第11話
冒険者組合でとある依頼を受け目の前の大森林に入り始めて2週間が経とうとしていた。
その依頼とは、この大森林で起きている魔物の大減少の原因究明だ。ここ最近、この依頼を受けたヒューネラ市一帯で魔物が一切見ることが出来なくなった。これがもし大量発生の前触れならば大変なことになる。しかし、不可解なことがある。大森林にいる精霊たちに聞いたのだが、怪しいところが見当たらないのだ。大森林の入り口近くには怪しいところはなかった。中層にも無かった。なので、奥地にもいったのだ。そこは平穏そのものだった。
いや、災害級の魔物が蔓延っていた。いつも通りの日常だ。彼等はそれぞれのテリトリーを守って過ごしている。
これ以上ここにいると冒険者組合の方で捜索部隊が出て迷惑を掛けてしまう。その前に一度戻ることにしよう。
「そうでしたか。何もなければいいのですが。」
「えぇ。しかし、感なのですが。やはり何か起こりそうな感じがするのです。なので、情報が入り次第、教えてくれませんか?」
「承知しました。それでは、これにて依頼完了しますね。お疲れ様でした。」
とりあえず、依頼完了したので組合に近い宿屋に泊まることにした。
やはり気になる。中間層に魔物がいないなんてあり得るのか。それに魔力の濃度が若干薄いように感じた。魔物は、魔力を大量に吸収した動物が理性を無くし暴れ狂うと考えられている。そして習性として魔力が薄い方へと流れるとも考えられているが。そのような予兆が今回はゼロだった。
翌日のお昼過ぎにもう一度組合によることにした。昨日の依頼料の受け取りに来たのだ。
「アルト様ですね。こちらが、依頼料です。それと、お客様がお見えになられているのですが。」
「そうなの?」
「はい。2回の相談室の方でお待ちなさっております。」
感謝を伝え、会うことにした。案内をしてくれるみたいなので後を付いていく。
こんな時期に来る人は誰だろう?それも、組合を通してくるとは。エリカやシルバーは直接くるし、ルナ姉さんとサレーネは学園にいるし、一体誰だ?
案内された部屋の扉をノックした。この感じ、中にいるのはエルフのようだ。精霊が周りで少しざわついている。
中にいたのは、少々意外な人物だった。
「お久しぶりです。師匠!」
「やぁ。ウル。久しぶりだ。隣にいるのは、アイナだね。温泉街で会った。」
「はい。アルト様。一度会っただけでお見知りいただき光栄です。」
「あれは、すごい印象だったよ。」
少し昔話をして本題に入ることにした。
「それで、今日は何の用で来たんだ?」
「それが、これについてなんですが。」
見せてきたのは、この間の魔法による核融合の可能性についてのことだった。
「それか。読んだよ。すごいじゃないか!ところでそれがどうしたんだ?」
「どうしても、制御魔法に優秀な魔法師が必要でして。しかし、これを解決する方法が無くて師匠にお聞きしたく馳せ参じた次第です。」
どうやら彼女をみる限り完全に壁にぶち当たっている見たいだ。
「なら一つ解決するとは言えないが、可能性を示すよ。」
「本当ですか?」
私は、今来ているローブを見せた。これは、去年ルナ姉さんが送ってきた面白い物だ。刻印魔法が施されている。最近はこの刻印魔法にご執心のようだ。ここ数年でやっと実用化に漕ぎ着けた代物で姉さんのお手製だ。刻印魔法は、施されている状態ならそこに魔力を流すだけでその魔法が発動する仕組みだ。今まだそこまで難しい魔法を物に刻むこともそれを発動するのができない。
「それは考えたのですが、やはり発動するタイミングとその指定する場所が難しい。」
「そこでだ、魔力のフィールドを魔法陣にて生成する。これが変数を用いる上で座標軸となる。そこに変数を用いた刻印魔法を施した部屋を用いればいい。つまり、一つの部屋が大きな装置になるわけだ。」
「それだと変数を施しても発動タイミングが。」
「そう。そこでだ。核融合炉で発生したエネルギーの一部を魔力に変換させそれを刻印魔法に流しておけばいい。」
「その考えでいけば、必要な魔法を刻印魔法によってカバーすればいいと。」
「そう、必要な魔法をあらかじめストックしておいて必要な時に発動できるようにしておけばいい。目の前に大きいエネルギーがあるのだから。貯蔵しておくというのもあるが。」
「待ってください。その刻印魔法はどうやって作ればいいのでしょうか?」
「そう。そこなんだ。それとこの考えでは始動に膨大な魔力量が必要なんだ。」
この考えはこの二つが前提条件での考えだ。
「その膨大な魔力だが、ざっと計算しても私1人分では賄えない。」
「師匠ほどの魔力を持ってしてもですか?」
私は、魔力量では世界屈指だろう。といっても、精霊が関わってくれるから少々事情が変わってくる。
「あぁ。どうしてもだ。だからその改良は君たちにお願いしたいんだ。それとルナ姉さんが今刻印魔法にご執心だからそっちにもお願いしよう。」
「ありがとうございます。」
「僕やアイナだったら何百年とかけてこれを行うかもしれないが、ウルのような人間は数年で漕ぎ着けてしまう。本当に尊敬するよ。」
私は諦めという大罪を犯しているのだろうか。感覚や価値観の違いかもしれない。期待しているんだ。彼女という人間に。諦めに似た感情である期待。期待した時点で私は全て相手に責任を押し付けているのでは。楽をしているのでは。弟子に教わることばかりだ。
「師匠。ありがとうございます。」
「うん。もしまたなんかあったら連絡してくるといい。助けになるかどうか分からないけど相談には乗るよ。」
彼女は満面の笑みだった。彼女はこの時のことを後世にこう言っていた。
『師匠は、いつも先を見ていた。特段先見の明が良かったわけでもないのにいつも見透かされている気がした。師匠はやはり神の使いかなんかじゃないのかなと感じた。』
歴史でアルトの名前が間接的にもしっかりと出てくるようになったのはこれが大きいだろう。魔法革命でアルトの名前が出てくるようになったが教会が権力で握り潰されていた。
なのでここで出てきたのがほぼ初めてと言っていいだろう。
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