其の二・玲奈の恋心

 月曜の朝、玲奈に起こして貰った、昨夜も俺のベッドに入って来ていたみたいだ、朝食を食べコーヒーを飲み終えると、制服に着替えた。


「玲奈、行ってくる」

「ご主人様いってらっしゃい」


 徒歩十分で学校に着いた、暫く友達と駄弁っていると担任の女教師坂上が入って来た。


「みんな座って、こんな時期だけど転校生を紹介するわ、入って来て」


 転校生が入って来た、顔を見て驚いて声を上げた。


「玲奈、何で?」

「海斗と一緒に勉強するためです」


 坂上が話始める。


「玲奈さん自己紹介をして」

「はい、皆さん真田玲奈です、海斗の従兄妹です、よろしくお願いします」


 クラスの奴らが騒ぎ出す。


「凄い美人」

「スタイルも抜群ね」


 坂上がみんなを黙らせた。


「とりあえず海斗の隣が空いてるから、教科書は見せて貰って、みんな最後の一年だから仲良くしなさい、後みんなまた進路調査票出しなさい、ホームルームは以上よ」


 玲奈に聞きたい事はあるが、帰ってからにしよう、二十四時間仕えると聞いたが、学校にまで来るとは考えてもいなかった、とりあえず机を引っ付け教科書を見せてやった。


 休憩時間の度に女どもが寄って来て、玲奈に話しかけている、玲奈は無表情のまま対応していた。


 昼休みになり、弁当組と学食組に別れた。


「ご主人様、お弁当作って来れなくてごめんなさい」

「構わねーよ、一緒に学食食べに行こう」

「はい」


 食堂で二人でカレーを食べた、食べてる間も玲奈は全学年から注目されていた、こういのはあまり好きじゃない。


「玲奈、明日から弁当にしてくれ」

「はい」


 さっさと食べて教室に戻った、戻ったら不良三人が寄って来て玲奈をナンパし始めた、玲奈は上手いことあしらっているが、不良どもはしつこい、俺が口を挟んだ。


「お前ら玲奈が嫌がってるだろう、諦めろ」

「てめぇはただの従兄妹だろ引っ込んでろ」

「お前らがいるとクラスに迷惑がかかる、出ていけ」


 パンチが飛んで来た、顔に当たる寸前にパンチが止まった、玲奈が不良の腕を掴んで止めていた、そのまま腕をねじり上げる。


「いてぇ、離せ」


 玲奈が立ち上がり、リーダー格の男の襟を掴み、そのまま持ち上げた、男の首が絞まり息が出来ず、顔色が悪くなって気絶した。


「ご主人様、このまま首の骨を折って殺してもいいですか?」

「殺すのはダメだ、もう気絶しているから離せ」

「はい」


 玲奈が手を離すと男が床に落ち、残りの二人が気絶した男を担ぎ、逃げるように教室から出て行った、クラスメイトが拍手をした。


「海斗、ご主人様って呼ばせてるのか?」


 しまった聞こえていたか。


「いや、呼ばせてない」

「私が勝手にご主人様と呼んでるだけです」


 午後の授業が始まった、腹がいっぱいなので眠気に勝てず寝て過ごした、授業が終わると玲奈に起こされ、二人で帰った。


 リビングで玲奈とコーヒーを飲みながら話した。


「お前転校も制服も博士に頼んだんだな?」

「はい」

「まあ別にいいが、先に言ってくれ」

「はい、すいません」

「お前は非戦闘型じゃなかったのか?」

「非戦闘型ですが、普通の人間より何倍も力はあります」

「アンドロイドだもんな、それと相手が悪人でも人を殺すのはダメだ約束しろ」

「はい、約束します」

「今日は助けてくれてありがとな」


 玲奈を軽く抱きしめた。


「心拍数異常、脳波に乱れ発生」


 玲奈から離れた、玲奈の顔が赤い。


「どうしたんだ? どこか故障か?」

「全身をスキャンした結果、破損部分はありません」


ピリリリ、ピリリリ。

 玲奈がスマホを取り出した、スピーカーモードで電話を受ける。


『わしじゃよ、海斗君はじめまして』

「博士、今は収まりましたが心拍数と脳波に乱れが発生しました」

『こっちもモニターで感知したから連絡したんじゃ、何をした時に異常を感じたのか聞かせてくれ』

「ご主人様に抱き締められた瞬間です」

『海斗君、他に気付いた事はあるかね?』

「玲奈の顔が赤くなりました」

『ふむ、未完成の感情のプログラムが働いたのかもしれない』

「玲奈を回収して調べるつもりですか?」

『心配せんでいい、こんな事は初めてじゃモニターでの確認と、玲奈のデータを毎日監視するから、海斗君はもっとスキンシップを取って貰えんか』

「はい、頑張ってみます」

『玲奈、お前さんは海斗君に恋心を持ったみたいじゃ、また連絡する』


 通話が切れた。


「私に感情が目覚めた? 恋心?」

「まだ決まったわけじゃない、気にするな」

「はい」

「また何かあったら俺にも教えてくれ」

「わかりました」


 俺もスキンシップか、手を握ったりハグしたりすればいいのだろうか? それ以上となるとキスしたりまた胸を揉んだりすればいいのか? いやいくら玲奈がアンドロイドでも俺が恥ずかしい、ん? 俺が照れてどうするんだ、確かに一目惚れしたがアンドロイドだぞ、これ以上考えても答えが見つからない、考えるのは止めよう。


 玲奈の作った晩飯を食べ、食後のコーヒーを飲んでいると玲奈が聞いてきた。


「ご主人様は私の事好きですか?」

「ああ好きだぞ、ラブかライクかはわからないがな」

「私もです、ご主人様の事を考えると心が温かくなったりモヤモヤします、これは恋愛感情でしょうか?」

「そうだなそれは恋愛感情だが、ただ好きなだけか愛なのかはわかるか?」

「わかりませんが、もっと抱き締めて欲しいとか、キスがしたいって思います」


 おいおい、それは愛だぞと思ったが、玲奈が自分で気付くまで言わないでおこうと思った。


「まあ自分で考えて答えを見つけろ」

「はい」

「玲奈にインプットされた感情の機能が動いてる証拠だな」

「そうですね」

「後はその感情に合わせた表情と声を出せ、お前の表情は変わらないから見た目で判断が出来ない」

「わかりました、今の気分はこれです」


 とニコッと微笑んだ、あまりの可愛さにドキッとした、可愛すぎる。


「お前の笑顔は俺の好みだ」

「嬉しいです」


 声のトーンまで変わった、これで玲奈がアンドロイドと疑う奴はいないだろう。


「ご主人様、何だか頭が疲れました」

「急激に進化して精神的に疲れたんだろう、風呂に入って早く休もう」

「これが精神的疲労ですか、わかりました」


 交互に軽くシャワーを浴びてベッドに入った、俺も疲れた。


「今日はよく頑張ったな」


 おでこにキスしてやった、お返しに頬にキスされた。


「ご主人様おやすみなさい」

「ああおやすみ」


 そのまま深い眠りについた。

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