第6話
電話の一時間後に車で来た義父が家の中だと義母が来るかもしれないし、出来ればどこか別の場所で話したいと言ったので、千里は最寄り駅の喫茶店に案内した。
店内に入ると平日の夕食時という時間帯のせいか、それともこの店の風貌のせいか、自分達以外に客がいなかった。
注文を取りに来た店員の目は、自分と義父を何か良からぬ仲だと思っているような節があった。確かに、義父はそこらにいる中年男性とは違い、体は引き締まっており、加えてファッションセンスも若く、顔の皺を取ればまだ三十代に見える。
だけど、そんな関係になりたいとは思わない。
特に、今は。
義父は席に座ると同時に、千里にぺこりと頭を下げた。
「千里さん、今回はうちの妻が言い過ぎてしまって……申し訳ない……」
「いえ……、お義父さんが悪いわけではないですから……」
「電話で話した通りなんだが、あの子は『千里さんが悪い』と言っているんだが、どうにも僕はそうは思えないんだ。だから千里さんの話を聞かせてほしい。あの子は……、君に何かをしたのか?それとも、これは考えたくないが、あの子の言う事が、本当なのか?」
千里は忠雄への怒りを感じながらも、努めて冷静に全てを話し始めた。
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