第14話

 千里は、もう一度生まれた子供の顔を見て微笑んだ。

「そうよね……、嬉しいわよね」

「ああ、嬉しいよ。俺も、おふくろも、親父も喜んでるよ」

 忠雄の泣きそうになっている顔のパーツの一つ一つを丁寧に撫でていく。

「そうよね……、久しぶりの家族ですものね」

「うん……大事にするよ」

「そうよね……でもアナタ、大丈夫?」

 ああ、本当に良かった。

 こんなに幸せなことはない。

 忠雄のこの笑顔が、絶望に染まるのを想像するだけで、顔に出来た笑顔の為の皺が深さを増していく。

「何がだい?」

「こんな歳の離れた腹違いの弟が出来て」

 その瞬間に、赤ん坊が微かな声で笑った。


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【30分で読める復讐短編】黒い箱 @Araichaser

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