🔹第一章『幼少期』 第8話『祝福の儀の結果』
「スタンベルク伯爵、フィリップ様ご子息のジャック様の固有スキルは【七色聖剣士】です! 『火、水、土、風、氷、光、神聖』の7つの属性を使用できる2000年以上前に存在した伝説の聖剣士のスキルです!」
「うおおおおおおおおおおおおおォォォーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
参列者からはもう拍手喝采の大歓声だった。
「父様やりましたっ!!」 「ジャック!よくやったぁ!本当によくやったぁ~、本当に良かったよぉ…」
ジャックは父に抱き付き、フィリップは笑顔で泣いていた。
「ジャック~流石だわ~!わたし生まれてきて今が一番幸せだわ!今日は豪華にお祝いしましょう♪」
マリーナは泣いてはいないが本当に幸せそうな顔をしている。
「ジャックにい流石だな!俺ももっと凄いスキル貰って追いついてみせるから覚悟しとけよ!」
エドガー兄はいつもの元気を取り戻せたようだ、『弄りがい』が無くなってしまうから立ち直って本当に良かった。←おいっ!
「ジャックにいさま、本当におめでとうございます! こんな素晴らしいスキルを会得出来た兄を持ち僕は嬉しく思いますし、とても誇らしいです。 次は帝国学園入試ですね、きっとジャックにいさまなら合格できると信じていますので頑張って下さい!」
これで帝国学園に入学出来れば人生バラ色間違い無しのようだ。俺も弟として鼻が高いし本当にジャック兄のスキルは凄いと思ったので本音を言った。
「スタンベルク伯爵様おめでとうございます!ご子息様の活躍を心より願っております。」と神父さんと司祭ライラさんは祝福をしていた。
そして参列者からも声が上がる。
「我が領主様の益々のご活躍を期待しております。」やら「聖剣士様が居ればスタンベルクとリネレー村は安泰です。」やら色々な声を掛けられジャックやフィリップはご満悦みたいだ。
ある程度騒ぎ終わると司祭ライラが『女神の門』を閉じ『祝福の儀』を閉めをくくった。
「皆様、本日は祝福の儀にご参列及びご参加いただき誠にありがとうございました。 今年はこのリネレー村から2000年以上前に存在した伝説の固有スキルを祝福される異例の事態を司祭として拝めることができ、神父及び司祭である私も凄く嬉しく思います。 また、自分が望まない祝福であった方達も女神ディーネ様は必ず見守っておりますので、貰ったスキルの意味をよく考えて今後の人生に役立てて下さい。 来年も同じ配属となるか分かりませんが私もリネレー村の皆様のお役に立てれるよう勤めて参りますので来年もよろしくお願い致します。 では本日の『祝福の儀』を終了いたします、皆様お疲れ様でした。」
かくして俺の異世界初公共行事は兄が大当たりの固有スキルを引いて終わるのであった。
教会から屋敷に帰る途中の馬車の中ではジャック兄のステータスお披露目発表が開かれていた。
「皆見てみるといい、これがジャックのステータスだ!」と既にステータスを見たであろう父フィリップが笑顔でステータスが書いてある紙を渡した。
「これがジャック兄のステータスか…」
「あらあら、私にも見せて見せて♪」
エドガー兄と母マリーナが一緒になってステータスを確認していたので俺も横から覗いてみた。
【名前】ジャック・デュフォール
【称号】
【種族】人族・デュフォール家長男(平民)
【年齢】 7歳
【ランク】 [F] 【合計値198】
【レベル】 05
【HP】 25.5
【MP】 21.4
【攻撃】 26 (+15)
【防御】 06 (+02)
【魔攻】 23
【魔防】 06
【ちから】 23.5
【魔力】 18.25
【敏捷】 17.5 (+01)
【回避】 01%
【賢さ】 17.5
【運】 13
【状態一覧】健康
【武器】 ブロードソード[片手剣](攻撃+15)
【盾or弓】
【頭】
【体】 サイドフランセーズ[軽](防御+2 敏捷+1)
【アクセサリー】
【固有スキル】[七色聖剣士 Lv1]
【通常スキル】[剣術 Lv3][槍術 Lv1]
[火魔法 Lv3][水魔法 Lv1]
ふむふむ…。[防御]と[魔防]と[回避]が低いが他のステータスは平均的な数値だな…と言っても俺は他人のステータスを見た事が無いのでジャック兄のステータスを見ても高いか低いかどうか正直分からない。
だがステータスを確認したフィリップとマリーナは驚きと共に喜んでいた。
「どうだマリーナ? ジャックは私とマリーナのそれぞれ良い所を受け継いでいて素晴らしいステータスだろう? 私と同じ『魔剣士』になれる固有スキルかつ神聖属性が使用できるので『聖剣士』になる事も可能であるだろう。私とは違い魔法が強いので私よりも確実に強くなれるだろう!」
「ええフィリップ! この子は万能型だわ! しかもまだ神聖属性は習得していないから強制的に【宮廷魔術士団】に入る事は無いと思うから安心だわ!」 マリーナは各国に配属される【宮廷魔術士団】の現状を知っているから神聖属性を所持しているか心配だったようだ。
「もう火魔法レベル3かよっ やっぱジャック兄ずりぃーぞ!」
次男エドガーはステータス云々よりも魔法のレベルの差がついてる事が嫌なようだ。
「かあさま、僕は初めて『ステータス』という物を拝見したので強いのか弱いのかどうか分からないです。」
「あらあら、そうだったわね。 アランはステータスを見るの初めてだったよね、参考になるかと思ってフィリップと私の祝福の儀の時のステータスを持ってきたから見てみるといいわ。 アランならきっと理解出来るハズよ。」
マリーナはそう言いながら鞄から筒状の箱から2枚の紙を取り出しアランに渡した。
【名前】フィリップ・デュフォール
【称号】
【種族】人族・デュフォール長男
【年齢】 07歳
【ランク】 [F] 【合計値212】
【レベル】 07
【HP】 33
【MP】 12
【攻撃】 37 (+07)
【防御】 08 (+01)
【魔攻】 17
【魔防】 06 (+01)
【ちから】 34
【魔力】 13
【敏捷】 22 (+03)
【回避】 02% (+01)
【賢さ】 18
【運】 10
【状態一覧】健康
【武器】 ブルーナイフ[ダガー](攻撃+7 敏捷+2)
【盾or弓】
【頭】 クロスハット[軽](魔防+1 回避+1)
【体】 アデルコート[軽](防御+1 敏捷+1)
【アクセサリー】
【固有スキル】[千虻魔剣士 Lv1]
【通常スキル】[剣術 Lv2][槍術 Lv1][短剣術 Lv3][弓術 Lv1]
[火魔法 Lv1][水魔法 Lv1][土 Lv3]
【名前】マリーナ・デュフォール
【称号】
【種族】人族・フランク家長女
【年齢】 7歳
【ランク】 [F+] 【合計値230】
【レベル】 07
【HP】 29
【MP】 36
【攻撃】 15 (+01)
【防御】 06 (+01)
【魔攻】 37 (+07)
【魔防】 08 (+03)
【ちから】 14
【魔力】 31 (+08)
【敏捷】 15
【回避】 01%
【賢さ】 23
【運】 15
【状態一覧】健康
【武器】 グリーンステッキ[杖](攻撃+1 魔攻+7)
【盾or弓】
【頭】 見習い魔術師の帽子[魔](魔防+3 魔力+7)
【体】 見習い魔術師の服[魔](防御+1 魔力+1)
【アクセサリー】
【固有スキル】[満月の魔女 Lv1]
【通常スキル】[剣術 Lv1][槍術 Lv1][短剣術 Lv1][弓術 Lv1]
[火魔法 Lv3][水魔法 Lv4][土 Lv1][風 Lv1]
父フィリップは[攻撃][力][敏捷]が高く魔力が低いが、母マリーナは[MP][魔攻][魔力]が高く夫とは相反するステータスだった。
成程、父母のステータスを見ればジャック兄は確かにフィリップとマリーナの秀でたステータスよりかは低いが、良い所を掛け合わせたステータスで平均ステータスが高くマリーナが言っていた『万能型』である。
「とうさまとかあさまのステータスも凄いですね!7歳でスキルの種類も豊富だし、しかもかあさまは7歳の時点でランクが[F+]で凄いです!今のとうさまやかあさまのステータスが凄く気になりました。 ジャック兄も各種ステータスが満遍なく良く、とうさまが言っていた『魔剣士』や『聖剣士』になれるというのであれば、かあさまの魔力を受け継いでいるこのステータスは固有スキルに合っていますのでとうさまを超える可能性が高いと思いました。 僕もジャック兄に劣らぬように精進していきたいと思います。 それと、とうさまとかあさまが良ければ帰宅したら今のステータス見せて欲しいです。」
3人のステータスを見て、7歳時のステータスについては把握したがこの世界ではどこまでステータスの数値が上がるのか分からないので父母の今のステータスを確認をしたい。
「あらあら、よく分かってるわね!やっぱりアランは賢いわ! アランが言う通り『魔剣士』や『聖剣士』には魔法も強くないと意味が無いのよ。 フィリップも『千虹魔剣士』の固有スキルで魔剣士ではあったけど魔法が得意では無かったから上級冒険者になれなかったのよ。でも私の魔力を受け継いでるからきっと上級冒険者になれると思うわ。 帰ってご飯食べた後で私のステータスを見せてあげるわ。」
「ケッ、少し賢いからって調子に乗ってんじゃねえぞ!剣術の稽古が解禁されたらボコボコにしてやるからなぁ?」
俺が母マリーナに褒められているとエドガーが睨みながら脅してくる。
「とうさま!かあさま! エドガー兄が僕をイジメようとしてます! 確かにエドガー兄より僕の方が賢いですが、兄ならドンと心広く構える度量も必要だと思います! 元々エドガー兄が魔法の稽古が嫌いで逃げてばかりいるから賢くなれないんですよ? 自己責任です。」
「アランてめえ!ここ最近調子に乗り過ぎだぁ!!」
エドガー兄はマジでブチギレながら俺の顔を殴ろうとしてくるが、前世のボクシングの経験が有るアランは軽く躱してしまう。 躱されたエドガー兄が更に逆上し馬車の中がうるさくなりエドガー兄がジャック兄や父に止められ、それを見ていたマリーナがいつも通り「あらあら」と言いながら見守っている。 ―今回はじゃれあいじゃなくて完全に喧嘩腰だったけどね…。
その後屋敷に到着した俺はいつも通り魔法の自主練をしに岩場に向かおうとしていた最中、遠目に見えるジャックは屋敷の使用人達にもてはやされており満更でもなさそうだった。
そんな中父フィリップがジャック兄を呼び、 「ジャック、夕食後に私の書斎に来なさい。」と言っていたのが聞こえた。
父フィリップが他人を書斎に呼ぶなんて珍しいな…何かありそうだし聞き耳立ててみるとするか。と思考しながら俺は聞こえていないフリをしつつ自主練の為に岩場に向かった。
俺はここひと月で水魔法の「ウォーター」という生活魔法を覚えた。 ウォーターは水を作る魔法で魔力が強い程水量が多くなる魔法だ。そして基本的には生活で使用し戦闘では使用されないらしい。 使い方を変えれば戦闘に応用できると思うんだけどねぇ…。エドガー兄は「水魔法は意味が無い」と言って魔法の稽古から逃げてたけど前世の知識を持つ俺はそうは思わない。なので俺は魔力が無くなるまで毎日魔法の練習と瞑想を行っている。
「ふう… 今日はここまでにするか! さっさと風呂入って屋敷戻って飯食って書斎で聞き耳立てないとな…」と独り言を言った。
実は俺は岩場の近くの誰も来ない崖沿いに1月かけて木製の小さな風呂を完成させていた。 作りは樽状で、平たい岩の上に乗せ、樽には覚えた水魔法で水を溜め、下に敷いてある岩に火魔法を使用し温めた「風呂」に家族には内緒で入っている。
この世界には上級貴族の屋敷以外には「風呂」は無いので、平民は濡れタオルを使用し体を拭いているらしい。
親は伯爵貴族だが古い屋敷の為風呂が無く、前世の生活環境に適応している俺は風呂無しは考えられなかったので前世で建築学科で学んだ知識を使用し、家族に隠れて「風呂」を作ったのである。
家族に教えようか一度考えたが、教えた事によって風呂に入れなくなる可能性を考慮して家族には教えていない。
俺はさっさと自作露天風呂に入り体を休めた後、屋敷に戻り家族で夕食をとった。
夕食は勿論豪華で誕生日並みであった。
夕食を終えジャック兄が席を立った所を見計らって俺も「トイレに行ってくる」と言いバレない様にジャック兄の後を付けた。
トイレに向かうフリをしながら後を付けるとジャック兄が書斎のドアをノックした。
「ジャックか、入りたまえ。」 父フィリップの声がするとジャックは書斎に入っていった。
俺は忍び足でドアの前まで来てドアに耳を当て聞き耳を立てる。
「ジャックおめでとう! 良い固有スキルを貰えて本当に良かった。 さて、ジャックの今後についてなんだが…」
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