其の七・プロテインと完全食

 腹が減っていたので、玲奈とまた焼き肉を食べに行った、玲奈も食べてなかったのか、三人前ずつ食べて腹が膨れた。


 マンションに戻るとネットで事故の事を検索した、俺の名前は出てなかったが、被害者の青年の安否は不明のままだ、トラックの運転手は逮捕されていた。


 事故後の俺の写真が載っていたが、手足は千切れ、内蔵もはみ出し、目玉も飛び出して誰なのかわからない姿だった、地元警察がどこの病院に運ばれたのか、探したみたいだが見つからなかったようだ。


 一つ困った事は力が付きすぎて、パソコンを壊してしまった、焼き肉屋でも箸を何本も折ってしまったし、力加減が難しい。


「玲奈、この力は何だ?」

「特殊な筋肉を使ったから、力が何倍にも増えてるの、もう私より力が強いわ」

「骨も特殊な金属が混ざってるそうだな」

「そうよ、これでもう車に轢かれても怪我しないわ、皮膚も血も私と同じだし、人工臓器だから病気の心配もほとんどないわ」

「俺もアンドロイドなのか?」

「アンドロイドは機械が入ってるけど、ご主人様は生身だから人間よ、ご主人様が言ってた改造人間って言葉がピッタリね、博士達と同じ体よ」

「一度死んだ身だし、それをこうやって蘇らせて貰ったから文句は言ってられないな」

「そうですよ」


 俺の携帯が鳴った、博士からだ。


「博士、ありがとうございました」

『いや構わんよ、玲奈も聞こえてるかね』

「博士、私も聞こえてます」

『言うのを忘れておったが、食事はたんぱく質と糖質の豊富な物を食べなさい、肉や卵や白身魚に豆乳などじゃ、プロテインが一番いい、余ってるのを送ってやろう』

「はい、ありがとうございます」

「私も頑張って管理します」

『うむ玲奈に任せよう、海斗君力加減には慣れたかね?』

「いえまだです、今もパソコンを壊してしまいました」

『すぐに慣れる、水分も多めに飲みなさい』

「わかりました」

『何かあればいつでも電話したまえ』

「はい」

『後、玲奈のDNAのおかげで感情を持った試作品が完成した、世に出回ってる玲奈以外の五体も、一時回収して感情を持たせるつもりじゃ』

「早いですね」

『わしの得意分野じゃからな、以上だ』

「はい、お疲れ様です」


 電話を切った。


「ご主人様食事は任せて下さい、私と同じメニューにすれば大丈夫です」

「わかった頼むよ、今から新しいノートパソコンを買いに行こう」

「はい」


 近くの家電屋に行き、ノートパソコンを購入しマンションに戻った、セットアップだけすると眠くなって来たので、サッとシャワーを浴びて眠った。


 朝起きて軽く食事を済ませた、体の調子はいい。


「ご主人様買い物に行きましょう」

「ああ行こう」


 近所の肉屋に行き、牛肉豚肉鶏肉をたくさん買い、スーパーで卵もたくさん買って帰った、肉なら何でもいいみたいだ。


 昼に配達が届いた、大きなダンボール二つだ、送り主は沼田健一となっている。


「博士の息子の先生からだわ」

「博士の名前は?」

「博士は雄一よ」


 ダンボールを二つ共開けた、プロテインが十袋と完全食が十袋だ、博士から手紙が入っていた。


『君たち二人は今後、この二つだけで生きて行ける、うちの商品だがもし続けるなら原価で売ってあげよう、申し込み用紙かネットで注文したまえ』

「玲奈どうする?」

「買った方がいいと思います、私もこれだけで生活してました」

「じゃあ定期購入の手続きをしてくれ」

「はい」


 玲奈がパソコンで申し込んだ。


「終わりました」

「ありがとう、早速二つ共作ってくれ」

「はい」


 プロテインと完全食をシェイカーで水に溶かし、コップに入れてくれた、両方飲んだが美味いし結構腹が満たされる、玲奈も自分の分を作って飲んだ。


「やはり私はこれがいいです」

「これって原価どれくらいなんだ?」

「通常販売が三千円から四千円で、原価は二百円くらいと聞いています」

「へー、原価で売ってくれるなら、二百円なら超安いな」

「お買い得ですね」

「お前も金の価値がわかってきたか?」

「はい、把握しています」

「よし、コンビニに行くぞ」

「はい」


 近所のコンビニのATMから四十万円引き出し、マンションに戻り、半分の二十万円とクレジットカード一枚を玲奈に渡した。


「外で何か買うなら必ず金が必要だ、これを持っておけ」

「こんなにたくさんはいりません、カードもです」

「いいから持っておけ」

「わかりましたがお財布を持ってないです」

「財布はネットで買おう、俺も買い替えたいからな」

「わかりました」


 ネットで財布を物色し、俺は黒の折りたたみ財布を選び、玲奈はピンクの可愛い長財布を選んだ、やはりアンドロイドでも女の子なんだなと思った。


 コーヒーのおかわりを頼んで、玲奈が立ち上がりフラフラとコーヒーを入れて来た。


「お前フラフラしてるが、どこか体調が悪いのか?」

「ただの寝不足です、ご主人様の事故の時三日寝てなかったからだと思います」

「寝れば治るのか?」

「はい」

「じゃあここで今寝ろ、俺が膝枕してやる」

「いいのですか?」

「ああ早く横になれ」

「はい」


 玲奈が俺の太ももに頭を乗せた。


「スリープモード開始、体の機能停止」


 すぐに目を閉じ眠ったようだ、考えれば玲奈の寝ている姿は初めて見る、いつもこうやって寝ていたんだな、と玲奈の寝顔を見つめた、玲奈の可愛い寝顔を写真で撮り、ネットサーフィンをして時間を潰した。


 死んだように眠っているので、たまに息をしてるか確認した、全く動かない。


「スリープモード解除、起床」


 玲奈が目を開けた、座り直す。


「ご主人様、もう大丈夫です」

「四時間しか寝てないぞ」

「私はいつも四時間睡眠です」

「お前の寝起きは初めて見たが、普段俺が寝てる時は起きてから何をしてるんだ?」

「ご主人様の寝顔を観察したり、キスとかしてちょっかいを出してます」

「恥ずかしいな、俺も何かすればよかった」

「危険を察知した時以外起きないので、何でもして下さい」

「わかった、とりあえずお前が無事で安心した、全く動かないから心配したぞ」

「大丈夫です、何か食べますか?」

「ああ肉でも完全食でも何でもいい」

「お肉がもったいないので料理します」


 立ち上がった玲奈はもうフラフラしていなかった。


 ササッと晩ご飯を食べると、シャワーを浴びる準備をした。


「ご主人様、お風呂も一緒に入っていいですか?」

「恥ずかしいけどいいぞ」


 二人でシャワーを浴びた、頭と体を洗い風呂から上がる、アイスを食べると玲奈とイチャイチャした。

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