第12話

今回の核融合の話が一段落した頃、アイナが話を変えてきた。


「そういえば聞きました。この辺り一体で魔物が減少していると。」


「あぁ。大森林の奥地まで行ったんだが、原因が分からなかった。」


「私が、手伝いますね!」


アイナが何故かやる気だ。


「分かった。人手が多い方がいいよろしく頼む。」


「では、私は学園の方に戻りますね。」


「ん?学園。」


「はい。今、学園の方で教師をしていて。」


どうやら教師の道を進んだみたいだ。

彼女は自分の道を進む力がある。自分だけの道を進むべきだ。


「そうかならこれを渡しておくよ。」


一冊の本を渡した。それはアトラス帝国式魔導書だ。これはその写本になるのだが。


「これは!」


どうやらこの本の重要性に気付いたみたいだ。これは現代では再現不可能とされている魔法が書かれているのでこぞって魔法師が欲していた魔導書だ。


「プレゼントだ。君がこの本をどう使うかは君次第だ。楽しみにしている。」


「ありがとうございます。師匠!」


人を喜ばせるのはとても気分がいい。


私は、ここでウルと別れてアイナとともに冒険者組合に翌日から大森林で調査する旨を伝えてこの日はその準備することにした。


とりあえず、彼女と話し合うのもいいかもしれない。思考を整理するにもちょうどいい。


「アイナ。ちょっといいか?」


「はい!少し待ってもらってもいいですか?」


アイナの部屋の扉をノックしたところまだ準備が出来ていなかったようだ。

程なくして準備ができたようなので部屋に入った。


「情報を共有しようと思ってね。」


「そうですね。お願いします。」


僕は、自分で探索したことと大量減少が1ヶ月ほど続いていること。段々とではなくいきなり減少したこと、今の所特に変化はないこと。ぐらいしか分かっていない。


「そうですね。大森林の入り口から中層にかけて空気中の魔力も少なくなっていますね。空に、ヒューネラ市にも影響を及ぼしているようですね。」


そう、そうなのだ。それほどにも大きい影響を及ぼしながらも何も分からない。


「推測なのですが、」


彼女は自分の考えを話した。それを聞いた私は驚いた。そして自分の固定概念が瓦解した音を聞いた。

その考えは、魔力を吸い取る何かがあるのではということだった。それは考えたが、それが生物だった場合だ。生物だった場合、自分達の予想を超える。そして限りなくゼロに近いレベルまで吸収した場合、精霊は消滅する。なので僕達エルフに情報は来ない。そう、精霊は純粋な魔力の塊だ。それは、まるで量子のような振る舞いをする。揺らぎ、疎密が存在し、そこにあるようでないように見える。無い場合は何も分からないのだ。我々の認識では精霊は普遍的に存在すると思っていた。しかし、その場合では無い場合が存在することを見落としていた。


「ありがとう。その可能性を見落としていた。それで一旦調べてみよう。」


「はい!」


今日はスッキリしたからいい夢見れそう。他にもないか考えておくか。

この夜はいい夢が見れたと思う。


「おはようございます!こちらが依頼となっております。」


「ありがとう。仕事が早いね。」


「当然です!これでもこの支部のトップを張っているのですから!」


「それは、失礼しました。あなたのような仕事に誇りを持っている方に対しては愚問のことでした。失礼をお許しください。」


「はい!」


食えない人だ。笑い返された。


「ありがとう。では、行ってくるよ。」


「気をつけて行ってらっしゃいませ!」


僕たちは大森林に入り魔力が薄い場所を探した。しかし、全体的に薄いため微妙な強弱が難しく捉えにくい。エルフは魔力に敏感ではあるがここまで薄いと逆に分からない。濃いところが無いと言っていいほど薄すぎる。


「アルト様。これじゃ埒があきません。さらに、精霊も感じません。」


「そうだな。上空から見てみるか。」


「どうやって?」


「こうするとね何故か飛んで来るんだよ。」


僕は指笛を吹き、甲高い音が森中に鳴り響いた。

少しの時間が開くと頭上に影が落ちた。

上から一筋の光の後に声がした。


「来たわよ!!!!!!!!!」


どうやら音より早く来たようなのだが。アホだ。こいつやはりアホだ。


「読んで悪いね。」


「いいのよ。お姉ちゃんに迷惑をかけなさい!」


驚きだ、いつこいつの弟になったんだ。


「いつ、あんたの弟になったんだ?」


「あら、今に決まっているじゃない。」


そう、こういうやつだった。


「あの、アルト様。こちらの方は?」


「あぁ。こいつはメラル。龍族の幼馴染って言ったところだ。」


「幼馴染のお姉ちゃんよ!」


アイナは若干引いている。しょうがないことだ。メラルは炎龍の末裔にあたる。その天真爛漫な性格が相手を圧倒する。有無を言わせない自信があるらしい。


「それで、なんで私を呼んだのかしら?」


「この辺で厄介なことが起きていて、ちょっと手伝って欲しいんだ。」


「いいわよ!」


少しは話を聞いた方がいい。絶対後悔する。だがこういうところは憎めないところだ。

僕は、メラルに頼み龍化して背中に乗せて貰いあたりを空から調査することにした。


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