲んでいた、玲奈も着替え終えたので一緒に出かけた。
ショッピングモールに着くと、まずカバンの売ってる店を探した。
「玲奈、財布や小物を入れるカバンを先に買おう、好きなのを選んでくれ」
「はい」
暫く玲奈に付いて回った、玲奈は淡いピンクのショルダーバッグを選んだ、レジですぐに使うと言い、そのまま渡して貰った、玲奈が早速カバンに財布を入れ、肩から斜めにかけた。
続けて下着を見に行き、俺と玲奈の好みが一致したのを数組買った、服は数店舗回り全部ノースリーブの服を数枚と、ホットパンツと短めのスカートとスカパンを買った。
「俺はこれでいい、他に欲しい物があるなら付き合うぞ」
「ちょっと見て回りましょう」
雑貨屋を何軒か見たが、玲奈は何も買わなかった、最後にスポーツ用品店に入るとシェイカーを一つ買った、初めて玲奈が自分の財布から支払いをした。
「ご主人様、初めて自分で物を買いました」
「どんな気分だ?」
「緊張しました」
「そうか、帰りに家具屋に寄るがここで何か食べて行くか?」
「自販機で飲み物だけでいいです」
「わかった」
出入り口の自販機コーナーで、コーヒーを飲んで店を出た、帰り道の途中の大きな家具屋に入り、ローテーブルとローソファーを見て回った、気に入ったガラスのローテーブルがあったので、サイズを確認し買うことにした、ローソファーもL字の座り心地のいいのが見つかったので、店員を呼び現金で購入し配達を頼んだ。
マンションに戻ると、玲奈が抱きついて来た、俺も抱きしめてやった。
「ご主人様、今日はありがとう」
「まあ俺の好みに合わせて貰ったがな」
「でも私も気に入りました、ご飯の用意をします」
新しく買ったシェイカーで完全食を、古い方でプロテインを作っている、理由を聞いたら匂い移りがするかららしい。
食事を終えると、すぐに家具屋が配達に来た、古いのは処分して貰い、新しいのをリビングに運んで貰った、少し考えたがチップを少し渡した、配達員は喜んで帰って行った、ローテーブルは前のよりも大きい、ローソファーも座り心地がよくなった。
玲奈は早速ピンクのワンピースに着替えていた、玲奈は家ではいつもノーブラなので、スカートをめくって見たが、パンツも履いていなかった。
「ノーブラノーパンかよ」
「研究所にいた時は布一枚だったから履き慣れてないの、家では許して」
「誰か訪ねて来た時は両方履けよ、ガラステーブルだからパンツも見えないように注意しろよ」
「パンツも見られるとダメなんですか?」
「ああダメだ下着は好きな人にしか見せない物だ」
「わかりました、気を付けます」
「完全食をもう一杯くれ、腹が減ってる」
「はい、私も飲みます」
二杯目を飲んで腹が満たされた。
「ご主人様、このソファー座り心地が凄くいいですね」
「だろ? 俺も気に入ってるんだ、膝枕をしてくれ」
「どうぞ」
スカートをめくって、直接太ももに頭を乗せた、この方が気持ちよく寝られる。
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