第13話

目的としていたものは正直にいうとすぐに見つかった。なぜならそこだけ以上に魔力が薄くエルフからして見ればそこには何もない空間だったからだ。見つけたのはメラルなのだが。見つけた本人はなんだか変だなみたいな感じらしい。


「それであそこでいいのよね。」


「はい。」


正直離れていても自分たちの中から魔力が抜けていく感じが分かる。

なぜこんなことに気づかなかったのかが分からない。いや、違う。気づいていたんだ。本能的に。ただ、その本能の危機察知によって無意識にそこを避けた。どうやらアイナもそうだった見たいだ。


「それで、どう解決するつもりなの?」


メラルはこの中でも大丈夫のようだ。龍族はやはり化け物並みの持久力というか脳筋なんだということがよくわかる。


「正直、エルフである僕たちにはかなりきつい。なので、すぐに調査を始めて考えるのは帰ってからにしよう。」


うん。やはりアイナは優秀だ。私には勿体無いな。

にしても、不可解だ。周りは死滅した生物が沢山いる。草木や動物の亡骸がある。ただ、その死に方がおかしい。外傷がなくそれでいて気絶するように倒れている。それも、真ん中の木から半径5mで綺麗に並んでいる。


「アイナ。記録はできた?」


「はい。私にできる範囲では、既に記録をとっていますが。」


「やはりあれだよね。」


「えぇ。」


僕たちは明らかに原因らしきものを見上げた。


「アルト君。」


メルトが話しかけてきた。


「あの木なんだけど、多分、地龍の卵だと思う。」


突拍子のないことをいい始めた。しかし、ありえない話ではない。野良の龍の卵は意外と身近にあったりする。


「なぜそう思う?」


「だってさっきから孵化しそうになっているから。」


どうやら私の耳はイカレテしまったらしい。聞きたくなかった。本当に。


「なぜ?今になって?」


「私たちが来たから。」


僕たちは納得した。生まれた場所は森の外れ。相対的に魔力が少ないために孵化するまでに必要な魔力が足りない。そしてそこに現れた魔力量が多い3人がいる。つまりだ、私たちが来た時点でこれが決定した。


「アルト様。すぐにここからは離脱しましょう!」


「いや、もう遅いと思う。魔力が抜ける感覚がなくなっている。」


そう、もう遅い。既にこの地龍は孵化を始めた。普通は新しい命を歓迎するのが当たり前だ。しかし、野良となると違う。ここに上下関係というものが関わってくる。一般的な家庭で生まれる龍族はその父と母によって卵の状態の時に魔力によって間接的に刷り込まれる。しかし、野良の場合はその刷り込みが周りから吸収するためにそれが起こらない。つまりだ。周りに弱いものしかいない場合、我々からしてみれば暴れると同じことが起きる。それを止める存在がいないからだ。


「それじゃあ。」


「あぁ。ここからが本番というわけだ。」


本当に損な役回りだ。


「アルト君。非常にまずいわ。」


「どうした?」


「私とアイナの魔力は正直底をついているに等しいわ。まともに戦える状況じゃないわ。」


そう、さっきから魔力の流れを見ているのだが彼女たちから魔力が離れていくのが見て取れる。どうやら、対象を絞ることで一つ一つから取る魔力を速くしているようだ。


「分かった。少し耐えられるか?」


「えぇ。なんとか。ただ、そこまで長くは持ちそうにないわ。」


メラルは少しは大丈夫そうだが、アイナの方は少々まずいな。

すぐにでも取り掛からないと。


「メラル!少しアイナを頼む。」


「何をする気?」


「とっておきを試す。まだ、成功したことがないけど理論上は可能だ!」


「そういうことを平然とする!絶対に成功させなさい!2分よ!私の魔力を持ってしてもそこが限界だわ!」


早速取り掛かる。時間がない。既に理論は構築してあるんだ。あとは実践するのみ。

分かっているはずだ。無謀だってことも正直僕の制御能力では足りない。だがやるしかない。

無様だ。こんな無茶するなんて。失敗した時点で死に等しい。


“やってやるさ”


この日、エネルギー革命というべきものとそして未知の粒子の存在が示唆されるきっかけになった。



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